【第117回】出張編集部のススメ&出張編集部から1年以内でデビュー!『サチ録~サチの黙示録~』茶んた先生特別インタビュー

いつもジャンプルーキー!へのご投稿ありがとうございます!
このブログを読んでくださっている方の中には、「プロの漫画家になりたい!」「ジャンプ+で連載したい!」と思っている方も多くいらっしゃると思います。
そんな皆様に今回は、「出張編集部」をご紹介したいと思います!

まず出張編集部とは、というところから参加手順やメリットなどを説明しつつ、最後には、ジャンプ+出張編集部への持ち込みから1年以内で連載を開始した、現在ジャンプ+で『サチ録~サチの黙示録~』を連載中茶んた先生からのインタビューを特別に掲載しています! ぜひ最後まで読んでいってください。


そもそも出張編集部ってなに?

漫画・アニメ関連のイベントにさまざまな編集部がブースを出し、そこで作家さんからの作品の持ち込みを直接受け付け・講評をすることを「出張編集部」と言います。大規模なイベントになると数十もの編集部がブースを出展することも!
基本手順は以下の通りです。(イベントによって手順はさまざまなので、わからない場合は各会場のガイドラインに従いましょう。)

1. 行きたい編集部を決める
2. 持ち込み用エントリーシートを記入し、該当編集部へ向かう。
3. 順番を待って、自分の作品を編集者に見せるだけ!

また出張編集部の大きなメリットとしては、以下二つが挙げられます。

➀ 出版社に行かずに、予約なしで直接持ち込みができる!

持ち込みというと、各編集部に予約の電話をして、日取りを決め、出版社に直接行って…という流れが基本です。しかし、お住まいの事情などで出版社へ行くのが難しかったり、予約が面倒だと感じたりする方も多くいるはず。
しかし出張編集部なら、東京以外の各都市で開催されることも多く、また予約も不要で当日参加大歓迎。日にちと場所さえ合えば、普通の持ち込みより断然手軽に編集者からの講評を受けることができます!

② 色々な編集部・編集者からのフィードバックがもらえる!

イベントにもよりますが、少年誌・少女誌・青年誌などバリエーション豊かな漫画編集部が一堂に会するのは、出張編集部ならでは。1日で複数の編集部・編集者に持ち込みができちゃいます。作品を客観的に見直すためにも、さまざまな意見をもらうことは有用です。(ただ全てを修正に反映することは難しいので、必要な意見の見極めには注意が必要。)
また自分の作風に合う編集部・編集者を探すためにも出張編集部はいい機会です。そこで担当編集がつくこともあるので、勇気を持ってどんどん色々な編集部に持ち込んでみましょう!

いかがでしょうか。志を共有する作家さんがたくさんいる環境に行けることも、大きなモチベーションアップに繋がるはず! ぜひ都合の合いそうな出張編集部を探して、参加してみてください。


ジャンプ+の出張編集部

ジャンプ+編集部は、年間を通してさまざまなイベントに出張編集部を出展しています。都度、ジャンプ+公式Xアカウントにて告知しておりますので、ぜひフォローしてチェックしてみてください!
最近のイベントでは、お持ち込みいただいた皆様に、「ジャンプ+特製漫画テクニカルブック」をプレゼントしております! ジャンプ+で活躍中の作家さんによるアドバイスをまとめた、プロを目指す方にぜひ読んでほしい一冊となっております。(数には限りがございます。お渡しできない可能性もありますのでご了承ください。)

ここで、ジャンプ+がほとんど毎回出展している参加率の高いイベントを3つご紹介いたします。

➀ 東京コミティア
主に東京ビッグサイトで開催される、自主制作漫画誌展示即売会です。年4回(春夏秋冬)ペースで開催されます。国内最大級の大型イベントのため、より多くの編集部に持ち込みたいと考えている方におすすめです。次回は8/18(日)に開催されるCOMITIA149です!

② 関西コミティア
京都または大阪で開催される自主制作漫画誌展示即売会です。関西にはデザイン系の大学も多いこともあり、いつも大盛況。次回は10/20(日)に開催されるコミティア71です!

③ 京都国際マンガ・アニメフェア2024
通称「京まふ」と呼ばれるこちらのイベント。西日本最大級のマンガ・アニメ・ゲームの祭典で、出張編集部以外にも見所多数です。今年は9月21日(土)・9月22日(日)に開催予定!(出張編集部出展日未定)

また最近では、福岡県で開催された九州コミティア8に参加するなど、全国各地の作家さんと出会う機会を増やすべく日々活動しております。ジャンプ+は、漫画家デビューを目指す皆様の作品を常に大歓迎でお待ちしています。新規作品・過去作品・同人誌・読切形式、連載形式なんでもOKです。いつでも気軽にお持ち込みください!

最後に、実際にジャンプ+の出張編集部ブースにお持ち込みいただき、そこから連載へとステップアップしていった経験のある、サチ録~サチの黙示録~茶んた先生へのインタビューを公開します!

少年ジャンプ+で読む

*****

――茶んた先生は、2022年9月のコミティアにてジャンプ+の出張編集部にお持ち込みいただき、翌年7月に『サチ録~サチの黙示録~』の連載を開始しました。改めて、連載までの詳しい経緯をお聞かせください。

月刊少年チャンピオンさんで連載していた『死亡フラグに気をつけろ!』が終わって、まだ漫画業界のこともよく知らないし、何か別の所で今までに描いたことのないジャンルを描きたいなーと思っていて、コミティアへオリジナルの同人漫画誌を描いて出張編集部にふらふら行きました。そこで今の担当編集さんと出会い、数ヶ月後に読切小学生歯みがき習慣ポスターコンクールを掲載しました。そのまた数ヶ月後に『サチ録~サチの黙示録~』の連載が決定と、テンポよく話が進んでいったかたちです。

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――その際は、どんな作品をどの編集部に持ち込んだのでしょうか。またその際の各編集部の反応はどうでしたか。

