【第125回】『道産子ギャルはなまらめんこい』伊科田海先生にインタビュー! 人気ジャンルで勝ち残るためには?

こんにちは! 少年ジャンプ+編集部です。

「ラブコメ」「能力バトル」などに代表される少年漫画の人気ジャンルは、すでに世の中にヒット作がひしめく激戦区。それだけに、どうやったら差別化できるのか悩まれている新人作家の方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな人気ジャンルであるラブコメ作品の中でも、特に熱い読者からの支持を獲得しTVアニメ化も果たした『道産子ギャルはなまらめんこい』作者の 伊科田海先生にインタビュー!

少年ジャンプ+漫画賞 2024年【冬期】」の特別審査員でもある伊科田先生に、人気ジャンルで勝ち残っていくために大切なこと、そして新人賞に向けて新人作家さんが心がけるべきことを伺ってきました。

第1話を読む

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――『道産子ギャルはなまらめんこい』(以下、『どさこい』)は、出張編集部イベント「ジャンプスカウトキャラバン」で伊科田先生が持ち込まれた作品を元に制作された作品だと伺いました。
元々の作品から『どさこい』連載時の形に修正される中で、残した要素/変えた要素を詳しく伺えれば幸いです。

当時「ジャンプスカウトキャラバン」で持ち込んだ漫画は、〆切の関係上制作期間がかなり短かった事もあり、ネームも描かずぶっつけ本番で原稿から入ってしまいました。
そのため、ほとんど内容を添削したり調整したりする事なく、その時の思いつきを詰め込んだラブコメ漫画になってしまいました。

その中には色んな要素が入っていて、「ギャル」「ミイラ」「人型アンドロイド」「北海道弁」などなど…。
他にも細かい要素はありますが、主にこの4つの要素で構成された漫画でした。

『どさこい』の前身的作品
『インスタントギャルメンコちゃん』。
(『道産子ギャルはなまらめんこい』コミックス13巻収録)

そこから、「ジャンプスカウトキャラバン」で担当になって頂いた週刊少年ジャンプの編集の方と少年ジャンプ+の編集の方(現担当さん)とのやり取りが始まり、これらの要素がバラバラになります。

まず、週刊少年ジャンプの編集の方が電子工学にお強い方だったので、「ジャンプスカウトキャラバン」に持ち込んだ時点で「人型アンドロイド」の設定を引き継ぎラブコメ漫画の企画を考えようという流れになります。

次に、少年ジャンプ+の方でも企画を作る事になったのですが、既に「人型アンドロイド」を使っちゃったので、余った「ギャル」と「北海道弁」を組み合わせて作る事になりました(『ミイラ』はどうやっても邪魔だったので除外)

すると、「ジャンプスカウトキャラバン」が終わった日の夜に、少年ジャンプ+の担当さんから「2日後に読切企画の〆切がありますが、出せます?」と連絡が来まして、ダメ元でやってみようかなと、すぐに描き始めたのが『どさこい』の第0話の原型(キャラデザ以外ほぼそのまま)でした。

2日後の〆切に読切ネームを提出しましたが、打ち合わせもなくリテイクもないまま素通りで提出する事になったので、正直「これじゃ通らないだろうな」と思いました。
なのでその読切が通ったと聞いた時は、喜びよりも不安の方が大きかったですね。

その後、連載会議で『どさこい』の企画を提出する際に、その読切を第0話として構成する事になっていたので、そこからは特に要素の変化はありませんでした。


――ラブコメ作品は人気作も多い、群雄割拠のジャンルだと思います。その中で差別化を図るために、『どさこい』ではどんなことを意識されたのでしょうか。

結論から言うとキャラデザです。
というのも、他で差別化を図れるほどの技術がないので、そこしか個性を出せる所が無いと感じていました。具体的に言うと「目」と「胸」の描き方です。

『どさこい』のメインヒロインである冬木さんは「ツリ目」で「巨乳」です。
これは単純に自分の好みも含まれていますが、その時自分が知っているラブコメのメインヒロインの中に「ツリ目」の「巨乳」キャラが思いつかなかったんです。
大体こういったデザインはサブヒロインや変化球的な立ち位置のキャラに採用されるケースが多いので、あえてメインに据えたら差別化できるのではというのが最初の発想です。

