【第75回】200万閲覧突破!Twitterでバズった話題作「ぼくとねこ」作者初インタビュー! 投稿者必見!読者に刺さるストーリー作りの秘訣とは?

こんにちは。ジャンプ+編集部も2年目に突入しました、まだまだ新人のF田です。
突然ですが、皆さん、ぼくとねこというジャンプルーキー!投稿作品をご存じですか?

ピンク色の有害な霧に覆われてしまった世界で、「ねこ」と共に生きる「ぼく」の物語。序盤の描写で、今まさに起こっているコロナ禍を想定した方も多いのではないでしょうか。
Twitterを中心に大きく話題となるも、作者のyouさん・作品の多くは謎に包まれていました。
あの優しい物語を作った方はどんな方なのか? そして、なぜ猫だったのか? 担当のO本さんとともに「ぼくとねこ」創作裏話を聞いてみたら、作品作りの原点に立ち戻ることができました。

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<「ぼくとねこ」着想の背景―コロナ禍だからこそ、何か描かなきゃ嘘だと思った>

F田:本日はジャンプルーキー!編集部ブログのためにありがとうございます! まず初めに、「ぼくとねこ」をどのように思い付かれたのかお伺いしてもよろしいでしょうか?

you:去年の4月、1回目の緊急事態宣言に突入した時に、なにか描かねばというよく分からない義務感にかられて。じゃあとにかく毎日10枚ずつマンガを描いて、みんなが読めるようにしようと思って。それで描き始めました。

F田:ピンク色の霧に覆われた世界が描かれますが、あれはやっぱりコロナのことなんですね。
 

you:はい。でも、いちいち理屈的なアレで始まっていないので…。何もするな、家に閉じこもってろって煮詰まった状態に放り込まれた時に、何か描かなきゃ嘘だと思いました。今描かなきゃダメだろうと。じゃあ何を描こうかと…。考えて、猫かなと。今の状況で猫について描くのは意味があるだろうなと思って。
F田:コロナだから何かしなきゃという気持ちと、猫が好きだという2つの要素で描かれたということなんですね。
 

you:はい。猫はその、これだけ猫が好きだと描く価値が出てくるだろうなと思って。だからコロナで何かってなったら、猫について描くのがいいだろうと。それは勘。自分の持ち合わせているものを考えて、猫かなあと。

F田:なるほど、そうやって始まったんですね。「ぼくとねこ」はSNSでかなりバズったかと思うのですが、どうでしたか?

you:突然始まったような感じ。ぐわっと伸びた。バズるっていうのは一瞬にして起こるんだなと。
 

F田:盛り上がっていましたよね。どう思われましたか?
 

you:ちょっと焦っていました。え!?と。感想とかも出てるのかなと思ってTwitter見たら、「猫──!」みたいな。なんじゃこりゃと。珍しい経験をさせていただきました。でも身内や知り合いの人間、一切誰にも話していませんので…この世界で私とこの作品が繋がっていることを知っているのは、F田さんとO本さんだけです。

F田:あら、光栄です。

 

O本:ははは

 

you:この世界で、2人だけ。だから、何にも周りは変わってない。一切誰にも言ってないので。一人でネット見てビビってる感じで。いつまで続くんだろうと。もう落ち着きましたよね。ほっとしました。


<「ねこ」のモデルはyouさんの飼い猫>

F田:また、猫についてお伺いしたく…。「ぼくとねこ」の猫にモデルはいるんでしょうか?
 

you:います。16年くらい前かな? 庭に子猫でやってきたんですよ。それから飼い始めて。だからもう相当なおばあさん。若い頃は気が強くてツンツンしてて、でも最近は甘えてくるようになって、尚更可愛く見える。まだまだずっと生きている予定です。

F田:猫に関して、何か一言お願いできますか?
 

you:なんだろう…。あ、全国の猫に迷惑をかけたかもしれない。「猫を抱きしめに行く!」みたいなことを言う人が結構いて、全国の猫に迷惑をかけたかもなとは思いました。


<話作りについて:読んだ人の解釈で話が完成する>

F田:それでは次は、作品作りについてお伺いしたく…。私、youさんが描かれる猫の絵がすごく好きで。
 

you:ありがとうございます。でも1話目の猫はかなり適当な感じで描いているはずなんですよ。でも描いているうちに、猫をちゃんと描かないのは嘘だと。なんとなく、勘で。猫をちゃんと描かないとお話自体成り立たないだろうという気がしてきたので、だんだん猫だけ手が入ってきちゃったんです。

F田:最後の方の猫はすごく丁寧に描いてありますもんね。
 

you:はい。でもその辺は理屈がどうとかいう話じゃなくって。描いているときはなんとなくこうだよなと思って進めているんです。

F田:なるほど。明確な狙いがあるわけじゃないんですね。
 

you:はい。結果としてTwitterの感想とかを見ると「猫だけちゃんと書いてあって他はいい加減なのは逆にいい!」みたいなの書いてあって、ふふ、なるほどね!と。

F田:読者の方が解釈してくれるんですね。

 

you:そう。描く人みんなそうだと思うんだけど、描いているときは、描いていない時よりちょっと頭がいいんですよ。で、シラフの時じゃないけど、描いてない時に「あそこはなんでこうなったの?」とか聞かれると、なんでだろうねえと。そういう返事しかできない。ほとんどの人は多分そうだと思う。だからみんながいろんなこと言って褒めてくれて、説明してくれるのってありがたいなと。