聖徳太子を題材にした歴史漫画と、鼻血を出す超能力を持った男の子の漫画と前作の『死亡フラグに気をつけろ!』の単行本を抱えて色々な編集部を回りました。同じ原稿でも編集部が違うと、こっちでは厳しい意見をいただきあっちではなんか褒められて…と全然違う反応が貰えて面白かったです。特にギャグとかは人によって良し悪し激しいだろうから、マッチングによるのかなあと思います。ジャンプ+に持ち込んだ理由は聞いたことある編集部から順番に回っていっただけです。その時は4つくらい回ったと思います。

――その後の掲載誌をジャンプ+に決めた理由はなんでしょうか。

褒められたからです。褒められるとそいつに尽くしてやろうという気分になるので、人を褒める行為は大変有効です。

――茶んたさんが感じている、出張編集部の一番大きなメリットはなんでしょうか。

一日でたくさんの編集部を回れる事です。会場には色んな出版社や編集部のブースがあったので、気軽に自分の漫画の色に合った編集者・編集部とのマッチングを見つけられるのは大きいなと感じました。直接出版社に単騎で乗り込むのとは緊張感も違うだろうし、カジュアルな感じで持込みが出来るのはありがたかったです。

――出張編集部への持ち込みを考えている作家さんへ、一言メッセージをお願いいたします。

良し悪し色々言われると思います。ですが漫画の好みは人それぞれですし、それは作家自身にもプロの編集さんにも言える事だと思っているので、褒められたら思い切り喜んで叩かれたらほどほどに受け止めて次の編集部に行くくらいの気分で挑むのが良いかなと思います。悔しくても悩んでもポジティブに筆を動かす原動力にしちゃいましょう。自分の漫画への自負を信じろ。

――ありがとうございました。最後に、ご自身の連載作品に関して何か読者にメッセージがあればお願いします。

今後も『サチ録~サチの黙示録~』を褒めてくれると嬉しいです。

*****

いかがでしたでしょうか。本記事が、出張編集部への持ち込みを考える皆様の参考に少しでもなれば幸いです。
ジャンプ+編集部は、いつでも皆様の作品をお待ちしております!



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【第116回】先が気になる展開を生み出す秘訣とは?『enigme【エニグマ】』『ラブデスター』『深東京』の榊健滋先生にインタビュー!

日頃から「ジャンプルーキー!」へ投稿いただきありがとうございます。

今回は、現在少年ジャンプ+で深東京を連載中、過去にはenigme【エニグマ】』『ラブデスターを連載していた榊健滋先生にインタビューします!

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週刊少年ジャンプでも連載経験のある榊先生に、読者を引き付ける展開やテンポ感の作り方を聞きました!

*****

――『enigme【エニグマ】』『ラブデスター』など、読者の興味を誘うコンセプトの作品を手掛けていると思いますが、どのようなことを意識して企画を立てていますか。

スリルを大事にしているので、最初に絶望的状況から始まるようにしています。

『enigme【エニグマ】』第1話
『enigme【エニグマ】』では、学校に閉じ込められ、一定時間以内に抜け出さなければならない状況から始まる。

『ラブデスター』第1話
『ラブデスター』第1話では、「告白」を強要し、失敗すれば死ぬ、という絶望的な状況が提示される。


――『深東京』では、テンポよく物語が進んでいくと思いますが、テンポ感を出すためのポイントはありますか。

畳みかけるように絶望を与えていき、キャラクターに目の前の状況を打破することに集中させています。説明は後回しにしています。

『深東京』では、見知らぬ世界「深東京」へ連れていかれ、

橋が壊れていて移動できず、

敵の「べんけい」に襲われる。深東京やべんけいの具体的な説明はせず、主人公たちに次から次へと絶望を与えることで、テンポ感を生み出している。


――長く連載を続けるうえで、新しく、物語に関するアイデアを出していく必要があるかと思いますが、どのようなことを意識していますか。

一つは友人と好きなものについて語りまくる事です。
自分が興味を持っているものがあぶり出されてきます。
もう一つは漫画以外の作品にたくさん触れることです。
海外ドラマや小説など話題のものがおすすめです。


――WJ時代を含め、これまで週刊連載を主として来たと思いますが、連載中の日々の作業時間や過ごし方などを教えてください。

〈作業時間〉
 ・ネーム2日
 ・一日の作業枚数は5-7枚
  空いた時間に他の細々した仕事をする
〈過ごし方〉
 ・徹夜はしない(睡眠時間6~8時間は取る)
 ・雨の日以外はランニングをする
 ・朝晩の食事は作る
 ・家族との時間を作る


――漫画家を目指す新人作家にアドバイスをお願いします。

〆切ギリギリで進めると精神的に追い詰められ、かなりきつい事になります。
自分に最適なペースを知っておくことをお勧めします!

*****

榊先生、ありがとうございました!
先が気になる展開を生み出すには、展開が動きやすいような状況を作り、説明をしすぎないことが重要だと分かりました。



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【第115回】「少年ジャンプ+漫画賞 2023年冬期」橋本悠先生講評全文を特別公開


本日、「少年ジャンプ+漫画賞 2023年冬期」の選考結果が発表されました。

特別審査員の『2.5次元の誘惑』橋本悠先生から、最終候補に残った作品に対して詳細な講評をいただきました!
選考結果発表ページには収まりきらなかった全文を、こちらで公開いたします。
受賞者以外の新人作家の皆さんにも参考になる内容になっておりますので、是非ご覧ください!


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佳作
『怪猫』永田暗治

【橋本悠先生講評】
72pの力作ありがとうございました。とても読み応えがある漫画でした。
暗い漫画かな、と不安になりながら読み進めましたが、ラストは素直に「よかった~」と思えて、よい読書体験でした。そういう意味できちんと漫画として完成しています。
「話のこのへんでこういうシーンを挟むとグッときそう」のような直観がすでに身についているのか、ページやコマは多いものの、意味のないシーンがあまりなく、気持ちよく読み進めることができました。
これだけのページ数を母娘の宿命という一つのテーマで(魔女と猫もここでは母娘でしょう)まとめきっていて、これは誰にでもできることではありません。
まずは誇りましょう。素晴らしいことです。最高!

