少年ジャンプ+編集部に異動してきて、半年ちょい。
色々編集部の特性や、状況等が分かってきた、編集主任の林士平(りん しへい)です。
このジャンプルーキー!編集部ブログは、漫画家志望者の作家さん向けに、編集部で交代交代に記事を書いています。
前回は、若手作家と読切作品を作っていく理由を書きました。
【第41回】漫画編集者が伝える、新人作家への最初の課題(前回記事)
今回は「漫画家と担当編集者の出会いのパターンと、良い点・悪い点」を書こうと思います。
僕が今まで出会って、掲載・連載までたどり着いた作家さんの例も書いていきます。
漫画家志望者の方々に、少しでも役に立つ記事になれば幸いです。
まず、漫画家と編集者の出会い方の全パターンを列記します。
【1】持ち込み
【2】漫画賞(ジャンプルーキー!)
【3】スカウトキャラバン(美大・専門学校等、出張編集部)
【4】Twitter・pixiv等SNS
【5】コミケ・COMITIA等創作系イベント
【6】担当交代(社内からの引き継ぎ・紹介)
【7】その他
基本、上記のどれかしらのパターンで、編集者は漫画家さんと出会い、一緒に漫画賞を獲り、読切の掲載を経て、連載を狙っていく、というのが一般的な流れです。
それぞれを説明していきます。
【1】持ち込み
作家さんから電話をかけて予約を取って頂き、神保町の集英社にある少年ジャンプ+編集部まで直接、原稿を持って来ていただいて、僕ら編集者が作品を読ませて頂く方法です。
少年ジャンプ+編集部は電話に出た人がその作家の担当になる、というルールがあります。
メリットは、直接聞きたいことを聞けることが大きいです。
ネームの細かいところまで顔をつき合わせて話せることが、最大のメリットです。
作品の細かい機微等、深い打合せをするのであれば、会って話すとより深い理解が互いに出来ます。
逆にデメリットは、持ち込み申し込みの時に電話をしなければならないので、少し緊張すること。
また、東京・神保町に行かなければ会えない、時間的、距離的制限もネックかと。
しかし、その労力・ストレスと引き換えに、細かいネームの打合せ、聞きたいことをすぐに聞ける、というメリットはやはり大きいです。関東近郊にお住まいの作品を既に描かれている作家さんは、是非是非、持ち込みに来てみて欲しいです。
僕が今まで持ち込みで出会った作家さんはとても多く『青の祓魔師』の加藤和恵先生・『地獄楽』の賀来ゆうじ先生・『この音とまれ!』のアミュー先生・『ムーンランド』の山岸菜先生、等々、とても多くの作家さんに持ち込みで出会っています。
お会いしてからどのような打合せを経て上記の連載に至ったのかは、また機会があれば別記事で書きたいと思います。
ちなみに、少年ジャンプ+編集部の持ち込み用電話番号は
03-3230-6133
です。
持ち込みの方法はコチラを参照して下さい。
編集部のスタッフは11時〜20時くらいにいることが多いです。
電話が繋がらなくても、気軽に掛け直して頂ければ幸いです。
編集者は持ち込みが大好きです。新しい、世に出すべき才能に出会った瞬間は、震える程嬉しかったりします。
気軽にお電話して頂ければ嬉しいです。
【2】漫画賞(ジャンプルーキー!)