F田:読んでくれる人が解釈してくれて完成すると。
 

you:そうですね。それぞれがそれぞれの中で、すごく理想のイメージがあると思うんで。なんかこう、思い入れがすごくってありがたい。だから、おそらく作者は何も言わない方が良いだろうと。みんなの頭の中でいい形になって残っているみたいだから。


<話作りについて:セリフは嘘のないように>

F田:また、セリフ運びがすごい素敵ですよね。優しくてあったかい感じがとても好きでした。
 

you:ありがとうございます。でもなんていうか、描いている方は優しいを終着点にしようと思って描いているわけではないので。とにかく、嘘がないように。なんでもそうなんですが、カッコつけようとか、みんなに優しいと思ってもらおうとか、泣かせようとか思って描くのは、嘘が混じってるんですよ。それを到着地点に設定した時点で、話の流れが、死にかけているんです。

F田:嘘がないように…

 

you今の時点で正直に嘘のない感じで描けば、結果どうなったかは読んだ人が判断してくれる。もちろん良い話にしようと思って作っているんですけれども、泣かせてやるぞと思って書いているのではなく、なるべく嘘をつかないようにしようと思っていました。

F田:じゃあたとえば、よく感動的なシーンで使われる、「絶対仲間を見捨てたりなんかしない!」とかいうセリフがあるじゃないですか。

you:仲間を見捨てたりしないとその人が本当に強い思いで書いているのなら、そこには嘘はない。でも仲間を見捨てないと描くと読者がここで泣いて喜んで…と思って描いたものには、嘘が混じっている。読者が素敵と喜んでいるならそれはそれでいいんですけど。本当に強い思いで書いている人は、作家として強いと思います。

F田:なるほど…

 

you:もちろん商売だから、盛り上がるようにやらなきゃいけないとは思いますが、結局描いている人は自分の中から引っ張り出してくるしかないから。根っこのところに太い思いがあると、後は自然に形が出来上がっていくと思います。それを見て作者はなんて冷たい考えなんだろうと思うかもしれないし、この人は優しい物語を描くいい人だなあと思うかもしれない。本人が正直に書いた結論に対し、周りの人がそういうふうに思うということです。

O本:身につまされるというか…。ありそうな話というか、そういうテンプレというか、こういう話ってこういう感じだよね、こういう主人公でこういうライバルだよね、みたいなことを重ねて描くのってやりやすい。

you:それは創作の落とし穴ですね。でもそれをずっとやっていると、抜け殻みたいなものしか、描けなくなると思います。

F田:なるほど…恐ろしいですね。
 


<ルーキーの投稿者に向けて>

F田:最後に、ルーキーに投稿している方へのメッセージをお伺いしたいです。
 

you:若い方に一言!みたいなのがあるとしたら…描いている人だとある程度わかるかもしれないんですけど、漫画って全部が出ちゃうんですよ。その人のもう、中に隠していることでもなんでも。自分でも気が付いていないことでも、なんでもかんでも、漫画って出ちゃうんですよ。恥ずかしい。

F田:恥ずかしいと。

 

you:はい。でもどのみち最後は、恥ずかしいと思ってたなんて無駄なことだったと思う瞬間が来ますので。今のうちに開き直っておいた方がいいんじゃないでしょうか。それこそ70とかになって、なんであんなに恥ずかしがってたんだろう、周りなんて全然関係なかったのにとか、自分が好きなように描けばよかったのにと後悔しても、もう体が動かないでしょうから。20代くらいで開き直ったらいかが?と。私もいい歳になってから開き直りましたから。

O本:恥ずかしいとか、なんでもないことだと。
 

you:はい。

 

F田:でしたら、少し上の年齢層の方に向けてはいかがでしょうか。ルーキー投稿者や持ち込みに来られる方には、年齢気にされる方も多いので。十分お若いのに。

O本:20代とかでも、年齢を気にされる方が多いんですよ。
 

you:あんまり無責任なこと言えないなあ、自分のこと差し置いて言うのもなんだけど…えー、なんだろう、才能というものがあるとして、自分の才能は何かといえば、この歳になっても漫画を描こうとしたことでしょう。それを信じられるのなら、続けてみればいかがでしょうか。

F田:描きたいと思う気持ちが大事ってことでしょうか?
 

you:大事っていうか、他の人どうこうとかじゃなくて。自分でもどうにもならない領域の話だから、放っておいても描くんです。何が才能かと言われたら、いい歳になっても、まだ描こうかなと思えることでしょう。儲かるとかそういう話ではなくて、そうせざるを得ない部分が才能ってもんじゃないでしょうか。

O本:いい話を聞いた…。

 

F田:描きたいと思うことが才能…! 本日はありがとうございました!


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いかがでしょうか? youさんのおっしゃるとおり、ジャンプルーキー!に投稿してくださる皆さんは、描きたいと思う才能を既にお持ちの方々だと思います。才能あふれる皆さんのご投稿、楽しみにお待ちしております!


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