【第106回】「漫画家のツドイ」東京会場イベントレポート!

2023年6月25日(日)、東京・WITH HARAJUKU HALLにて「少年ジャンプ+」主催のイベント「漫画家のツドイ」が開催されました。このイベントは漫画家や連載漫画家志望者を後押しする企画で、漫画作りの参考となる様々なコーナーをご用意しました。
イベントは午前・午後の2部構成で、抽選招待の約500名の作家が来場。皆さんそれぞれトークステージや展示物、編集者や作家仲間との交流で、執筆のヒントを探していました。以下、大盛況だったイベントの様子を紹介します。

◆普段は聞けない執筆の裏話も⁉ 連載作家陣トークステージ!

会場内のステージでは「少年ジャンプ+」連載作家によるトークショーが開催されました。午前の部は『姫様“拷問”の時間です』の原作者・春原ロビンソン先生が、午後の部は『幼稚園WARS』の千葉侑生先生が登場。それぞれ約30分、担当編集とともに作品や連載の実情を率直に語ってくださいました。
以下、その貴重なお話の一部を特別公開!

● 午前の部/春原ロビンソン先生(担当編集・赤)

――漫画の勉強はどのようにされましたか?

春原 漫画家志望の頃、自分のことを天才だと思っていたので、一切勉強しませんでした(笑)。しかし持ち込みに何度も失敗し、「もしかして自分は天才ではないのかも?」と思い、ようやく勉強するようになりました。例えば雑誌の漫画賞があったら審査員コメントを読み、掲載されていれば受賞作品も読んで、どこが評価されてどこが注意されているのかを照らし合わせたりして。他にも、世にある「漫画の描き方」といった本を読みあさったり、友達の家に4コマ雑誌が大量にあったのでそれも受賞ページを全部読みました。特に4コマは、審査員コメントでも「キャラクターをしっかり描く」「説明しすぎない」とよく注意されていたので、自分でも気を付けるようにしていました。

 技術的なものは本で勉強されたと思いますが、他に勉強したものはありますか?

春原 ちょうど「ニコニコ漫画」ができた頃で、運よく最初の連載陣に加えていただきました。連載形式で漫画を描けるのは勉強にもなりましたし、ニコニコ漫画は作品を掲載したらすぐに読者からコメントがもらえたことが良かったです。描いたものに対する読者の反応がすぐに分かるので、当時とても参考になりました。

――企画を立てる際に気を付けるポイントを教えてください。

春原 『姫様“拷問”の時間です』(以下、『姫様』)は、担当の「可愛い女の子がご飯を食べて笑顔になっているところが見たい」から始まりました。それで「どんな子にご飯を食べて笑顔になってもらいたいか?」と考え、「普通ならご飯をたくさん食べられないような子?」「それはどういった子?」「捕まっているお姫様?」と考えていきました。そして頭で考えるだけだとピンとこないので、僕は実際にネームを描くようにしています。漫画にすると善し悪しがわかりやすいですからね。『姫様』のトーチャーも最初は男でしたが、男が拷問官だと必要以上に可哀そうに見えるので女性にしました。

――キャラクターを作る際に気を付けているポイントは?

春原 『姫様』の場合、主人公の姫様の色々な面が見えるように他のキャラクターを配置しています。このキャラと話す姫様は友達の顔、このキャラだったらお姉さんの顔、このキャラなら幼い顔…と。

 周囲のキャラに主人公のあらゆる側面を引き出してもらう、役割分担ですね。春原先生は、よく言われる「キャラを立てる」についてはいかがお考えですか?

春原 そのキャラを色々なシチュエーションに置いて、言動がそのキャラらしいかですね。読者が「このキャラはこんなことしない!」と想像できる状態です。無理に奇抜なことをさせなくても、人として一貫していればキャラは立ちます。例えば実在の友達とか、どんなことをするか想像できますよね。友達ってキャラが立っているんですよ。

 「友達はキャラが立っている」。たしかに…!

春原 親しい人間は「こういう人」って分かるじゃないですか。漫画のキャラクターも同じです。キャラの受け答えが想像できて、想像させる要素が物語中に描かれているか、でしょうね。ただ椅子に座っている場面でもキャラは出ます。きちんと足を揃えているか、だらしなく足を投げ出しているか、とか。こういった描写の繰り返しです。難しく考えず、周囲の人間を観察するといいと思います。

● 午後の部/千葉侑生先生(担当編集・林)

――漫画の勉強はどのようにされましたか?