投稿作で受賞した場合、最終候補以上になったり、将来の可能性を感じた場合、編集者から直接連絡をさせて頂いています。
ジャンプルーキー!は、少年ジャンプ+編集部全員が読ませていただいているので、毎月開催している月間ルーキー賞の順位が確定する前に連絡をさせて頂くこともあります。
メリットは、デビューまでが最短のルートだということです。
デビュー作が受賞作品という箔が付くので、多くの読者に読んでもらいやすいです。
また、もし未成年の方で、両親が漫画家を目指すことを認めていない場合でも、受賞するとご家族の反対する態度が軟化する傾向があります。
デメリットは、落選して編集者からの連絡が来ない時、どこが悪かったのか、何が足りないのか、作家さんがすぐには確認できないことです。
作品はフィードバックを貰ったほうが、確実に次回作のクオリティが上がります。なので、賞への投稿のみだと、少し成長に繋げにくいことがあります。
ただ、担当がついてしまえば、上記のデメリットは無くなります。意欲的な作品が投稿されれば必ず担当が付きますので、あまり気にしなくてもよいかもしれません。
僕が今まで漫画賞で出会った作家さんの例でいうと、『ファイアパンチ』『チェンソーマン』の藤本タツキ先生は、ジャンプSQ.にいた頃の月例賞の最終候補で。
『ドリキャン!!』の千葉侑生先生『特異体質系女子の話』の八切先生のお二人は、第1回縦スクロール漫画賞の準大賞で。
『カッコカワイイ宣言!』『いいよね!米澤先生』の地獄のミサワ先生は、赤塚賞の準入選でお会いして連載をご一緒させてもらいました。
現在、ジャンプルーキー!では以下の賞を募集しています。
そして毎年3月末・9月末の2回締切がある、手塚賞・赤塚賞にも少年ジャンプ+編集部は参加しています。
是非に、投稿タイミングが合うものや、賞のコンセプトがご自身に合った賞にご応募頂ければ嬉しいです。
【3】スカウトキャラバン(美大・専門学校等、出張編集部)
少年ジャンプ+編集部は、少年ジャンプ編集部と一緒に、毎年10月頃、全国数都市を回る大規模なスカウトキャラバンをしています。
例年ですと、少年ジャンプ+編集部は、札幌、大阪、名古屋、広島、福岡、には行かせて頂いています。
各会場に編集部員が直接行きますので、持ち込みに行きたいけど東京は遠いし、交通費が厳しい、という作家さんは、スカウトキャラバンは狙い目です。
他誌で担当付いているけど、他の編集者の意見も聞きたいから等の理由で、自分の現状を知る機会として利用することもオススメです。
また、各地の専門学校や美大芸大でも、単発でスカウトキャラバンを実施することがあります。
地元の学校で出張編集部が開催されるタイミングに、飛び入りで作品を持ち込むのも一つの手です。
メリットは、地方にいても、持ち込みと同じ形式で作品を見せられる。直接会って話を聞ける点です。
逆にデメリットは、大規模なものは毎年10月にしか開催されていないので、回数が少ないです。作品が出来たのですぐに編集者に見せてアドバイスが聞きたい!と思ったタイミングで、キャラバンが開催されているとは限らない点です。
「鉄は熱いうちに打て」出来上がったら、すぐに読んでもらって、フィードバックを貰ったほうが良いと思うので、そこが少し難点かと思います。
僕の担当作家である『BLACK TORCH』のタカキツヨシ先生は、数年前の福岡キャラバンでお会いして、打合せを重ねて連載までご一緒できました。
【4】Twitter・pixiv等SNS
最近はTwitter経由で、編集者から連絡させて頂いています。
SNSに載せてみた作品がバズったら、ほとんどの出版社から連絡が来た、という話も良く聞きます。
もちろん、漫画家さんからTwitter経由で持ち込みの申し込みがあることもあります。
上記双方向2パターンとも、共通して言えるメリットは、自分で担当編集者を選べる、ということです。
自分から連絡しなくても、沢山の編集者から、担当になってもらえることを選べることor自分が選んだ編集者のSNSアカウントに直接持ち込み依頼、どちらも漫画家さんが選んで連絡が出来ます。
ただ、作品がバズった時は連絡が来てしまい過ぎて、お断りする対応が面倒になることもあります。
また、もちろん作品をSNSに上げても全く連絡が来ないこともあります。
『左ききのエレン』のかっぴー先生は、僕からTwitterでDMさせて頂いて、連載までご一緒させて頂きました。
また、2018年の手塚賞佳作受賞作『unbloom』三崎しずか先生はTwitterに直接持ち込み申込をして頂いて、お会いして初めて打合せした作品が、手塚賞佳作の受賞になりました。
担当編集者は「ガチャ」みたいなもの、と言う方もいらっしゃいます。当たりに会うまで、流浪の持ち込み行脚をする人の話も聞きます。
編集者との出会いは「運」で、全く選べなかった時代もたしかにあったのでしょう。
しかし、今はTwitter経由での出会い等、自分で人生賭けて一緒に戦う編集者を選ぶことが出来ます。価値観や人柄等、この人に作品を見てもらいたい!と思ったら思い切って、持ち込み申し込みをしてみると良いと思います!
