【第56回】ジャンプの未来を担う漫画家集結!!「ジャンプルーキー!」デビュー作家100人突破記念イベントレポート!!

9月7日(土)、集英社にて「ジャンプルーキー!」からジャンプ各誌にデビューした作家が100人を突破したことを記念し、「ジャンプルーキー!」投稿者限定イベントが開催。当初の募集人数の倍以上となる、約70名の作家さんが参加されました。
当日の様子を、私ライターのオオバが紹介させていただきます。


「ジャンプルーキー!」のこれまでの歩みと今後の展望

担当の少年ジャンプ+編集部・籾山氏、そして、開発・運営のコアメンバーであるはてな・石田氏、ネットコンプレックス・今村氏が登壇し、最初のトークコーナーがスタート。「ジャンプルーキー!」のこれまでの歩みを紹介しました。


「ジャンプルーキー!」の実績

「ジャンプルーキー!」には現在、多い月では1000を超える作品が新規に投稿されています。話数でいうと、2000~3000話が毎月更新されています。
また、ジャンプ各誌でデビューを果たした「ジャンプルーキー!」出身作家の人数なども公開。週刊少年ジャンプを含むジャンプ各誌へのデビュー数は、現時点で110名を超えています。(決定済を含む)

また、「ジャンプルーキー!」への投稿について、運営を担当するネットコンプレックス・今村氏は「ジャンプルーキー!への投稿作品は、頻繁に編集部員がチェックしており、全ての作品に目を通しています」と語り、「ジャンプルーキー!」から原石となる作品を見つけ、ヒット作へと導くためのシステムが構築されていることをアピールしました。

「ジャンプルーキー!」ではこれまでも、投稿者や読者からの要望を受けて、コメント機能を実装することで投稿者が読者から直の反応を受け取れるシステムを追加導入するなど、常に機能改善・投稿しやすさの向上を目指しており、今後もさらなる追加機能が期待されます。


「ジャンプルーキー!」出身作家3名による座談会

「ジャンプルーキー!」投稿から「少年ジャンプ+」での連載を果たした小田原愛先生(代表作『LAND LOCK』など)成田成哲先生(『アビスレイジ』連載中)みつちよ丸先生(代表作『生者の行進』が登壇。デビューに至る経緯などさまざまな質問に対し赤裸々に語って下さいました。

―――「ジャンプルーキー!」に投稿してからデビューに至るまでの経緯は?

小田原愛先生(以下、小):「ジャンプルーキー!」に作品を投稿していく中で現在の担当編集に声をかけてもらったのがきっかけです。そこから連載用ネームを描いて、自ら出張編集部に持ち込みました。その場で担当編集に読んでもらい「いいと思います」と言って頂き、「少年ジャンプ+」での連載会議提出に向けて一緒にネームを詰め『魔喰のリース』での連載が決まりました。

成田成哲先生(以下、成):最初は他紙に作品を投稿していたのですが、「ジャンプルーキー!」の存在を知り仕組みなどに興味を持ち、「ルーキー!」に過去作品を投稿してみたんです。すると編集部からメールをもらいまして…正直、編集部からメールが来るのなんて都市伝説だと思っていたので驚きました。そこから一度実際に会って打ち合わせすることになり、そこで編集ととても気が合ったんです。なので他誌ではなく「ジャンプルーキー!」でデビューを目指そうと思いました。何度か「少年ジャンプ+」読切掲載には至ったのですが連載までには届かず、一時期掲載会議用に毎回2本ずつネームを送っていました。1本は自分が描きたい「格闘」マンガを。もう1本は流行を取り入れた作品を。多くのネームを切った結果、当時流行っていた「グルメ」に「マッチョ」を組み合わせた『マッチョグルメ』が生まれ連載に至りました。

みつちよ丸先生(以下、み):以前は海外で生活をしていたので「ジャンプルーキー!」という環境に制限されないマンガ投稿サービスが始まったのを知り、すぐに過去作などを投稿しました。2年程経った時に編集部から声をかけてもらい、この頃には日本に戻っていたので、担当編集と打ち合わせて「少年ジャンプ+連載グランプリ」(※1)での受賞を目標に作品制作が始まりました。当時はマンガを描くことに慣れておらずネームを4、5本提出し、その中の1つを修正し、受賞したのが『生者の行進』になります。
※1 「ジャンプルーキー!」で開催される「少年ジャンプ+」での連載&単行本化直結の漫画賞

―――初投稿から「少年ジャンプ+」掲載に至った期間は?