千葉 アシスタントの経験がなかったので、とにかく本を読んで勉強しました。「少年ジャンプ+」で連載が決まった時も、「絵の描き方」「コマ割りの仕方」みたいな技術的なものから、自分が好きなSF関連の資料まで色々と。あとは林さんに勧められて色々な映画も観ましたね。

 「これは観てください!」と、お勧め映画のリストをお送りしましたよね。

千葉 上からひとつずつ観ていきましたが、私の好みと違ったのか全部面白くなくて(笑)。でも「普段触れないジャンルにおける、自分の好き嫌い」を知ることができました。なので、好きなものを探すことも大事だと思いますが、好みではないジャンルを観てみることもお勧めです。

――企画を立てるときに気を付けていることはありますか?

千葉 「女子大生がドリフトする話」「イケメンが死にまくるラブコメ」とか、一言で表すことができて面白そうだと思える話を意識しています。企画打ち合わせの時はネームを見せることが多かったですね。

 これは人によりますね。プロットで打ち合わせされる作家さんもいらっしゃいます。

千葉 あとは、出だしの面白さで作品の良し悪しは決まると思っています。『幼稚園WARS』も、最初のページで幼稚園の先生と思ったら次のページで銃を持っている…というギャップを一番大切にしていました。

 実際、世の中にめちゃくちゃ漫画が溢れている今、新連載は1話目が面白くないと読者は追いかけてくれません。連載作品の1話目は、死ぬ気で読者をつかんでいただきたいです。

――作画の際、カラー原稿とモノクロ原稿の違いはありますか?

千葉 ものすごくかいつまんでお話しすると、連載作品の作画としては、カラーの方がモノクロよりも楽です。カラー原稿は背景や塗り分けなど、1枚の絵をアシスタントさんと分担して作業できます。モノクロだと並行作業が難しいことと、絵のタッチやニュアンスなど自分じゃないと出せない繊細な作業になるので、時間がかかります。カラーはマニュアルさえあれば、他の方にお願いできることが多いんですよ。

 分業の仕方やアシスタントさんへの依頼方法って、実は学ぶ場所があまりないんですよね。人にお願いしつつ自分の思う通りの絵に仕上げるのは、かなり難しいことだと思います。

◆編集部員による超実用Q&A!「創作のギモン」「デビューのギモン」

先生方のステージの前後では編集部員によるトークイベントも。参加者より寄せられた質問にお答えするという内容でしたが、皆さんの本気度合いが感じられる率直な質問ばかりで、答える編集部員にも熱が入りました。

●「創作のギモン」

ストーリーやキャラクターの作り方など漫画執筆におけるQ&A。編集部員が実際の担当作品を例に、できる限り具体的な回答を努めました。漫画を描く皆さんにも、少なからず参考になったのではないでしょうか…?
以下、質問と回答の一部を抜粋して紹介します。

――どんな主人公を求めていますか?デビューさせた作品を例に教えてください。

片山 多くの読者が感情移入できて、さらに飛び抜けた個性があるキャラクターがいいですね。『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴)の原点となる読切『鬼殺の流』の主人公は、無口で目が見えず、背景も語られず、クールに鬼を狩りまくるキャラクターでした。しかし連載作品の主人公としては感情移入できず、吾峠先生に相談して竈門炭治郎が生まれました。炭治郎は言動も戦う理由も多くの読者が共感できて、物語が進むにつれて「ものすごく優しい」という個性も見えてきた、良い主人公です。

――人気になる作品、売れる作品などの特徴を教えてください。

藤田(K) よくお話しするのが「この作品がコミックスになった時、帯にどんな文言が書かれるか想像してください」ということです。この文言がすぐに出る作品は売りのポイントがはっきりして、他人に伝えやすいから口コミでも広まりやすく、売れる可能性が高いと思います。

――連載漫画と読切のネタの違いはありますか?

籾山 「少年ジャンプ+」の読切は、連載をそこまで意識していない作品も多いです。読切のみのネタはストーリーに驚きがあり、まとまりがあるものが向いていると思いますが、主人公キャラクターに読者の支持を得られるネタは読切としても連載ネタとしても通用すると思います。

――企画はキャラクターと設定、どちらが先行になることが多いですか。

片山 僕の場合は設定先行の作家さんが多い印象です。例えば『鬼滅の刃』はキャラ先行に見えますが、元になった読切作品『過狩り狩り』が「明治・大正の頃の日本に吸血鬼がいたら」という設定から作られた作品です。そして他の作品・作家さんも先に設定を作り、「この設定を一番面白くするのは、どんなキャラクターを主人公に据えれば良いか?」と作られている印象がありますが…これに関して正解はないと思います。

この他にも「衝撃の展開を作る際に意識すること」「魅力的なキャラデザを作るコツ」など、人気を獲得するための実践的な質問が挙げられました。

●「デビューのギモン」

もう1つのトークイベントでは「少年ジャンプ+」におけるデビュー手順、編集者やアシスタントの付き合い方など、漫画家として活動を続けるための、より突っ込んだ内情が語られました。
以下、質問と回答の一部を抜粋して紹介します。

――連載作家さんのスケジュールを教えてください。

高橋(A) 「少年ジャンプ+」では隔週連載の方が多いので、2週間内のスケジュールを例にします。ネームが速い作家さんだと2日で上げて、作画は7~8日ですね。逆にネームに時間をかけられ、その分作画は速い方もいらっしゃいます。どちらも大体10日を執筆に充てていただき、できるだけ週2日は休んでいただくようにしています。

――漫画家になる上でアシスタント経験はあった方がいいですか?