そこでさらに、この作品がもっと良くできそうだな、と個人的に思ったところを2点、書かせていただきたいと思います。
長くなりますので気が向いたら読んでみてください。

①「リアリティ」について
全体的に細かいところでリアリティ不足が気になりました。
「漫画なので細かいリアリティは無視して都合のいいように描く」という考えもあり、これ自体は否定しません。ある程度ポップな漫画なら無視してもいいでしょう。ただリアリティの精度は作風や、読み手の「読み方」を左右します。
例えば「未成年が借金で苦しい思いをする」という話を読むのは読者にとって辛いことです。もちろん私も辛かったです。
人間は、辛いことに直面してそれを正面から受け止めきれない時、「発想の転換」でそのダメージから逃れようとします。
「ていうか子供が借金で苦しむとか現代日本ではありえないんですけど?怒」などと、「暗い話を読んで辛い気持ち」を「本来関係ない箇所への怒り」などに変換して逃げようとします。
これが読者の心の中で(無意識でも)起きる反応です。ひたたび読者をこの状態にしてしまうと、お話にどっぷり浸ってもらうことは難しくなります。「リアリティを高める」というのは「読者の逃げ道を塞ぐ」技術なのです。

終盤のカタルシスのために序盤中盤には必ず読者にストレスをかけることになります。
ここを諦めずに読んでもらうためには、読者をストレスから「逃がさない」ために丁寧に納得させなければいけません。そこで必要なのが「リアリティ」です。

なぜ現代社会で、未成年の主人公が親の借金に苦しんでいるのか?
50pに唯一「悪い大人の言われるがままハンコを押す」という描写があって設定が破綻しているわけではないのですが、この出来事の前におばあちゃんに引き取られて何年か過ごしているはずなので、その時に祖母(ないし法定代理人)は相続放棄の手続きをしてあげなかったのか、とかシングルマザーの借金が3000万に膨れているということは闇金でしょうから、警察、弁護士等に相談できなかったのか?など疑問は尽きず、「おばあちゃんが孫を守ってくれなかった」という不本意な描写にも繋がりかねません。

細かいことを突っ込んでいるように見えるとは思うのですが、これはむしろチャンスなのです。
「こんな設定ありえない!」と言っているのではなく「理由を描こう!」という意味です。
例えば「相続放棄や自己破産という手段も知らされていたけど、逃げずにちゃんと借金を返そうとしていた(それがクズの母と自分は違う、という証明になるから)」「祖母には母の借金の事実を隠し通したor死ぬ気で祖母を説得した」などの描写をもっと丁寧に重ねてリアリティを突き詰めていけば、母親に似た自分を嫌悪しながらも、「母親と私は違う!」と自分に証明するように生きる、この子の宿命に抗おうとする人間らしさを描くことができ、逆にさらに読者の感情移入が強めることができるかもしれません。(50pの描写にその片鱗が見えるのですが、個人的な感覚では、ちょっと遅いか、足りないです。)

長く連載をしていると、「どうしても描きたい話とリアリティに辻褄を合わせなければいけない」という状況に追い込まれます。そういう時、むしろそのギャップの大きさを頑張って埋めたときにかえってキャラが立つ、というのはままあることです。
「現実でありえない設定」は、リアリティを突き詰めて初めて、「現実にはいないくらい強いキャラ」になれるのです。

作者の方がもしとてもお若いのであればあまり意味のある指摘にならなかったかもしれないのですが、その場合「自分にはまだまだ知らないことがある」ということを自覚して、常に自分の話に対して「こんなこと現実で起きるか?」と調べるクセをつけてみるなど、「人生経験をリサーチでカバーする」という技術としても覚えていただきたいなと思います。

②「お約束」について
お話を描いたり読んだりするうえでは、守らなければならない「お約束」がいくつかあります。
その中の一つが、「都合のいいことが起きたら代償を払わなければならない」というものです。
これがなぜか、というのは、とても長くなるのでここでは理由は割愛します。
「それがフィクションにおけるリアリティだから」「読者は基本的に公平世界仮説を信じているから」とか端的な説明は存在するのですが、他人の解釈はどうでもよくて。それはこの先、作家として生きていく中で、沢山漫画を読んだり映画を見て、自分なりの理由を見つけてほしいなと思います。
ここではとりあえず、「そのお約束を守らないと読者が安心してドキドキしたりハラハラしたりできない」ものだと覚えておいてください。

この作品では序盤、これだけデカい猫がアパートの一室にいて変な声出してるけどバレてない、というギリギリのリアリティラインを「部屋から出なければバレない」と設定することで保っています。
読者も「わかった、そんぐらいのリアリティのバランスでいくのね。OK」と、ここで作者と読者の契約が成立します。
読者は、作者の匙加減であるリアリティを、この約束によってとりあえず納得してくれているわけです。その約束を、作者は最後まで守らなければなりません。
つまりどういうことか。
「猫が部屋から出たら、みんなにバレなければならない」んです。
「猫がリスクをとって部屋から出た」のに「別にバレなかったし殺されなかった」というオチを何の説明もなくやってはいけないんですね。
ということは、もちろんちゃんと説明があればやってもいいんです。「なんか別にバレなかったわ!」という都合のいいことが起きたなら、そのかわり悪いことでバランスをとる、という感覚です。
さすがにいくら風化したとはいえあれだけの懸賞金が残っている以上(いまだにツチノコを探している人も現実にいますし)あのサイズで今後もバレない、は無理でしょうから、例えばですが、
けだまが主人公を助けてくれたあのときに(読者との約束を守って)周りの住民にバレて追われて心配するんだけど、けだまはそのとき魔力を使い果たしてしまっていて、普通の猫サイズになって主人公のもとに帰ってくる。だからバレない。(都合のいいこと)
でももう二度と悪い人から守ってはくれなさそうだな。(ここが代償)
次は私が強くなって守らなきゃいけないんだ。
くらいのバランスでもいいかもしれません。これはあくまで一例で、このバランスのとり方というのは作家性が出るチャンスなので、ぜひ自分なりのリアリティを追求していって下さい。

私もご都合主義の漫画は大好きで、いいことばかり描きたいです。だから都合のいいことばかり起きるのは大歓迎です。
そこで私たちがやるべきは、それを「ご都合主義じゃん」と一蹴されないようにリアリティのバランスを頑張ってとっていくことです。描きたい話を面白く描くために、ぜひこの技術を覚えていってください。
とても長くなってしまいましたが以上になります。次の漫画も楽しみにしていますので、どんどん大作を描いてください!


