3月4日発売のコミックス上巻が即大重版!発売2週間にして早くも35万部突破、そして連載もいよいよクライマックスの『タコピーの原罪』。最新話が更新するたびにTwitterのトレンド1位連発の衝撃的な初連載を飾ったタイザン5先生に執筆の裏側、そして「ジャンプルーキー!」などについて、担当編集者であるジャンプ+編集部・F田同席のもと語って頂いた!
◆「思いつき」から打ち合わせで決める
――過去に発表された読切『ヒーローコンプレックス』『キスしたい男』は異なる方向性の作品ですが、どのように考えられましたか?
タイザン5:読切はその時の思いつきから作ったので、決まった方向性がなかったのだと思います。『ヒーローコンプレックス』は「漫画家の友達が主人公をネタにしてきて、それが嫌だ」という話を思いつき、展開を派手にしようとふたりに収入格差をつけたり、分かりやすいように兄弟にして、F田さんと打ち合わせしながら形にしていきました。
『キスしたい男』は、最初は主人公がTOEICの試験を受ける話でした。英語を勉強してアメリカに行くことを目標にしていました。
F田:「夢に向かって進むキラキラした話にしましょう!」と打ち合わせしていましたよね。
タイザン5:ただ、あまり上手くいきませんでした。その時F田さんに、ストーリーの中の主人公のトラウマみたいな苦悩が面白いと言われて、そこを主軸にシフトチェンジして、現在の形になりました。どちらも最初から全部を決めるのではなく、思いついたものを打ち合わせしながら決めていきました。
――『タコピーの原罪』はどのように生まれましたか?
タイザン5:F田さんに「好きな題材で描いてみては?」と言われて、『ドラえもん』が好きなので「陰湿なドラえもんをやりたい」と思いついたことが最初です。さらにタイムリープものにしたら連載として続けられるのではと思いました。
F田:アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』の話もよくされていました。お好きな作品でしたよね。
タイザン5:現代人の主人公が異世界に行く、という異世界転移ものですが、タコピーは異星人が現代に来るという、逆バージョンのイメージでした。
――人物や物語展開は当初、どこまで考えられていましたか?
F田:まず連載会議を経た段階で、編集部では「この作品は2巻完結がベストでは」という意見がありました。それをタイザン5先生にお願いした上で考えて頂いた形になります。
タイザン5:そこから全話のプロットを練っていきました。ただ最後の部分は連載中に少し調整しました。
◆最初に全話を組んだ『タコピーの原罪』
――全話のプロットやネームはどれくらい時間をかけられましたか?
タイザン5:大まかなプロットは1~2週間くらいです。テキストで「第○話:何々をする」みたいなものを全話分作りました。
F田:その時点で仮のサブタイトルも付けていましたよね。「まりなちゃんの家庭」とか、「兄vs弟」とか。
タイザン5:話ごとに何となくテーマがあったのだと思います。その後はネームですが、半分くらいは連載前に作りました。最初に大まかなネームをF田さんにお送りして、打ち合わせして、2~3回の直しを経て、大体2日くらいで決定稿になりました。
F田:結局、第1話の作画に入る頃には9話分のネームができていましたよね。
――ちなみに作画はどれくらいかけていますか?
タイザン5:理想は5日間で1話ですが、たまに7日くらいかかる時もありました。
――執筆の各工程で、特に重視していることはありますか?
タイザン5:ネームはできる限り、冒頭と引きのインパクトを出したいと考えていました。最初と最後が大事というイメージです。あとはばーっと描いて、打ち合わせで掘り下げていく感じでした。
作画では、顔のアップの大ゴマを意識しています。特に大事な台詞では、分かりやすいシンプルな真正面の顔にすることが多いかもしれないです。
――『タコピーの原罪』は絵に関しても過去の読切と印象が異なりますが、意識されていることはありますか?
タイザン5:読切の頃は今よりデフォルメして、アニメっぽく線の少ない絵にしようとしていました。『タコピーの原罪』ではちゃんと表情を描こうとして、頬の線などをしっかり入れて情報量を増やしたところ、最終的に今の絵になりました。意図的に絵柄を変えたというわけではありませんでした。
F田:連載が始まる時に「絵を頑張るぞ!」と話し合いましたよね。しずかちゃんが可愛く見えてほしいなと思っていました。
タイザン5:あとはアニメの表現も参考にしていると思います。アニメでキャラクターの泣き顔とか、たまにすごく崩した描き方があるのが好きで、模写したりもしています。
――『タコピーの原罪』はページや話ごとの情報量は多いのに、コマ数はかなり少ない印象がありますね。
タイザン5:連載を始める時、とにかくコマを減らすことを考えました。そしてコマが少なくても、プロットで決めたものは絵を工夫して入れるようにしました。スマホだとコマ数が多いと読みにくいかなと思ったためです。同じ理由でフキダシもできるだけ大きくするようにしています。
――タイザン5先生は、読まれる際は紙とスマホのどちらを意識していますか?