『どさこい』メインヒロイン・冬木さんのキャラデザ。

結果としては、好みが大きく分かれるデザインになったと自覚していますが、「この娘はあの漫画のキャラ」と、少しでも認識しやすくなったのではないかなと思います。

あと、世の中は広くて色んな方がいらっしゃるので「自分だけがこれをイイと思ってるんじゃないか?」と感じても、案外自分と同じような感性を持っている人にはちゃんと届いてくれます。
所謂「大衆向け」を目指す方には是非、「小さなマス」を逃さずに「小さなマスの集合体」を大衆に向けて描いて頂きたいですね。


――ラブコメではヒロインの魅力がかなり重要だと思いますが、『どさこい』でヒロインたちを魅力的に見せるために、伊科田先生がキャラ作りや演出等で気をつけられていたポイントがあれば伺いたいです。

キャラ作りは主役になるキャラの「特性」「要素」が最も重要だと思います。
主役の特性や要素をその作品のテーマに反映させる事で、「誰が何をするのか?」が分かりやすくなり、作品自体の訴求力が高まります。
例えば『どさこい』の場合だと、主役となる冬木さんの特性は「ギャル」で要素は「道産子」になります。

また、他のキャラクターについては主役や既存キャラとの「比較」を意識して作ると、他のキャラと被る事がなく、自分の好みや癖にも寄らずに様々なパターンの特性や要素に挑戦出来ます。

演出面はその作品の「舞台」を強く意識する事が効果的だと思います。
『どさこい』では北海道という明確な舞台があったので、必然的にその景色や特有の状況がヒロインをより魅力的にする演出になっていました。
特に雪や白い息、頬や耳の赤らみなんかも、キャラクターの表情をより鮮やかにしてくれますし、臨場感を感じてもらいやすくなります。
その作品に合った景色や出来事を、キャラクターの心情や表情に合わせて描く事で、より魅力的に演出出来ると思っています。

北海道ならではの冬の寒さを活かした、第0話の冬木さんの表情と演出。


――伊科田先生は今回「少年ジャンプ+漫画賞 2024年【冬期】」の特別審査員に就任されました。
このブログが発表された段階で賞の応募締切まで1ヶ月弱ですが、新人作家さんが賞の締切直前に特に心掛けておくべきポイントは何だと思われますか。

あまりこういう事は言うべきではないかもしれませんが、ある程度の「妥協」は必要だと思います。
痛いほど分かるのですが、新人の時はとにかく「こだわりたい」ですよね。そうしないと何の為に漫画を描いているのか分からなくなるし、何より自分が納得できません。

ただ、そうしていると「完成する可能性」を失っている場合があります。
こだわり過ぎて〆切に間に合わず、ずるずると完成を先延ばしにしてしまい、最終的に途中で飽きて次の漫画を描き始めたりして、同じような結果を繰り返す。
こんな経験をされた方は、新人作家さんの中でも多くいらっしゃると思います。

しかしどんな形であれ、完成しなければ誰かに見てもらう事は難しいので、変化を恐れずに妥協する事も時には必要です。

実際、連載作家になれば〆切に間に合わせる為、やむを得ず妥協したり、何かを犠牲にする事も多々あります。
その練習として、今のうちから「理想主義」よりも「完成主義」を心掛けてみるのもいいかもしれません。


――最後に、「少年ジャンプ+漫画賞 2024年【冬期】」に向けて作品作りを進める新人作家の皆さんに、改めて一言いただけますと幸いです。

少年ジャンプ+は業界の中でもトップクラスに注目度の高い漫画媒体なので、漫画家には夢があると強く感じられる場所です。
この新人賞をきっかけに沢山の才能が世に出ることを祈りつつ、特別審査員としてあらゆる可能性を零さないように全力を尽くします。


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伊科田先生、ありがとうございました!
先生からお話のあった「キャラデザ」「舞台」、そして主人公の「特性」「要素」などを、ぜひ新人作家の皆さんには作品制作で強く意識していただければと思います。

また、「少年ジャンプ+漫画賞 2024年【冬期】」の〆切は今月末に迫っています。「理想主義」よりも「完成主義」という言葉の通り、限られた時間の中で描き上げられた皆さんの力作を拝読するのを、心待ちにしています!



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