橋本先生特別賞
『正反対のナルキソス』金野利幸

【橋本悠先生講評】
非常に完成度の高い作品でした。絵も上手いし、コマ割りも工夫されているのにとても読みやすく、技術的には言う事ありません。
特筆すべきはストーリーテリングで、美しさを保つために人を食べる美女、芸術家、モデル、真の美醜というテーマ。これだけ使い古されたモチーフの組み合わせにも関わらず、丁寧な描写の積み重ねによって、この作者にしか描けない漫画が生まれています。

登場キャラクター二人は特殊な設定にも関わらず、生い立ちや、感情の推移に全く無理がなく、大きく変化していくヒロインの気持ちがすっと入ってきます。
ストーリーのラストでたどり着く一言は、このテーマへの解答として本来とても陳腐な答えのはずなのですが、二人の紡いだ「非常に個人的な体験」を経たことによって、ヒロインの「超個人的なセリフ」に昇華しています。

本当に何か強いて言う事があるとするならば、「全体的にテクニカルすぎる」という点くらいです。
本当にこの作者が心から描きたかった話なのか?というのは感じました。「この漫画を読んで評価してくれ」と言われてちゃんと読んだら満点なのですが、「めちゃくちゃ面白いか?」や「買って読むか?」とかになるとまた別の評価軸が加わるのがプロの世界です。(ただその点を差し引いてもなお、『本当にいいストーリーだった。読んで良かった』というのが今回の評価です。)

技術的にはすでにプロフェッショナルなので、プロ漫画家を目指すのであれば、「誰の目にも魅力的なキャラやストーリー」を生み出したり、「自分にしかない表現のクセ」を獲得していったりしてほしいと思います。


編集部特別賞
『Bow!』夜久美良

【橋本悠先生講評】
絵と世界観はダントツで良かったです。いますぐこの絵と空気感で食べていける。そういうレベルです。
会話だけで物語が済んでしまうプロットはやや物足りなかったですが、表情やセリフの魅力がそれを補って、「空気感の魅力だけでファンを作れる作家」を目指せるポテンシャルを感じました。

一番気になったのはキャラ設定のリアリティでした。
ヒロインはこの家庭環境でいつ宝塚を目指すきっかけに触れたのか?
いつどこで知ったのか?実際に観たことはあるのか?
宝塚というキラキラした言葉だけが独り歩きして、このヒロインがどれだけ宝塚に憧れているか、いかにその舞台に立ちたいか、そういう本気度が今一つ伝わってこなかったのが惜しかった点です。
仮にモデルがいるとか、この世にこういう人が実在するとしても、読者に「本当?」と思われてしまうともったいないので、「宝塚に行きたい女子高生」のリアリティの補強か、もしくはヒロインの「本気度」がわかる描写が欲しかったです。それは次にどんな漫画を描くことになっても、キャラクターへ感情移入させるために必ず必要になる描写なので、ぜひ身に着けてほしいなと思います。


最終候補
『ゲームと小さな三銃士』高梨悠人

【橋本悠先生講評】
大風呂敷を広げず、身近な題材で一つ話をまとめようとした点は良かったと思います。
少しずつ変化していく主人公の感情はとてもわかりやすく丁寧に描かれており、誤魔化さずに正面から漫画を描こうという気概に100点をあげたいです。

惜しかったのはやはり、「誰でも想像できる感情」の範囲に収まってしまったかな、という点です。
某ゲームを一切やったことがない人でも描けそうなセリフがほとんどだったので、もしこの世であなたにしかない、非常に個人的な「昔の3人組でのゲーム体験と再会」があるなら、「あなたにしか書けないゲームを通じた友情」のストーリー、またはセリフ一つでもいいので、それを見たかったな、と思います。

最終候補
『どこでもキューブ』武藤凌平

【橋本悠先生講評】
面白い漫画を描いてやろう!読者を楽しませてやろう!というプロ意識を一番感じた作品でした。
ただ設定が奇抜な分、描くのが難しい漫画になったと思います。
キャラクターの行動規範に一貫性が乏しく、説明不足や描写不足も目立ちました。
「転送の際に着地点の人が犠牲になる」という設定は今回の話でめちゃくちゃ大事な要素なのですが、説明も主人公のリアクションも、読み飛ばしそうになるくらいアッサリしていて危なかったので、ポイントポイントでしっかり強い演出を心がけるとさらに読みやすくなると思います。

「仕掛け」を意欲的にたくさん配置している作品だったので、ワープ装置がルービックキューブである意味も、
最後に伏線として回収されるかな?と期待していましたが、そこももう一工夫あるとさらによかったです。
しかし「仕掛け」で盛り上げようというエンタメ意識は今回ほかの作品に不足していたものだったのでとても楽しめました。そのプロ意識はどんどん伸ばしていってほしいと思います。

最終候補
『寝相が悪い男』阪中博紀

【橋本悠先生講評】
非常に完成度の高いギャグ漫画でした。(いい意味で)普通に爆笑しながら読んでしまいました。
絵も可愛くて読みやすかったですし、絵柄と作風もマッチしていて、非常に完成度が高いと思います。
ギャグの面白さについて特に言えることはないのですが、(私はギャグ漫画家ではないので)フリの効いた天丼もしっかり決めて、ミッドポイントでライバルとなるヒロインの登場、ラブホテルでの長尺アクションと、飽きることなく楽しませる姿勢は紛れもなくプロです。

ただ強いて何か言うとすればちょっと長かったです。
現代漫画の感覚なら16pくらいでできそうな内容だったので、冗長なコマを詰めて密度を上げるか、34p描くならもう少し展開があっても良かったかもしれません。

*****

橋本先生、ありがとうございました!
読者の皆さんもこの講評を参考に、引き続き創作に励んでいただければ幸いです!