小:「ジャンプルーキー!」に投稿してから3ヶ月で編集部に声をかけて頂き、出張編集部に持ち込む用のネームづくりに1ヶ月程…そこから「少年ジャンプ+」連載会議用の作品づくりに1ヶ月程なのでざっくり半年くらいです。

成:初投稿から3ヶ月後には「少年ジャンプ+」掲載会議にネームを提出し、その翌月には掲載用原稿を描き始めていたので4ヶ月程です。

み:投稿から2年で「少年ジャンプ+連載グランプリ」を受賞し、連載準備期間に1年頂きました。

―――作品を投稿する際に意識した点は?

小:サムネイルはカラーにするよう心掛けていました。多くの作品がある中でとにかく自分の作品が「読者の目に留まる」にはどうするべきかを考え、連載前はサムネイルも工夫しかなり時間をかけて作っていました。

成:僕も小田原先生と同じで「読者の目に留まる」ことは重要だと思います。僕は閲覧数が高い作品をピックアップしてデータ化し、サムネイルの傾向や平日と休日での閲覧数の違い、あとは「いいジャン!」されやすい作品などを研究しました。

み:月末だと「月間ルーキー賞」(※2)のランキングがなんとなく固まってしまっているので、なるべく月初めに作品を投稿するようにしていました。でも一番大事なのは自分が描きたいものを全力で表現して、フィーリングの合う編集者と出会えることかなと思います。
※2 「ジャンプルーキー!」で毎月実施されるマンガ賞。選ばれた作品は賞のランクにより、ジャンプ各誌に掲載、もしくは掲載権が与えられる。

―――自身の体験をもとに新人作家さんへアドバイスを送るとしたら?

小:あえてみんなが避けがちな難しい題材に挑戦することが大事かなと思います。私も周りと比べてしまって、自分には個性が無いと悩んでいた時期もあったのですが、だったら誰かと比べられない題材を描こうと前向きに挑戦し続けました。それからやはり目立つことです。担当編集からの連絡を待ち続けるのではなく自ら持ち込みに行ったり、アポを取って直接打ち合わせをする機会をつくるなど、記憶に残るような行動をするのも一つの手だと思います。

成:自分の武器を明確にすることが大切かと思います。僕の場合は自分が得意な題材と世間のニーズをうまく擦り合わせることで「マッチョグルメ」にたどり着けたのですが、それは絵が得意な人であれば絵を、ストーリーならストーリーの質を高めることで頭一つ抜ける武器になるのかなと思います。

み:私は一番ネームに時間をかけていて、仕上がったネームを毎回10回以上読み返しています。最初から最後まで話が頭にスッと入るよう、とにかくセリフの配置を変更したり、キャラの向きを変えたり何度も調整を繰り返し、ペン入れに入るようにしています。

―――ネームが通らない時のモチベーションの保ち方は?

み:ネームが通らないと悔しいのはみんな同じで…。私が面白いと思うストライクゾーンと担当編集のストライクゾーンは違うと思うのですが、本当に売れる作品っていうのはどっちのストライクゾーンにもヒットするものだと思うんです。なので自分が面白いと思うものの中に担当編集にもヒットする要素を落とし込み、両者共に面白いと思える作品を目指します。あとは思い切ってネームを丸ごと捨てます。自分の描いたネームは愛着が湧いてしまって直したくないと思ってしまうので…。思い切って捨てて、分岐点から考え直します。

投稿者からの質問も交えつつ、作家3名の体験談など会場でしか聞けないようなマル秘エピソードもあり、とても貴重な時間となりました!


