【第71回】『ジャンプルーキー!』から連載へ!漫画歴40日だった『ゲーミングお嬢様』の作者、連載中の“今”に迫る!

いつもジャンプルーキー!へのご投稿ありがとうございます!

今年2月の本ブログにて超バズった作品として紹介した『ゲーミングお嬢様』
当時、漫画歴40日にも関わらず、作者の大@nani先生「ジャンプルーキー!」上で690,000閲覧。(2020年2月現在)
Twitter上ではトレンド1位、フォロワー数10倍増、各メディアでインタビューを受ける
ほど大きな反響がありました。

【第61回】漫画歴、約40日!超バズったルーキー投稿作『ゲーミングお嬢様』の作者に迫る!!


今年の7月より、少年ジャンプ+でも異例の早さで連載となりました。


『ゲーミングお嬢様』 大nani/吉緒もこもこ丸まさお
<第1話はこちら>

漫画歴40日のど素人から、連載作家となった今、どのような思いで執筆活動に励んでいるのか改めてインタビューしました。

***

─── 連載してみて良かったこと、大変なことは?

原作者としての立場の考えですが、自分では書ききれなかった構図や、イメージとしてしか捉えられなかった表現を、マンガとしてカタチにしてくれることが何より嬉しいです。

原作者は、セリフを書いて、コマ割りを決めて、大まかな構図と表情、視線誘導の意図、キャラはここで何を考えているか、元ネタは何か、参考資料等、作画の方ができる限りスムーズに作業を行えるよう、メモを付属した上で「仮ネーム」を提出します。

その仮ネームが作画の方によって「本ネーム」としてブラッシュアップされる訳ですが、その際にまず一度、「こういう表現があったのか!」「思いつかなかった小ネタだ!」と驚きます。
その次に、出来上がった原稿を見て「ぼくの考えたネームがこんな凄いことになっているぞ!!」と再度驚きます。

とくに12話の見開き昇龍拳のページですが、ジャンプルーキー!に原作1話を投稿した時点から、いつかはカッコよく書きたいなと思っていた構図でした。
ですが、明らかに画力が足りないわけで、今書いてもショボいものにしかならなさそうだ、と保留していたわけです。

その構図を、巡り巡って実際に書いてもらえることになったわけです。まさかこんなにカッコよくなってしまうのかと。
12話の原稿を最初に見た時、思わず感嘆の拍手をひとりでにあげたことをよく覚えています。「ああ、自分の書きたかったものはこれだったんだな」と感動しました。


<原作版ネーム>


<作画版ネーム>


<完成原稿>


これは原作者にしか味わうことのできない『特等席』だと思います。本当に嬉しい。
誰でも一生のうち一度は夢見る「ぼくの考えた最強の脳内マンガ」が実際にこの世に出力される訳です。嬉しいですよね。

大変なことは、とにかく面白いものを考えなくてはいけないというプレッシャーです。マンガを書き始めて様々な創作物(マンガ、映画、ドラマ、小説など)に触れてきましたが、「こんなに面白いもの自分に書けるのだろうか?」などと勝手に落ち込むこともあります。力不足を実感する場面も多々ありますし、とにかく勢いでなんとかするしかない、とは思っていますが……
なんだかんだ最初にマンガを書いて1年経ちますし、そろそろ素人とは言えない立場になってきていると思いますので、とにかく勢いでなんとかします。

あと、積みゲーが大変増えています。消化する余裕がなくなりました。
願わくば、このゲームたちが1年、2年と消化する暇もないぐらい忙しくありたいですね。



─── ルーキー投稿時と連載時で、執筆において工夫していることはありますか?

インプットの話になりますが、とにかく創作物を見る機会を増やしました。この世には面白いものが多すぎます。
作風がパロディ上等というお行儀の悪さもありますが、面白いものの面白い理由をしっかり考えるようになって、それを拝借しているという形で許してください。

ドラマや映画のカメラワークなど、意識してみれば「これはコマ割りの参考になる」とか「見せ場はこんな風に作るんだな」など、マンガを書く前では考えもしなかった視点を持つようになりました。
自分のようなマンガ初心者が、子供の頃から沢山絵を書いている先輩達には生半可なやり方では絶対に勝てないので、日常の細かい発想から創意工夫を意識しています。

