【第83回】最初が肝心! 人気作品から学ぶ「掴み」の技術!!

ジャンプルーキー!をご覧の皆様、こんにちは。
今回のブログを担当させていただく、ジャンプ+編集部の岡本です。

今回のテーマは、【最初が肝心!人気作品から学ぶ「掴み」の技術!!】ということで、
漫画における冒頭部分についてお話しします。

冒頭、導入、掴み、言い方は色々ですが、漫画の最初の10p程度だと想定してみましょう。
ここで読者に「ややこしいな」「退屈だな」「面白くなさそう」と思われてしまうと、どんなに時間を費やし、全力で仕上げた作品でも、その続きを読んでもらうことは難しいでしょう。
残酷な話ですが、だからこそ、冒頭で読者の気を惹き、次のページへと進んでもらうことが重要です。
そのための技術を、人気作品から学んでみよう!というのが本日のテーマです。
※紹介する作品・意見は岡本個人によるものであり、編集部としてのものではありません。

では早速、1作品目です。

説明不要の大ヒット作ですが、

  • 教壇に立つ謎のタコ型生物
  • 「起立!」の号令とともに向けられる銃口
  • 圧倒的弾幕を華麗に避けながら出席を取る

…いかがでしょうか。強烈なインパクトと同時に、「この生物は何!?」「一体どんな状況!?!?」と、次の展開が気になって仕方ないのではないでしょうか。誰もが知っている教室という舞台で繰り広げられる「暗殺」という異常事態…もはや不可抗力で、ページをめくってしまいます。
読者がよく知っているものを基盤にして、複雑さや理解するための労力を排除しつつ、そこに目を惹く異常な要素を組み合わせる。応用が効きそうな技術ですね。


続いても週刊少年ジャンプのヒット作から。
主人公・トリコの初登場シーンは編集部でも「お手本」と言われるほどの名シーンです。
具体的な内容としては、

  • 数メートルの巨大な虫を餌に、鉄骨とロープで釣りをしている
  • エビを手掴みで丸齧り
  • ブランデーの瓶を手刀で切り、一気飲み
  • 近くに生えていた「葉巻木」を折ってくわえ、指パッチンで着火

…というものです。
トリコの豪胆で健啖家な面を強烈に印象付けると同時に、葉巻木というそのまま葉巻になる植物の存在、巨大な虫、さらにそれを餌として釣りをする=さらに巨大な生物がいる、という、「キャラ見せ+この世界がどんな場所かの説明」を非常にスマートに達成しています。
やることが多い冒頭ですが、こういった複数の役割を「兼ねる」シーンを入れることで、上手く読者を楽しませつつ、キャラや世界観が説明できるのではないでしょうか。
ちなみにこの「兼ねる」技術については、『暗殺教室』の松井優征先生も、「ジャンプの漫画学校」で語られています。


冒頭、ではないのですが…主人公、一歩の才能の見せ方が非常に巧みです。
いじめられっ子の一歩は、プロボクサー・鷹村に出会い、憧れを抱きます。
「ボクシングをやりたい!」と言う一歩に、鷹村は「ジャブで空中の木の葉を、10枚掴みとれ」という課題を出します。
期限となる一週間後…

  • 一歩は見事に成功し、10枚の木の葉を掴み取る。
  • 驚く鷹村。「なんでできちゃったんだよ…」と、プロである鷹村さえまさか出来るとは思っていなかったレベルの課題だったことが判明。
  • しかも一歩は左手だけでこの課題をクリア。「両手で10枚のつもりだったのに」とさらに驚く鷹村。

見事な「キャラ見せ」ですね!
ここでは、一歩が、プロの第一線で活躍する鷹村を驚かせる存在であること、さらには「両手で10枚の課題を片手でクリアした」と明かし、一歩の才能にもう一段の凄みを持たせています。
漫画において主人公の存在は重要です。特に冒頭では、「こいつは凄い」「ずっとこいつを見ていたい」と思わせることで、次のページをめくってもらえる確率も高くなります。

以上、漫画の冒頭についてお話しさせていただきました。
あくまで今回ご紹介したのは先例、参考意見として、「続きが気になって仕方ない」「凄い作品に出会った!」と鳥肌が立つような冒頭を考えてみてください。
いつか漫画賞や持ち込みで、皆様の作品を拝見できる日を楽しみにしております。



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