岡本 アシスタント経験がない連載作家さんもいらっしゃいます。ただ個人的には、2つの理由で経験した方が良いと思います。1つは自分が連載した時に直面する苦労を知ることができます。「2週間で20ページ描くということはどういうことか」を、実際に見ることができます。もう1つは自分がアシスタントを雇う場合、どういう指示を出して、どういうコミュニケーションを取ればいいのか知ることができます。

――担当はなるべく1人(1社)に絞った方がいいのでしょうか?

角谷 そんなことはありません。複数人担当がいることでチャンスが増えたり、様々な意見を聞くことができます。ご自分の可能性を広げる意味でも、複数の担当さんとやり取りをしてみてもいいと思います。

――持ち込みから読切の掲載まで、どのくらい時間がかかりますか?

藤田(K) 大体2、3ヵ月のイメージがありますが、これは作家さんそれぞれです。ただ「少年ジャンプ+」は紙の雑誌のようなページ数の制限がないので、雑誌内での調整もそれほど必要なく、面白ければ掲載されるというシンプルなものです。実際、毎年200本以上の読切を公開しています。

他にも「原稿料や印税」「漫画家として生活が確立できるステージとは」「原稿執筆や単行本作業以外の漫画家の仕事」など、デビューや連載獲得を見越しての質問が寄せられました。

◆漫画のヒントが散りばめられた数々の展示!

さらに会場では「少年ジャンプ+」連載作品の原画も展示されました。プロの手による線の入れ方や塗り方を間近で確認できて、作画の勉強にもなったはず。

また、編集部が50名以上の連載作家陣に行ったアンケートもパネル展示しました。「主人公を描く時に気を付けていること」「アイデアに詰まった時にすること」「新人の頃の自分に伝えたいこと」といった質問に対し、様々な回答が寄せられました。プロ作家がそれぞれの執筆を積み重ねて至った大量の最適解は、まさに壮観!

◆デビューのチャンス! 持ち込み&フリートークコーナーも

開催時間を利用して、事前予約して原稿を持ち込んだ作家との打ち合わせも行いました。このチャンスを逃すまいという熱量の高い作家ぞろいで、この持ち込みで担当が付いた新人作家も多数いました。

また打ち合わせテーブルの横に、編集部員と来場者が語らうフリースペースも用意しました。その場で編集部員に疑問をぶつけたり、新人作家同士がそれぞれの悩みを相談したりと、創作の刺激にしていただけたのではないでしょうか…?

◆その他、様々な施策で新人作家を応援!

会場エントランスには、来場者が自由に描き込めるお絵描きパネルも設置。漫画家としての立身を目指す新人作家に混ざり、春原ロビンソン先生の絵も…!

他にもiPadやAmazonギフトカードなどが当たる抽選会、来場者プレゼント…といったお楽しみもご用意。配付した特製トートバッグには、今イベントのために編集部が作成した創作に役立つ特製小冊子も入れさせていただきました。「少年ジャンプ+」ならではの漫画作りのノウハウを詰め込んだので、参考にしていただけると幸いです。

以上、「漫画家のツドイ」の様子を簡単にご紹介いたしました。
「少年ジャンプ+」にとって、次なる漫画界を担う作家はまさに要! そんな皆さんの努力や才能を後押しすべく、編集部は今後も様々な企画を実施していきます。ぜひ編集部のサポートを活用しつつ面白い漫画を生み出して、「少年ジャンプ+」でのデビューや連載獲得を目指してください!
 撮影:中村力也(配布物写真を除く)

◆当日のイベントの様子を動画で公開中!


www.youtube.com

◆「漫画家のツドイ」大阪会場で開催決定!参加者募集開始!!

2023年11月18日(土)に大阪でも開催することが決定しました。
参加をご希望の漫画家のみなさま、ぜひ下記の「漫画家のツドイ」サイトからご応募ください。
※本イベントは漫画を描いたことのある人なら誰でも参加できる漫画家を対象としたイベントです。
※応募には「ジャンプルーキー!」または「マンガノ」への作品投稿が必要です。
※応募多数の場合は抽選で決定します。



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