▼編集部の講評や総評などはこちらでチェック!▼


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【第114回】少年ジャンプ+副編集長・中路が選ぶ、創作に役立つジャンプ+傑作読切3選

少年ジャンプ+副編集長の中路です。

新しい才能を発掘し、これまでに無かった作品を世に出すことが媒体としての使命と考え、ジャンプ+は創刊以来沢山の読切を掲載してきました。

他の人が描いたアイデアの集積である読切は、これから連載や読切掲載を目指す志望者の方にとって、これ以上ない良い教材です。

とはいえ、ジャンプ+で読める読切はあまりに量が多く、何を読んだらいいのか選ぶのに迷ってしまいそうです。

シンプルにランキングの上から順番に読んでいくのでも良いですし、サムネイルやタイトルで気になった作品を読んでみるのも良いと思います。
※その場合、サムネイルやタイトルにすでに読者が興味を持つためのアイデアが入っているので、なぜ気になったのか考えてみるのも良い思考の訓練になります。

今回のブログでは、多くの選択肢の中から選ぶ際の1つのヒントとして、沢山の方に読まれた名作読切の要素を分解し、その切り口から見たおすすめ作品を3つ紹介していきます。

私自身、これまで編集者として漫画家さんと一緒にたくさんの読切を世に出し、またジャンプ+に入ってからは副編集長として掲載可否の判断のため、スタッフから回ってきた読切を読んでは読者の反応をずっと見てきました。
そうした経験を重ねていくうちに、多くの方に読まれる読切にはいくつかの要素があることがわかってきました。

A・読みやすい
B・感情を揺さぶられる
C・作者の嗜好が強く反映されている
D・驚かせる仕掛けがある
E・共感性が高い
F・キャラクターが良い
G・印象的なセリフがある
H・印象的な演出がある
I・導入の数ページで印象に残る場面がある
J・ポジティブな印象を残す
K・見せたいアイデアの焦点が絞られている
L・興味を惹く舞台設定

などが挙げられます。

話題になる読切は、上記の要素のどれかを強く持っているか、複数持ち合わせています。
では実際にどのような作品があるのか、具体的におすすめの読切を紹介していきます。

*****

『骸区』鈴木祐斗先生
少年ジャンプ+で読む

現在、週刊少年ジャンプで『SAKAMOTO DAYS』を描かれている、鈴木先生のアクション読切です。
治安の悪い環境、視点役の切羽詰まった状況、そんな中ガラの悪いチンピラに絡まれる老人が見せる意外な行動…と、導入から一気に作中世界に引き込まれます。
また、ラスト付近のどんでん返しの仕掛けも、作品を強烈に印象づけています。
前述の ADHIK といった要素が強いですね。
他にも限りなく余計な要素を省いて、31Pという短いページ数にまとめている、抑制的な構成能力の高さも素晴らしいです。
同じ鈴木先生の『ロッカールーム』も、驚かせる仕掛けのある素晴らしい読切なので、未読の方はぜひどちらも読んでみてください。


『ヒトナー』屋宜知宏先生
少年ジャンプ+で読む

最近、大きな話題になったので、読んだ方も多いと思います。
獣人の世界に宇宙の遥か彼方から人間がやってきて、獣人たちが人間を知るうちに、次第に獣人世界に不穏な空気が広がっていきます。
ここからどうなるんだろうと思わせてくれる舞台設定、理性を保とうとしても猫としての本能に抗えない愛くるしいキャラクターに、強く心を惹かれます。
前述の要素としては、 ACFJKL でしょうか。
また、高い人間の能力を読者は最初から知っているけれども、作中のキャラクターたちは気づいていないという状況設定も、そこから美味しい展開が作りやすい優れた設定です。
同様の状況設定は多くの作品で取り入れられています。


『静と弁慶』三木有先生
少年ジャンプ+で読む

薙刀という題材で、青春期の男女の別離と成長を描いた作品です。
淡々と進む展開の中で、これまで普通にあった二人の関係が決定的な別れを迎えるまでを描いています。
徐々に高まっていく感情と決定的な別れの場面、そしてそれを一筋細い糸で繋ぎ止めるために見せた勇気。
練り上げられたセリフの一つ一つが対応する場面と相まって、大きく感情を揺さぶる効果を発揮しています。
成長を描いたラストシーンの効果で、ポジティブな読後感も増しています。
主な要素は、 ABEGHJ といったところかと思います。
ジャンプ系だからといって派手な題材である必要はなく、描き方次第で多くの読者を獲得できることを示した作品だと思います。

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以上になります。
参考までに他のおすすめ読切も挙げておきます。
ほとんどが無料で読めるので、ぜひご一読ください。


 
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【第113回】『ふつうの軽音部』が生まれるまで【クワハリ先生インタビュー】

少年ジャンプ+で今年1月から連載が始まり、最新話更新時にはXでトレンド入りするなど、話題沸騰中の『ふつうの軽音部』。
本日4月4日にコミックス1巻が発売されるのを記念し、原作者のクワハリ先生に緊急インタビューを実施!
知る人ぞ知る(!?)ジャンプルーキー!投稿時代のことから、創作論まで、たっぷり話を伺いました。

少年ジャンプ+で読む

『ふつうの軽音部』(原作:クワハリ/漫画:出内テツオ)
ちょっと渋めの邦ロックを愛する新高校1年生・鳩野ちひろが、大阪にある高校の軽音部に入部し、日々の部活動や人間関係に奮闘する様子を追った青春ドラマ。実在の楽曲を使用した歌唱シーンや、リアルで等身大なキャラクター描写、予測不可能な展開で、注目度急上昇中の本作は、原作担当クワハリ氏が2023年1月〜9月にジャンプルーキー!で連載しSNS等で話題を呼んでいた『ふつうの軽音部』をベースに作られている。

*****

<ジャンプルーキー!で火がつき少年ジャンプ+で連載化>

――クワハリ先生は、漫画賞受賞経験も読切掲載経験もなく、『ふつうの軽音部』が商業誌デビュー作という異色の経歴であることが特筆すべき点だと思うのですが、まずは、原作版『ふつうの軽音部』が生まれた経緯を教えてください。

