【第64回】読者に刺さるストーリーを作るために~

皆さまこんにちは。ジャンプ+編集部の緑川です。
今回は、私が元ライター時代に学んだことやこれまでの編集経験から、物語の作り方についてまとめてみました。私の独断と偏見もあるかもしれませんが、一つの考え方として、作品作りで迷った時などに参考にしていただけたら幸いです。

◆物語の作り方

① 作品の『売り』を意識する
その作品の売り・コンセプトを意識した作品にしましょう。逆にこれがないと、いったい何の話なのかわかりません。また、複数のコンセプトを入れるのもまずい。一言二言で説明できる作品はわかりやすく、それが作品のイメージにも繋がります。

② 起承転結


導入部分であり、最も重要な部分。ここでキャラクターと世界観、どんなストーリーになるのか、読者にある程度理解させる必要があります。そのため説明ばかりになってしまうことがありますが、説明するのではなく読者に『予測』させればいい。

剣士が主人公なら、剣をにぎっているだけでも剣士と『予測』でき、わざわざ剣士と名乗る必要もありません。ナルトなら、忍者の学校を舞台にすることで世界観と忍者の学生であることをすでに説明できています。さらにナルトは冒頭で「火影になる」と宣言しており、3代目火影とのやり取りで目標がどういったものなのかも『予測』できます。

さらにここで重要なのは作品の『面白さ』であり、面白そうな設定やストーリー、面白そうなキャラであると読者に『予測』させる必要があります。そこは、物語の売り・コンセプトにも繋がります。


導入部分ができたら、転に行くまでの準備をします。ここで気を抜くと、途中で読者に飽きられてしまいます。飽きられないように、なおかつ面白く物語を構築するには、転に行くまでの間、読者の『期待』を煽り続ければいい。

ラブコメなら、主人公とヒロインがくっつきそうでなかなかくっつかない。バトルファンタジーなら、敵を倒せそうなのになかなか倒れない。(のちに転の第2形態となったりする)。
『転』で盛り上げるためにも『承』は重要な部分です。ジェットコースターなら登っていくところなので、しっかり登り切った上で『転』に入りましょう。


承で読者の『期待』を十分に煽ったら、ここでその『期待』にいい意味で『裏切る』必要があります。ここで単純に期待に応えるだけでは転ではなく、結になってしまいます。
例えば承でも書いたバトル漫画のように期待通りに敵に勝つのではなく、敵がさらに強くなることで読者の『期待』をより面白く『裏切る』ことができます。すると読者は、この苦境をどう乗り越えるのか『期待』します。

ラブコメなら、主人公のことを好きになったヒロインと何らかのトラブルで喧嘩になったり。ただし完全に嫌いになるのではなく、きっとヒロインはまだ主人公のことが好きなはずだと、そういった心理を匂わすシーンを入れることで読者の『期待』をより強くすることができるし、仮にそういったシーンがなくても読者がヒロインを気に入っていれば、勝手に『期待』してくれたりします。


承で『期待』を煽り、転で『裏切り』を入れたことによって読者が最終的に『期待』するものをここで投入しましょう。ここでは基本的に読者を裏切ってはいけません。裏切った場合はバッドエンドとなる場合が多いです。読者の殆どはハッピーエンドが好きなので、ここは素直に読者の『期待』に応えてあげましょう。

もしくは読者の『期待』を超えるようなハッピーエンドを入れられたら、さらに良い作品になるでしょう。

起承転結はあくまで基本であり、特に短編や読切を書く場合はこの形式を意識して描くとまとまりやすいです。ただし長い作品の場合は、起のあと『承と転を繰り返す』ことで読者を飽きさせず結に持っていくことができます。例えばドラゴンボールのセル編だと、セルの第二形態、最終形態みたいに転を二回使っています。

◆面白いって何?

① 読者の欲求を刺激する

作者自身が面白いものを描くことも必要ですが、読者も面白いと感じなければ意味がありません。では具体的にどんなものが読者にとって面白いと思えるのか、それは読者の『欲求』を刺激する作品です。

② 欲求とは?

人間には食欲、睡眠欲、性欲といった三大欲求がよく知られていますが、三大欲求の他にも安全欲求、承認欲求などがあります。以下、心理学者マズローの欲求5段階説です。

1)生理的欲求=睡眠、食事、排せつ、性欲など。生理的な欲求。
2)安全欲求=身の安全、健康、財産、雇用の安定など。安全安心であること。
3)社会的欲求=友情、愛情、家族など。他者と関わり、集団に属したい。
4)承認欲求=自尊心、自信、達成など。他者から価値のある存在と認められたい。
5)自己実現欲求=自分の能力を引き出し、創造的活動がしたい。最高の自分になりたい。

その他、ヒルガードの心理学では承認欲求の後に『認知の欲求(知ること、理解すること、探求すること)審美的欲求(調和、秩序、美の追求)』があります。

これらの欲求、例えば安全欲求はホラーやデスゲームなどでその欲を満たしやすいです。漫画の中であえて危険な状況にすることで、読者は安全欲求を求め、それを達成することで読者は欲求を満たすことができます。

社会的欲求は、例えば孤独な主人公に手を差し伸べるヒロインがいれば主人公は集団に属することができ、主人公に共感した読者は社会的欲求を満たすことができます。ヒロインとの関係がうまくいけば自尊心や自信につながり、承認欲求も満たすことができるし、内容によっては性欲を刺激することもできます。

自己実現欲求でいえば、読者が主人公に共感し、その主人公が目標を叶え、なりたい自分になることでその欲求を満たすことができます。

推理ものなどは、事件の謎を置くことでキャラクターは謎を解決しようと動きますが、犯人が殺人鬼であれば安全欲求を刺激できるし、なおかつ知的欲求(※ヒルガードの心理学)を刺激できます。

以上になります。
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皆さまの、次世代を作るような面白い作品を心よりお待ちしております。

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