編集部員が語るデビュー作の傾向と強み

続いてのトークコーナーでは、編集者4名が登壇。
少年ジャンプ+編集部員の小池氏・玉田氏・榊原氏に加え、「週刊少年ジャンプ」で14年半編集を勤め現在はキャラクタービジネス室に在籍する齋藤氏がマンガ論を熱く語りました。


どんな作家に声をかけ、どんな作品を求めているか
まず語られたのは、日ごろから「ジャンプルーキー!」の投稿作品や持ち込み作品に目を通している4人が、どのような作家・作品に興味を持ち、担当したいと思うのか、そしてどんな作品を作っていきたいと思っているのかというお題に沿ってトーク。

小池氏は「個性を発揮している作品は魅力的に見えますね」と語り、作家としての自分の個性を落とし込むことで作品の個性を強め、さらにそれが読者に伝わるよう努力している作品ほどデビューにつながりやすいと話しました。さらに、投稿をためらってしまう人も多いと思うが、とにかくたくさんの作品を描いて投稿していくことで、読者や編集に見てもらい、コメントをもらうことで自分の作品を昇華させて欲しいと思いを述べました。

続く玉田氏は「演出力」、榊原氏は「ジャンルを意識する事」が大事であると話し、同じような題材でも演出による見せ方や、流行のジャンルを上手く取り入れることでヒット作が生み出せると述べました。

また、齋藤氏はビートたけしの「売れることはできるが、どう売れるかは選べない」という名言を引用し、自分の得意分野以外の作品も投稿して欲しいと話しました。これは、作家自身が得意だと思っているジャンルや強み以外のところに作家の長所があった場合、それを編集部員が見抜きヒット作品を生み出せる可能性があるからだといいます。


「ジャンプルーキー!」投稿作家から編集部員への質問!

続く編集者への質問コーナーでは、投稿作家たちから多くの質問が寄せられました。

Q.投稿してくる作家の年齢は気にしますか?

A.小池氏
個人的な意見としては、半分は気にして半分は気にしないです。皆さん、読者として面白い作品を読んだときに作者の年齢を気にしたことってありますでしょうか?ないと思いますが、それが気にしない理由です。年齢で面白さは変わりません。ただ、現在の実力に年齢は関係ありませんが、今プロ作家未満の実力でこれから伸びる必要がある新人作家には年齢は関係あります。スポーツや勉強、なんでもそうですが若い人の吸収力は高いです。編集としての経験で言っても、漫画においても若い人達の方が予想を上回って成長することが多い印象です。それが年齢を気にする理由です。即戦力なら年齢気にしませんし、そもそも聞きません。ただ、今一歩ならば年齢はやっぱり気になります。

Q.「少年ジャンプ+」では今どんな作品を求めているのでしょう?

A.玉田氏
エロのジャンルは安定して強いですが、いつ飽きられるかは分かりません。なので、人のやっていないこと、誰も描いていないジャンルを描いてもらいたいです。

Q.TwitterなどのSNSで作家を発掘する時、フォロワー数は多い方がいいのでしょうか?

A.齋藤氏
僕はフォロワーが多い人や、RT・いいねなどを多く稼いでいる人より、フォロワーが少ない人の方がいいです。
例えば、『悪魔のメムメムちゃんを「少年ジャンプ+」で連載している四谷啓太郎先生も、最初に知った時はフォロワー1000人に満たなかったと思います。そこで、まだ誰も声を掛けていないだろう。チャンスだ!と思って声を掛けましたね。あとは、『エンペラーといっしょ』を連載していたmato先生も1000人ちょっとくらいだったと思います。
フォロワーが多い人だと、他の出版社や媒体などから声が掛かっている可能性も高いため、自分の場合は逆に掛けづらくなっちゃいます。

時間の都合で質問コーナーは終了となりましたが、投稿者が編集部員に質問したいことは非常に多いようで、その後の編集部見学や交流会でも盛んに編集部員への質問が飛び交っていました。一部の質問と編集部員の答えを列挙していきます。

Q.WEBだとギャグマンガは受け入れられにくいのでしょうか?

