【第109回】「個性的」って結局何!?『シバタリアン』のイワムロカツヤ先生に聞いてみよう!!

いつも編集部ブログを読んでいただき、ありがとうございます!

漫画家の皆さんは、担当編集との打ち合わせや漫画賞での講評で「もっと個性を!」と言われたことはあるでしょうか。
「そう言われても、具体的にどうすれば個性的な作品になるんだ…」と悩まれた経験もあるかもしれません。

そこで今回は、よく言われる漫画の「個性」って結局なんなのか…について、少年ジャンプ+で圧倒的な独創性を放つ『シバタリアン』を連載中のイワムロカツヤ先生に伺います。
驚きあり、納得感ありのご回答をいただけました!

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――よく「個性的な作品を目指して」などと言われますが、イワムロ先生の考える「個性的」な作品の特徴とは何でしょうか。

ズバリ「個性的な作品を目指していない作品です」!!!
理由は次の質問で説明します。
ちなみにこれが「掴み」と言って、漫画の教科書があるならほぼ最初に書いてある基本的な技術です。


――「個性的な作品が作れない…」と悩んでいる新人作家の皆さんに、アドバイスがありましたらお願いします。

考える事は大切ですが悩まなくて良いと思います。

「個性的な今までに無い作品を描く!」とデカくて曖昧な事をやろうとするほど同じ事を考える人は多くなるし、思いつく事なんて同じ人間なので大差ないです。

どんなダメだと言われる漫画にも個性的な部分はどこかにあります。
ただそれが読んだ人に伝わっていないだけです。
何故伝わらないのかは基本を守ってないからです。
基本って何かと言うと、漫画の描き方とか脚本術みたいな本10冊読んだ時に共通して書いてある事です。

それらは全て読む人に伝えるための技術です。
だから「読みやすさ」とも言い換えられます。

視線誘導をしっかりやるとか、ページの最後のコマは引き、大事なコマは大きくとか、主人公は1番変化する人物とか、オープニングとラストは対になるとか……まだまだあと100個位はあります。
そんな事知っていると思うかもしれないですけど、連載してヒットしてる漫画ですら全部できている作品は少ないと思います。
もちろん僕も全然できてません。

漫画の常識を変えたとか、この先生にしか描けないとか、大袈裟な事を言われている作品ほどそういう基本を守って普遍的な「皆と同じ事」をしっかりやっていると思います。

だからあんまり個性的なものを描こうと思わずにちゃんと伝わる漫画を描く事が大切で、それができた時に初めて小さな個性の輝きを、読んだ人が勝手に見つけてくれるんじゃないでしょうか。

つまり「個性的な作品を目指さない事が個性を伝える一番の方法」だと、赤ちゃん漫画家の僕は信じてます。


――イワムロ先生がキャラや企画を考案される際に、普段から意識していること/気をつけていることがあれば教えてください。

企画は小さな経験を大きな話にする事を意識していて、キャラの服と髪型はそのキャラクターがそれを選んだ理由とか考えてます。
あとは心の声とか、モブキャラの語りでキャラの説明をするのは最終手段だと思って描いてます。
できるだけセリフや行動、服とか立ち方、姿勢、座り方、走り方とか、そういう事で伝える努力をしてます。
これは僕の好みですからやる必要は無いです。
こういうやらなくても良いのにやってしまう事が個性的と言うのかもしれないと今思いました。

――衝撃的な企画・展開で話題となっている『シバタリアン』ですが、どのようなきっかけで誕生した作品なのでしょうか。

まずホラーを描いてみようって決まって、
大群って怖いなぁ → 何が増えたら怖いだろう → 学校で一緒だったけど名前も顔も思い出せない人が怖い
そんな感じで膨らませていった気がします。


――イワムロ先生はアイデアに煮詰まることはあるのでしょうか。もしある場合は、その際の解決策を教えてください。

1人になる、人と話す、運動をする、乗り物に乗る、寝る、風呂に入る、線一本でいいから描いてみる、自分の漫画を読み返す、一度諦める……などなどしながらひたすら苦しんでます。
楽しいです。

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イワムロ先生、ありがとうございました!
確かに、持ち込み作品や漫画賞投稿作品を拝見する際も、いわゆる「読みやすい(=セリフ量が多すぎない、コマ割りがわかりやすくメリハリがある、視線誘導が丁寧、etc…)」作品の方が、キャラの魅力的な特徴や驚きのあるストーリー構成といった良さを見つけやすい気がしました。
ご自身の作品の「個性」に悩まれている方は、物語をわかりやすく伝える工夫について再考してみると、突破口が開けるかもしれません!


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