タイザン5:連載は完全にスマホを想定しています。見開きもどうしても使いたい時は描きますが、重要な場面は1ページで表情を大きく描いて、スワイプした時にインパクトが出ればと考えています。
◆作家としての興味や方向性
――タイザン5先生にとって「作品作りで、常に変わらず芯になっているもの」があればお聞かせ下さい。
タイザン5:今のところは、ものすごい悪役を出していないことでしょうか?「巨悪を倒してハッピーエンド!」みたいなスカッとした結末が、自分だと面白く描けなかったからかもしれないです。タコピーでは特に、みんなちょっとずつ悪いところがある、という描き方を意識しています。
――ご自身のルーツや、目指している作家さん・作品はありますか?
タイザン5:浅野いにお先生が大好きです。自分の初期の読切から、特にコマ割りや背景はとても影響されていると思います。一番好きな作品は『おやすみプンプン』です。
――普段からインプットとして張っているアンテナ、心掛けている習慣はありますか?
タイザン5:映画、アニメ、小説、ゲームはいろいろ見ていて、映画は有名どころや最近の受賞作品を、アニメも面白いと評判のものは観るように心掛けています。最近…ではありませんが、アニメだと『宇宙よりも遠い場所』が好きで、ゲームだと『UNDERTALE』が面白かったです。小説は重松清先生や伊坂幸太郎先生の作品をよく読んでいます。芥川賞を獲られた町屋良平先生の『1R1分34秒』も面白かったです。
――物語のまとめ方や絵の練習方法など、作品作りのための技術はどのように身に付けてきましたか?
タイザン5:漫画は自分の好きな作品をたくさん読んで、何となく描いてきました。好きな作品の好きな巻だけをずっと読むので、それで染みついたのかも知れません。絵はネットでお勧めされているデッサンの本を見たりと、自分で練習方法を調べています。好きな漫画を模写したりとかもしました。
――今、興味がある題材はありますか?
タイザン5:宇宙とか野球とかプロレスとか西部劇とか…若干渋めの題材かもしれないです。ただバトルシーンが苦手なので、実際に自分が描くことは難しいと思っています。
◆あらゆる作風を受け止める「ルーキー!」&「ジャンプ+」
――「ジャンプルーキー!」に投稿した理由と、投稿して「良いな」と感じたところがあればお聞かせ下さい。
タイザン5:投稿したのは…有名な投稿サイトだったので何となく、です(笑)。ルーキー!内で受賞すると、すぐに「少年ジャンプ+」で読切が描けることがありがたかったです。他の投稿サイトだと、投稿すると担当編集さんが付いても、即座に読切まで繋がらないことが多い気がします。ルーキー!は工程を1つ飛ばせるところがいいと思いました。自分に合った担当さんとマッチングして頂けますし。新人の頃からすごく相談に乗って頂いています。
――「少年ジャンプ+」を活躍の場として選んだ理由と、連載しての感想があればお聞かせ下さい。
タイザン5:ルーキー!で受賞したからというのもありますが、多様な題材の読切が掲載されているので、雑誌のカラーに縛られず色々な作品が描けると思ったからです。最初にルーキー!に投稿したものはサブカル的なものでしたが、その路線でも「ジャンプ+」だったらいけるかも、と思っていました。
F田:初対面の頃、タイザン5先生は「ジャンプっぽくない漫画でもいいのでしょうか」と気にされていましたよね。
タイザン5:はい。実際に連載してみると「ジャンプ+」はすごくたくさんの読者の方が読んで下さり、嬉しいです。しかも(連載中の作品はアプリ版で)初回全話無料なので、いつでも新しい読者が入ってくれるのもいいと思います。
――『タコピーの原罪』はいよいよ佳境です。読者にメッセージと、タイザン5先生の今後の目標をお聞かせ下さい。
タイザン5:ここまで連載を読んで下さりありがとうございます。少しでも楽しんで頂けたら幸いです。よろしければぜひ、最後までお付き合い下さい。そして発売中のコミックスも手に取って頂けるとありがたいです。
今後の目標は、もう少し長く続けられる話を考えたいです。『タコピーの原罪』は元々が短いイメージだったので、長期連載できる作品に挑戦したいと思っています。これから頑張って考えます!
――ありがとうございました。
<タイザン5先生の作品はコチラ>
・『タコピーの原罪』第1話
・ 読切『キスしたい男』
・ 読切『ヒーローコンプレックス』
・『ジャンプルーキー!』タイザン5先生の投稿作品
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