A.玉田氏
そうとは限らないと思います。また、WEBと紙の雑誌、両方狙う作家さんもいます。
例としては元々「少年ジャンプ+」で『剥き出しの白鳥』を連載していた鳩胸つるん先生も「少年ジャンプ+」では閲覧数も多く、読者にも好かれていたんです。でも、そろそろ次のステージに上がりたいよね、という話を先生として「週刊少年ジャンプ」での連載開始を目指そうと決めました。そんな経緯を経て、最近『ミタマセキュ霊ティ』の連載が始まったという感じです。

Q.「少年ジャンプ+」は、他のマンガアプリに比べて読切作品が多いイメージですが、なぜなのでしょうか?

A.小池氏
作家さん・読者さん、両方にとって得だと思って掲載しています。読切は作品自体や作家さんの作家性を読者に試す大事な機会です。「読切なんて遠回り」とお考えになる作家さんもいるかもしれないですが、連載は作家さんにとっても時間的労力的コストが高いので、試すことは非常にコスパが良いと考えます。その得は読者にもそのまま波及します。一方、読切作品はコミックスが発売されないので、出版社の直接的な儲けにはなりません。だから、他のWEBメディア、特に出版社系以外の漫画アプリだと読切が少ない傾向があるのですが、上記の通り作品を研磨し作家さんに成長してもらう機会を作るという意味で長い目では出版社にも得だと思ってます。なので、なるべく多くの読切作品を掲載するようにしています。言い換えると、他のアプリに比べて読切作品が多いなら、作家さんに一番「投資」しているアプリはジャンプ+とも言えるかもしれません。


ジャンプ編集部見学!

座談会後、編集部員案内のもとジャンプ編集部へ。
初めて訪れた投稿者たちの中には『バクマン。』(大場つぐみ先生/小畑健先生)で実際に描かれていた風景そのままだと感動している姿も。
編集者の主な仕事内容の紹介や、現役連載作家とのこぼれ話、他にも投稿者からのさまざまな疑問に答えながら編集部見学となりました。


連載作品の生原稿が目の前に!

見学の途中には、「少年ジャンプ+」にて連載中の『青のフラッグ』(KAITO先生)と『群青にサイレン』(桃栗みかん先生)の生原稿を間近で見ることができる場が設けられました。作家直筆の指示やメモ、ウラ面に描かれたアタリなど、生原稿ならではのリアルさを体感。投稿者たちはその繊細で迫力ある筆致に魅入られていました。


イベントの終盤には交流会&原稿の持ち込みも!

編集部見学後は立食形式での交流会が開かれ、投稿者同士はもちろん、作家や編集部員、運営など参加者全員が自由に交流を深めました。
投稿者が編集部員や作家と気軽にコミュニケーションをとれるのもリアルイベントならでは。

また、交流会では投稿者が自由にイラストを描けるボードも設置され、イベントの盛況を表す記念の寄せ書きが完成しました。

さらに原稿持ち込みの場(事前予約制)も設けられ、多くの投稿者が自身の作品を編集者に持ち込んでいました。顔をつきあわせての打ち合わせは、編集者からのリアクションやアドバイスを直に得ることができる貴重な機会。中には今回が初の持ち込みで担当編集がついた投稿者の姿も!


最後は「少年ジャンプ+」編集長・細野修平より投稿者へのお礼と激励の言葉で会は締められ、「ジャンプルーキー!」初のリアルイベントは大盛況のうちに終了しました。


「デリバリーおじさん」の岡悠先生・青野てる坊先生がイベントの様子を突撃レポート!

「デリバリーおじさん」の作者がジャンプルーキー!イベントにデリバリーされた話。

当日の様子や参加者の感想などはTwitterでも見ることができます。


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