ちなみに、僕のTwitterは@SHIHEILINです。持ち込み申し込み、24時間365日大歓迎です。
他社での連載作家さんでも、受賞済だけど他の編集部の意見も聞いてみたい等、色々な作家さんの持ち込みを受け付けています。
【5】コミケ・COMITIA等創作系イベント
創作イベントで、編集者が「是非にお仕事ご一緒したいです」と、名刺を渡すことも近年では増えています。
オリジナルでも、二次創作でも、漫画を描く力が高い作家は、イベントでの出会いでそのまま商業誌連載までたどり着く方もいらっしゃいます。COMITIAでは、少年ジャンプ+編集部は出張編集部もやっています。出張編集部に関しては、上記のスカウトキャラバンと同じメリットがあります。多数の編集部がブースを出しているので、効率的に回れるメリットがあるので、関東・関西の大規模COMITIAは、もしお時間あったら行ってみると良いと思います。
僕の担当作家さんですと、『ワンダーラビットガール』の廣瀬ゆい先生は数年前のCOMITIAでお会いしました。
今後のCOMITIAの開催予定はコチラに掲載中です。ご参考までに。
【6】担当交代(社内からの引き継ぎ・紹介)
こちらも一般的ではありますが、編集者の異動や退社に伴い、連載作品や作家さんを引き継ぐ、という形です。新入社員の編集者は、まずこの出会い方で作家さんとの向き合い方を学び始めます。
今現在、担当編集を探している若手作家さんには、少し関係は薄いかもしれないですが、将来的には、このような形で新しい担当と出会うことも多いということをうっすら覚えておいて頂ければ。
僕が今までこの形で担当させて頂いた方ですと、『TISTA』『月華美刃』の遠藤達哉先生『終末のハーレム』の宵野コタロー先生・LINK先生『怪物事変』の藍本松先生や、『冒険王ビィト』の三条陸先生・稲田浩司先生、『Mr.Clice』の秋本治先生他沢山のステキな作家さん達は、先輩方から引き継いで、一緒に連載作品をご一緒したり、新作を立ち上げたりしました。
【7】その他
上記に無いパターンでの出会い方ですが、例えば作家さんからの紹介等もあります。
担当作家のアシスタントの作品を見てみてやってくれ、等のご紹介はたまにあります。
僕の例ですと、『終極エンゲージ』の三輪ヨシユキ先生は作家さんからの紹介でした。原作の江藤俊司先生は、三輪先生からのご紹介でした。
あとは特殊な例ですと、もともとの友人だった、とかでしょうか。
中高の同級生、幼馴染みとか、ですかね。僕も中学校の同級生が他社で連載作家をしていたので、久々の再会の際、読切を依頼して、掲載まで至ったことがあります。
書店員さんの友人からの紹介や、知り合いからの紹介等で担当になることもあります。
人の縁は不思議なもの。もし、良い漫画家・良い編集者に出会う縁があったら、嬉しいなと思いながら過ごしています。
さて、漫画家さんと編集者の出会い方は上記で以上です。
上記のどんな出会い方でも、作家と編集者が丁寧に関係性を構築して、漫画力を高めていけば、きっと連載まで辿り着けます。
是非に、色々な編集者に会って、あなたに合う編集者をみつけて、面白くて沢山の人に届く漫画を描いてください。
願わくば、それが、少年ジャンプ+であると嬉しいです…!
実際の持ち込みの様子はこちらから見ることができます。
【過去の編集部ブログ】
【第33回】ジャンプ編集部は持ち込みも大歓迎!恐がらないで最初の一歩を踏み出そう!