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今回のブログを担当させていただきます、ジャンプ+新人編集のIです。
今回のタイトルは、君の画面をレベルアップ!「構図」を学ぶためのおすすめ本です。
みなさん、漫画を描くうえで「構図」のことをどのように意識していますでしょうか。初めて漫画を描く上でも「構図」はつまづきやすく、同時に後回しにしがちな技術かもしれません。ですが漫画をわかりやすく、面白く見せる上ではとても重要な位置を占める技術でもあります。
さらにこの「構図」という概念は、漫画以外にも広く活用されています。映画や絵画など、「鑑賞者に作品を観せる・伝える」コンテンツでは不可欠な概念と言ってもいいかもしれませんし、それゆえに蓄積された技術論も多く存在します。その中には、漫画制作にも活かせるヒントがきっとたくさんあるはず…!
ということで今回は、僕が読んでみて面白かった・ためになったと感じた、構図にまつわる3つの本を紹介します! 美術・映画・写真と、漫画以外の分野に関連する本から「構図」についての学びを抜き出しつつ、僕が担当しておりましたジャンプ+作品『少女Null』の作品内構図と適宜見比べながら、どう漫画に活かしていくかを一緒に考える記事にできたらと思います。それでは早速紹介に移ります!
※ 紹介する作品・意見は個人のものであり、編集部としてのものではありません。
【1】『巨匠に学ぶ 構図の基本 名画はなぜ名画なのか?』
歴史に名を残すような名画を「なぜ良いと感じるのか?」が、構図の基本原則を交えながら理論で説明されていきます。「良いと思う感覚」を言葉で説明できるようになると、あらゆる鑑賞体験が、自作へ活かす技術を学ぶ勉強となります! その勉強の入り口にふさわしい本なんじゃないかと思います。実際の名画に加え随所に可愛らしいカラーイラストがたっぷり入っていて読みやすく、本が苦手な人にもおすすめです!
では次に、僕が個人的に大好きな『少女Null』1話の扉絵の「良さ」を、本書に記載されている法則と照らし合わせながら考えてみたいと思います。
基本的な型としては、
- 片流れ型
に分類できそうです。この型は、右に重心(キャラクター)を置くことで安定感を持たせつつ、左に奥行きのある背景絵が置かれ、開放感とスマートさを両立させています。
また、可愛らしさもあるタッチで描かれたキャラクターイラストと、乾いた印象も受ける近未来のクールでやや暗めな街並み、または左奥に鎮座する巨大な建造物との対比は、
- 対決型
の構図も伴うと言えそうです。この型では、一枚の絵の中で印象の異なるモチーフをあえて配置し、激しいドラマを彷彿とさせます。『少女Null』においては、この後に続く激しい戦いを予感させるという意味で、1話の扉絵にふさわしい見開きと言えそうです。視点を集める建造物中央の光や、街を取り囲み安定感を出す空の入れ方もこの扉絵の魅力に繋がってると言えるのでは…と思いつつ、ひとまずここまででまとめます。
このように、自分の「良い」と思った感覚を言語化する作業は、その「良い」を再現性あるものにすることに繋がります。構図に限らずですが、自分の「良い」を大切に、じっくり考える癖をつけてみてください!
【2】『filmmaker’s eye 映画のシーンに学ぶ構図と撮影術:原則とその破り方』
映画表現における構図の基本をまとめている本書では、物語をより強く観客に届けるための構図の技術が、実際の場面写真を用いながら説明されています。限られた画面の中の情報をどのように使えばよりストーリーへの共感を高められるか、キャラの心情を伝えられるか、この先への期待感を煽れるか。物語の中での表現なので、漫画にも応用できそうな技術をたくさん見つけられるはずです。
例えば、冒頭で紹介されている「ハイアングルとローアングル」という技術。キャラの目線よりカメラを上げて(ハイアングル)キャラを撮ると、観客が見下ろす形になりキャラの弱さ・受身性・非力を表し、逆にカメラを下げて(ローアングル)見上げるとキャラの自信・権力・支配力を表すことができます。
こちらは、画面左のキャラ・眞壁清山に対し、画面右上部のキャラ・軍の権力者が恋人の意識を奪う決断を迫る場面。軍の権力者をローアングル、眞壁をハイアングルで映したこの構図からは、明確な力関係と、両者、特に眞壁の特殊な精神状態が臨場感を持って感じられます。
他にも、画面を縦横で三分割し、その交点に重要な要素を置く「三分割法」や、画面内の特定のアイテムを大きく映すことでそのアイテムの重要性を表す「ヒッチコックの法則」など、基礎技術を眺めるだけでもかなり学びがあります。映画を見ることそのものが漫画制作の勉強になるので、その鑑賞精度を高めるためにも一見の価値ありです!
【番外編】『ナショナル ジオグラフィック プロの取り方 構図の法則』
最後は、プロのカメラマンの「構図」に対する考え方・技術を余すところなく説明したこの本。一枚の写真の中で撮影者が伝えたい意図・メッセージを伝えるために、前述の2冊以上に「鑑賞者の視覚認知」に対してシビアに考えられています。インパクトのある被写体や、それを活かす構図を「探す」態度も、漫画表現の中で新たな画面を見せる上で見習うべき姿勢だと思います。
今回の紹介は以上となります! 構図に悩んだ時、漫画制作のヒントを得たい時、今回の記事が少しでも皆さんのお役に立てば幸いです。
本編集部ブログでは、過去にも何度か漫画家志望の皆様のためになりそうな本を紹介する記事をお届けしてきました。【シナリオ制作の指南本】、【人体構造の解説書】、【児童小説】、【作家のインタビュー本】、などジャンルは様々。今回も、あえて漫画以外の分野から広く本を紹介させていただきました。多岐にわたる技術が必要とされる漫画制作だからこそ、皆さんには色々なところから学びを得てほしいと思っております。役に立つ・立たないという視点だけでなく、楽しみながら、豊かな興味と好奇心を持って色々なものごとに触れてみてください。
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