コロナ禍で「何か新しいことに挑戦したい」と、絵の練習を始めた一環で、「自分が小さい頃から好きだったマンガを描いてみよう!」と思ったのが最初のきっかけでした。
ただ、自分の力ではゼロからストーリーを作れる気がしなかったので、1作目は自分の高校生活を題材にしたエッセイマンガを作ってTwitter(現X)上に連載形式で公開していたんです。
高校生活をひと通り描き終えたときに、「よりお話に起伏を作れるフィクションを作ってみたい」と思い、企画を考える中で生まれたのが『ふつうの軽音部』でした。

ジャンプルーキー!版を読む

題材としては、自分自身が経験していて詳細に描けるものとして「軽音楽部」を選び、「大人数の軽音部を扱った作品はなく、差別化できるのでは」と考え、今の設定にたどりつきました。

(ジャンプルーキー!版 第3話 p4より)

――1作目のエッセイマンガ連載から間をおかずに2作目に着手されていて、「描きたい」「表現したい」という強い創作意欲を感じます。

そもそも自分は絵が下手で、プロのマンガ家なんてなれるわけがないと思っていて、「描ける範囲で楽しく描いてみよう」と、あまり気負ってなかっただけだと思います…。
ジャンプルーキー!(以下「ルーキー」)での連載中も、描き続けるモチベーションになっていたのは、創作欲というよりも徐々に増えていった読者の方々からの反応だったという意識の方が強いです。
『ふつうの軽音部』は3話までは自分のTwitter上で公開していたのですが、もっと多くの人に読んでもらいたいと考え、ルーキーにも同時に投稿を始めました。そこからTwitterでもルーキーでも読んでくれる方が増えていったのですが、最新話をアップするたびにいただくコメントがいつも本当に嬉しくて…。コメントがなかったら描き続けていなかったかもしれませんね。

――そこから、2024年1月に少年ジャンプ+で連載が始まるまではどのような経緯があったのでしょうか?

ルーキー経由で、ジャンプ+編集部の方から連載会議にチャレンジしませんかと連絡をもらいました。
自分の作画のペース的にもスキル的にも、また、当時フルタイムで仕事をしていたこともあり、商業誌での連載は難しいとお伝えしたところ、作画担当として出内テツオ先生を紹介していただき、自分は原作に専念するという条件で、連載会議に挑戦することになりました。
連載が決まってからは、すでにルーキー上で公開していたお話をベースに、各話のペース配分を練り直し、キャラクターデザインなど相談しながら準備を進めていきました。

――作画担当の出内先生との連携も見事ですよね。

出内先生の表現力は本当にすばらしいのですが…特に、ビジュアル面での細かなアイデアは自分では思いつかないようなものばかりでいつも感心しています。読者の方々からも反応のあった、11話の体育祭でのキャラごとに異なるハチマキの巻き方も、自分では絶対に思いつかなかったですね…。

――少年ジャンプ+での連載では、各話のページ数も増えてネームを少しずつ改変していますよね。

ルーキーでは各話8ページで連載していましたが、あれは実は自分の作画力の限界で仕方なく8ページになっていたんです…。各話約19ページになったことで、やむなくはしょっていた部分を今はしっかり補完して描けているなという実感があり、ネームを組み直す作業も楽しいです。

<キャラクターは全員自分自身…!?>

――ジャンプルーキー!投稿時代の話に戻りますが、主人公・はとっち(鳩野ちひろ)をはじめ、キャラクターはどうやって作っていったのでしょうか?

主人公の鳩野はかなり自分を投影していますが、他の登場人物は、「この主人公とバンドを組むとしたらこんな子がいたらいいなあ」とか「ライバルにはこんなキャラで…」と、主人公を中心に配置を考えていきました。
あまり論理的には考えているわけではないのですが…
各キャラクターを「明るい」とか「クール」とか、ざっくりとした第一印象で考えておいて、その第一印象だけだとありがちになってしまうので、二面性を与えられるようにエピソードを作っていったというイメージかもしれません。
例えば、鳩野に入学早々に話しかける(内田)桃は、ぱっと見は「明るい元気な子」ですが、実は恋愛に対してコンプレックスやトラウマを抱えていて…というエピソードが9話〜10話にかけて出てきます。

また、(幸山)厘は「クールなキャラ」として考え始めていたのですが、話を描いている途中で、「展開を進めてくれるような力のあるキャラクターが欲しいぞ」と思い、「第一印象がクールな子にその役割を負わせたら面白いのではないか?」と考え、今のキャラクター像になりました。

――個性豊かで等身大なキャラクターたちに共感しながら読んでいる読者が多いように感じます。それぞれ全然タイプが違うキャラクターをリアルに等身大に描き分ける上で意識していることはありますか?

リアルと言っていただけることが多いのですが、「リアルに描こう」という意識は全然なく……もともと山本さほ先生や福満しげゆき先生などのエッセイマンガを読むのが好きなので、もしかしたらそれがリアルさに影響しているかもしれません。
あとは、実際に会ったことのある人や触れてきた創作物のキャラのエッセンスが混じってはいると思うのですが、どのキャラも明確なモデルはなく、自分の思考回路や性格、経験を投影しているという意識が一番強いかもしれないです。
恥ずかしいですが、例えば、ヨンスのちょっとキモいデートの誘い方は、昔自分がやってしまったことそのままですし、

桃が舞伽に逆ギレっぽく返信をするエピソードがありますが、その拗ね方もすごく自分っぽいんです(笑)。 

そういった自分の経験や感覚を用いてエピソードを入れているのが、リアルと言っていただける理由なのかもしれないですね…。
ただ、自分としては、リアルさを追求するよりも、フィクションとしての盛り上がりや面白さを優先して大事にしていきたいと思っています。

<予測できないストーリーの作り方>

――あるある日常コメディかと思いきや、先の読めないサスペンス的な展開にわくわくさせられ、かと思いきやドラマに感動させされたりと、予測不能な展開と独特な読み味も『ふつうの軽音部』の魅力ですが、ストーリーはどのように考えていますか?

