【第41回】漫画編集者が伝える、新人作家への最初の課題

このブログは、少年ジャンプ+の現場編集者の持ち回りで、記事を執筆させて頂いております。

僕は、このブログで初めての執筆記事になるので、少年ジャンプ+での執筆を目指している作家さんへの、自己紹介も兼ねて、漫画志望者の方に少しでもお役に立てることをこのブログを通して、伝えたいと思っております。

今年の6月にジャンプSQ.から少年ジャンプ+に異動してきた、林士平(りんしへい)と申します。漫画編集歴12年です。
名前からも分かる通り、在日台湾2世です。両親二人が台湾人でした。東京産まれ東京育ちです。
今まで漫画編集者として立ち上げた作品は
『青の祓魔師』『いいよね!米澤先生』『この音とまれ!』『BLACK TORCH』『怪物事変』『ファイアパンチ』『終極エンゲージ』『左ききのエレン』等々、です。

「世界に届く、世界に残る漫画」を目指して、日々働いております。


今回は、新人作家さんにお会いした一番最初のタイミング、これから、あなたの担当になりますので、今後ともよろしくお願いします、さて、まずは…という時に伝えていることを書きます。
「最初に読切をしっかり研究して、読切で面白い漫画を描けるようになりましょう!」
僕はお会いした全ての新人作家さんに、最初の課題として、これを伝えています。
一番最初に「読切」に照準を絞って研究・執筆してもらう理由は3つです。

1、物語を「始めて、広げて、盛り上げて、閉じる」ことを効率的に学ぶため。
2、連載に至るまでに、作家さんのファンを作るため。
3、担当編集と、漫画価値観の相互理解を深めるため。

です。それぞれ、説明させて頂きます。


1、物語を「始めて、広げて、盛り上げて、閉じる」ことを効率的に学ぶため。
物語は、続ければ続けるほど、複雑になります。情報は枝葉のようにグングン広がり、まとめることが難しくなります。連載だと、作者の手に余るほど、物語が拡散してしまうことが、よくあります。
読切では、出す情報はすべてクライマックスに繋がりますし、繋がるべきです。設定やキャラの性格、バックグラウンドも、全て物語のクライマックスと結末のために描かれているものなので、他作品の構成の分析も、長期連載に比べて容易です。
物語の「広げ方」「まとめ方」を学ぶには、読切は、ちょうどよいボリュームなのです。
また、キャラ試しや設定試しで、読切を執筆して、何かしらのミスをしても、キッパリとボツにして次の作品にいきやすいです。
読切は、学習しやすく、創作のトライ&エラーの回数を増やすことができます。
量は質を産みます。インプットと、アウトプットの回転を高速で回せるので、物語創りの分析・実践を効率的に学べます。

2、連載に至るまでに、作家さんのファンを作るため。
日本の連載漫画は「打ち切り」があります。
基本は1巻2巻の売上で、ある一定の数字以上売れないと、打ち切りになってしまいます。
雑誌やアプリ、作家や作品によって、どのくらい売れなければいけないのかは、違うので、明確な数字は上げられないですが、基本的にコミックスの巻数が浅い時点で、人気の火がつかないと、生き残りにくい、日本の連載漫画は描きたい物語を描き終えることが出来ないのが、特徴の1つです。
この緊張感が、沢山の面白い漫画を生み出してきたことは、勿論あります。
ただ、作者の思い望んだシーンまで至らずに、泣く泣く連載を終了しなければならない作品も、多々あるのも事実です。
漫画は、俳優女優さんや芸人さんと同じ、人気稼業です。
連載前に、少しでも読者を獲得することは、結果描きたい連載を描くことができるパワーになります。
連載初期から、「あ!あの作家だ!」と認識してもらって応援してもらうことは、新人作家の初連載ではとても大事なことだと思っております。
少しでも、連載作品の生存確率を上げるためにも、読切で、読者を獲得しておくことは、大事なことです。

3、担当編集と、漫画価値観の相互理解を深めるため。
担当編集者は、最初の読者であり、物語の伴走者でもあります。
何がボツで、どういう直しの方向性の引き出しを持っているのか、連載を始める前に、漫画家と担当編集者、沢山の共通言語を持って、良いチームになることが出来れば、連載という荒波を、上手く乗りこなすことが出来ます。
連載ではワンミスが命取り、と入社した時に先輩に言われたことがあります。
確かに、週刊連載だと、ネームに使える時間は1日~2日。
全ボツしたら、休載がチラつきながら必死で執筆を急ぐことになります。
多数のボツと、何作か一緒に上手く描ききった良い読切の記憶は、連載中の切羽詰まった打合せをスムーズにしてくれます。
なので、数多くの読切ネームの打合せをして、作家と担当、それぞれの価値観を理解し合うのはとても大事です。(もしこの段階で、どうしても担当と合わないと感じたら、投稿先を変える、担当を変えることも、検討する必要があると思います。)


思ったより長くなりました。
以上3点の理由で、担当し始めた新人作家さんには、「一緒に読切作品を数作創ってから、連載にトライしましょう! 」と伝えております。
ルーキーブログの読者の皆様に少しでも参考になれば幸いです。

今回お伝えしたいのは、以上です。

もし、もっと聞きたい!作品も見てもらいたい!という作家の方がいらっしゃいましたら、是非に、少年ジャンプ+編集部に持ち込みに来てください。
いつでも、持込は大歓迎な編集部ですので。

ジャンプルーキー投稿者の皆様が、楽しくマンガを描いて成長して頂ければ嬉しいです。
そしていつか、世界中に届く、世界中に残る、野心溢れる、面白い作品を描いてください!

ジャンプルーキー読者の皆様、挑戦的な新人作家さん達の、才能の爆発を是非に楽しんで下さい。
良い作家は良い読者が育てるものでも、あると思うので。

素晴らしい漫画が世界に羽ばたくお手伝いを出来たら、編集としてこれ以上幸せなことはないです!
では、沢山の持ち込み、投稿、お待ちしております~!!

今後ともよろしくお願いします。