これもあまり計画的には考えていなくて…文化祭や進級などのイベントを軸に大きな流れを先までざっくりと想定しつつ、各話の展開は話ごとに描き進めながら決めていっています。
基本的には「このキャラとこのキャラがぶつかったらどんなことが起こるかな」というところから考え始めることが多いかもしれません。というより、自分がネガティブな人間なので、違うタイプのネガティブな人間同士がぶつかったらどんなことが起こるかをつい想像してしまうというか…。
あとは、今は鳩野のバンドメンバーが揃っていく過程が配信されていますが、「このキャラはどういう流れでバンドに加わることになるだろうか」とキャラありきで、想像を膨らませてエピソードを作っていっているという意識です。
例えば、「桃はキャラクター的に、入学時から鳩野と同じバンドを組みそうにはないから、最初は別のバンドに入れよう」「主人公のバンドがあっさりと序盤で解散してしまうというのも、他の作品にはあまりない展開なので良いかも」…という思考回路だったように思います。

――8話からの急展開で一気にドラマが動き出し、日曜日の配信直後にXでトレンド入りするなど、大きな反響があったのも印象的です。

ありがたいことに、8話以降のドラマが動く話でも何度かトレンド入りしたりと、たくさんの反響がいただけてとても嬉しいです。本当は「1話で主人公の行動原理をしっかり見せてがっつり読者をつかむ」ということができたら良かったのですが、キャラの考えていることをためてから明かしたかったのと、1作目に描いていたエッセイマンガのノリを引きずっていた部分はあるかもしれないです…。

――今後はどんな展開を考えていますか?

ルーキー版の最新話にはまだ追いついていないですが、追いつくまでの話でもどんどん新要素を出していく予定です。追いついた後も、部活の話をしっかり描いていきたいと思っています!

――最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

応援してくれる読者の皆様のおかげで成り立っている漫画です!! まだまだ描きたいことが沢山あるので今後ともお付き合いいただければ幸いです!!

――クワハリ先生、ありがとうございました!

*****

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【第112回】読者をタップ(クリック)に導け! サムネとタイトルのコツを少年ジャンプ+読切掲載作家に聞いてみた!!

皆さんこんにちは。「ジャンプルーキー!」をご利用いただきありがとうございます。少年ジャンプ+編集部のS浦です。

たくさんの作品を手軽に読める現在、「すごく面白いのに多くの人に読まれなかった作品」も残念ながら数多く存在します…。まずタップ(クリック)してもらうことは非常に重要です!
そのためにぜひ工夫していただきたいのは
サムネイルとタイトルです!!!
理由は簡単、マンガアプリ(サイト)を開いた読者が一番最初に受け取る情報だからです!(媒体や表示形式によって例外もありますが)
サムネイルとタイトルで「この作品を読んでみたい!」や「何か気になる!」と思ってもらうことが、多くの人々に読んでもらうことに繋がります。
月間ルーキー賞受賞を目指す方にとっても、ランキング上位に入るためにぜひ考えてみて欲しいポイントです。

そこで、今回は
少年ジャンプ+に最近読切が掲載され、高い閲覧数を記録した作家の方々にサムネイルとタイトルで心がけていることを聞いてみました! ※2023年10月7日~2024年1月7日の3か月で、掲載後1週間以内の閲覧数が60万以上を記録した作品です。

*****

『なんにもない、なんでもない』藤野ハルマ先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか?

物語の内容に沿ってピンときたワードで決めました。タイトルはネームが固まってきた後に決めることが多く、文字の雰囲気や語感の良さを意識していると思います。仮タイトルは「じじいVS中学生(仮)」でした。

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか?

前作でサムネは大事と学んだのでインパクトを大事にしました。簡単なラフを8案程やり取りして一番ピンとくるものを担当さんに選んでいただきました。アプリで縮小後どう見えるかイメージするのが大切だと思います。


『彼女』二反田洋先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか?

ギュスターヴ=アドルフ・モッサの『彼女(エル)』に影響を受けたからです。魔性の女です。

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか?

何が一番目を惹くかなと考えた時、美人の三白眼だと思ったので。


『心中』原作:矢薙先生 作画:増渕ウナム先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか? ※矢薙先生に質問

元々「心中」という言葉をギミックに使った物語だったので、それに因んだ流行りの長いタイトルを色々考えたのですが、逆に短い方がインパクトあるのかな?と思い「心中」にしました

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか? ※増渕ウナム先生に質問

今回の心中では数ある読み切り作品の中でまず目立つように、被らないことを一番意識しました。 そこで肌色など既存の色を使うのが一般的ですがあえて使いませんでした。目立つためには何かリスクを負って挑戦することがひとつだと思います。


『男は笑っていた』永井青先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか?

わかりやすさを最優先にしたかったからです。読者様が全く内容を知らない読切作品なので、どんな話か想像できず手がつけにくくなることを防ぐために、作品の雰囲気がわかりやすくなるようなタイトルにしてみました。

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか?

作中の気に入っていたシーンだったからです。そのシーンをそのままサムネイル用に描き直しました。小さくても目に留まるようにキャラを大きく描き、且つ細かいところのディティールで繊細な絵になるように心がけました。


『息することすら許さない』市川苦楽先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか?

「許さない」のようなネガティブなフレーズって言葉として強く、ポジティブなフレーズよりも良くも悪くも心に残りやすいと思うからです。

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか?

明るい印象の無いタイトルだからこそ闇を感じさせない笑顔のカットの方が違和感が生まれ目に留まりやすくなると思うからです。


『犬の面』墨ケンゾウ先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか?

今回のタイトルはパッと見ただけでも目に留まるような「短い言葉」と「異質さ」を意識してつけました。

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか?

私は流行りの絵が描けないので逆に、私が描ける絵を全面にだせば「異質感」がでるのではと思いこのカットにしました。


『真夜中のハイライト』原作:熊谷亜門先生 作画:今井ミキオ先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか? ※熊谷亜門先生に質問

最初は昔吸っていた煙草の銘柄から「真夜中のピースライト」というタイトルにしていたのですが、ハイライトの方が洒落ているので変更しました(hi-liteとhighlightが掛かっています)。ちびまる子ちゃんのお父さんも吸っているイケてる煙草です。

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか? ※今井ミキオ先生に質問

本編の内容に沿っているのは前提として、影のある女の子が大きく写っているサムネには訴求力があると思ったのでこの構図とライティングを選びました。顔の近くに手を置くことで情報量を増して視線が来るようにもしています。


『付き合って3年記念日に私の左手は呪われた』並木ヨウイチ先生
少年ジャンプ+で読む

① そのタイトルにした理由は何ですか?

秀逸なタイトルが思いつかなかったので、それならばパッと見た時に物語の設定が想像できるようなシンプルなものにしようと思い、1ページ目のモノローグをそのままタイトルにも持ってきました。

② そのサムネイルのカットにした理由は何ですか?

なるべく読者の目に留まるように、カラーによる呪いの気持ち悪さを全面に押し出したかったからです。あとは物語のラストシーンと対比できるよう、似たポーズを描こうとしました。見返したら全然似てませんでしたが。

*****

作家の皆様、ありがとうございました!
作品の情報を適切に伝える、目につきやすい文言を使用する、あえて違和感を与えるなど、さまざまな狙いが込められていることが分かりました!
ぜひ皆さんも色んなアイデアをサムネイルやタイトルに込めてみて欲しいと思います!


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【第111回】『バトルシーンだけ!漫画賞』募集中!『マリッジトキシン』作画担当依田瑞稀先生に聞く、魅力的なバトルシーンの描き方!

いつも編集ブログを読んでいただき、ありがとうございます!

我々ジャンプ+編集部は、まだ見ぬ才能に出会うため日々様々な漫画賞を企画・開催しています。そんな中でも今回紹介したいのは、現在開催中の一風変わった漫画賞。
その名も、『バトルシーンだけ!漫画賞』

↓ 詳細はこちら

こちらは、「魅力的なバトルシーンを描けているか」のみを評価の基準とした、長いストーリー、展開、構成、一切不要の、まさにバトルシーンの描写に特化した漫画賞です。
「とにかく迫力のある、カッコイイバトルシーンを描きたい!」そんなあなたの応募をお待ちしております!

ただ、一口に「魅力的なバトルシーン」と言っても悩んでしまう作家さんは多くいらっしゃると思います。そこで今回は、ジャンプ+にて連載中の『マリッジトキシン』で作画担当を務める依田瑞稀先生にインタビューを行いました!
迫力満点で、個々のキャラクターがはっきり感じられる、まさに「魅力的」なバトルシーンを描く依田先生から、創作のヒントを伺います!

ジャンプ+で読む

*****

――バトルシーン・アクションシーンを描く際に気を付けていること、こだわっていることがあれば教えてください。

アクションをしているキャラクターを描く時は、のびのびとした線で構成したシルエットにすると、見ていて気持ちがいいと思うので、デッサンの正確さも大事なのですが、必要に応じてシルエット重視にしたりしています。

バトルシーンでは描き込みを増やすことも意識しています。
どこがどう動いているかわかるようなブレる部分を作ると、描き込みが増して、迫力が出たり、動きが出たりするのかなと思います。
構図を、場合によって前後で強めのパースをつけて迫力を出すことも有効だと思います。
ポーズが、スポーツの動きに近いかも?と思ったら、そのスポーツの画像や動画から参考にしたりもします。

【第4話20-21ページより】動きのある脚部を中心に描き込みを増やし、躍動感を表現!


――迫力あるシーンを描くために行なっている、特別な練習法・勉強法はありますか?

大好きなアニメーターさんの動画を流して、画面を見ながら、手元は見ずに、取り込みたい上手な部分を模写するイメージで、グルグルと手を動かすことをしています。脳が動く感じがして、いい絵が描きやすくなる気がします。


――先生が作中で一番気に入っているバトルシーン・アクションシーンを教えてください。

50話の見開きで、下呂の膝裏で、テルアキの首を捕えるように蹴り飛ばすシーンです。
下呂の静かな怒りが、表情に出せたかなと思います。静脈先生のネームのシチュエーションのおかげで、静かな病院内で人知れず大切な人を守る、ってすごくかっこいいなと、お気に入りのシーンになりました。

【第50話10-11ページより】城崎のピンチを人知れず救う下呂。派手なアクションと無音のギャップがカッコイイ!


――先生が特に影響を受けた・リスペクトしている漫画家さんがいれば教えてください。

村田雄介先生です。ペン入れの仕方が特に大好きです。
同じく作画を担当されているという面でも、とても憧れの存在です。


――バトルシーンの中でそれぞれのキャラクターの特徴・魅力を出すために行なっている工夫があれば教えてください。

膝や肘や脇を、品のあるように閉じさせるかワイルドに開けさせるか、猫背にさせるか背中をピンと反らせるか等、キャラごとに動きの癖があると思うので、その印象に沿った動きになることを意識しています。
どこを風になびかせて、くびれさせるシルエットにするのかも、キャラデザの段階から意識すると、バトルシーンを描く時に動かしやすいです。

【第35話16-17ページより】下呂と潮、初の共闘シーン。腰や肩周りの描き分けで、キャラの個性を演出している!

*****

依田先生、ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか。シーン一つ一つにしっかり意図を込め、「どうしたらより良い画面になるか」を考え続けること、漫画だけでなくアニメ作品や現実世界の写真・映像からも要素を取り入れる努力を続けること、どれもが「魅力的なバトルシーン」を作るためには重要なのだとわかりました!

バトルシーンだけ!漫画賞では、

  • 異能力バトル部門
  • リアルファイト部門
  • 自由部門

の3部門で、バトルシーンを含む8p以上の漫画作品を募集しています!
異能力バトル部門・リアルファイト部門ではジャンプ+が公式プロットをご用意! ストーリーを考えるのが苦手な方でも簡単に参加可能な賞となっております。
賞金50万円の大賞作品は必ず1本以上選出! さらに、佳作以上に選ばれた作品には必ずジャンプ+編集部員の担当付を確約いたします!

締切は2/29(木)です。
皆様の力作、心よりお待ちしています!


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