以前の自分では一切触れることのなかった文化にも、自分から接するように努力するようにもなりました。ラップなどですね。
とにかくインスピレーションはいくらあっても足りないので、興味のなかった文化にもエイヤと突っ込んでみることが大事だなと思いました。一度実績解除したら楽になります。
野菜が全般的に苦手だったんですけど、キャベツは肉と一緒に食べればいけるやん、肉無くてもソースかければバリバリいけるやんと、今年ついに実績「野菜の食べ合わせ」を解除しました。
案外、こんな簡単でくだらないものでも、未知の文化に触れるという「慣れ」ができると思います。


─── 連載前と連載中の今で、一週間や日々のスケジュールを教えて下さい。

今はひたすらに、ネームを書いて、ゲームをやって、創作物を見て、ゲームの配信を見る毎日です。正直なところ不健康極まりないです。
特にプロゲーマーの方の配信は一日中流したりしています。
あまりにもネタが欲しすぎて、ネームを書いていない時間はとにかくインプットに費やしています。

─── 反響などはいかがですか?大きな変化などあれば教えてください。

いつもネタに使わせて頂いているプロゲーマーの方達への感謝もこめて、よく配信にお邪魔して投げ銭を送っているのですが、「ゲーミングお嬢様の人だ」と反応してくれるのは嬉しいですね。
それに、自分は「自分の好きなものに沢山の人が興味を持ってくれる」ことが好きなので、このマンガを見て格ゲー始めた!とかプロゲーマーに興味出た!といった感想を食べて生きています。
「知っている人が面白いマンガ」から「知らない人でも面白くて興味を持てるマンガ」を書こうと考え始めたことが一番大きな変化だと思います。
それに「格ゲーはわからないけど面白い!」と言ってくれた人を、実際にゲーム配信を見始めて、実際にゲームをプレイしてもらえる、ところまで繋いでいけるような作品を作りたいです。
あと、いずれ自分も一週間に一度くらい定期的にスト5配信してみたいですね。今は忙しくてなかなか時間が取れないのですが、単行本作業を終えて余裕ができたらやりたいです。

─── 商業誌への連載を目指して、ジャンプルーキー!に投稿している作家さんへ一言お願いします。

まず書いてみましょう。書けばなんとかなります。
チェンソーマンの藤本タツキ先生もジャンプルーキー!のインタビューで仰っていましたが、とにかく、沢山の創作物に触れてみること。先入観を持たず、素直に「面白い」と思える感情が大事だと思います。

自分の「面白い」ものを徹底的に突き詰めて、思うがまま叩きつけましょう。
「好きなもの」を書くなら、妥協せず、徹底的に好きになること。熱意のある作品は、熱意のある人々に、必ず伝わります。


***

日本中のあらゆるお嬢様ゲーマーが憧れる超有名校・聖閣東芸夢学園。その学園の全一にして頂点・祥龍院隆子をはじめとする“eお嬢様”たちの熱き戦いの物語。
<ジャンプ+にて毎週火曜更新!!>


【第70回】感動のフィナーレを迎えた『スライムライフ』作者メガサワラ先生インタビュー!

少年ジャンプ+の癒し枠として、週2回掲載という形での週刊連載を3年以上続け、この度300話で大団円を迎えた『スライムライフ』のジャンプルーキー!出身作家・メガサワラ先生にインタビューしてきました!

─── まずは、3年以上の長期にわたる週刊連載(週2回配信)お疲れ様でした。
初めての連載でしたが無事に連載を終えた率直なご感想をどうぞ。

やりきった想いが強く、とても充実しています。

─── ジャンプルーキー!に投稿、読切掲載、連載獲得と当時のことで思い出深いことはありますか?

ルーキー!に投稿していた時は、自分にどんな作品が作れるのかを模索している時期でした。とりあえず色々描いてみようって感じでジャンルを絞らずに投稿していたと思います。自分の作品を売り込む場としてルーキー!はとても良いと思います。

最初の読切掲載はパニックホラーでしたね。恐怖演出や怪物が好きなのでそれらを詰め込んだ作品でした。反省点は沢山あるのですが一番はサムネイルです。もっとわかりやすくどんな作品なのか伝える事を意識すべきでした。

そして最初の読切掲載から連載獲得まではけっこう苦労をした思い出です。パニックホラーを中心に作っていましたが、なかなかネームが通らず悩んでいました。担当編集者にもキャラクターで物語を作りましょう、と言われてて思いっきり違う作風で作ってみたのが読切『スライムライフ』です。
そこからはあっという間でしたが、『スライムライフ』が連載を獲得した時は嬉しかったですねー。姉や両親がすごく喜んでくれてたのが印象的でした。自分がやっていけるのか不安もありましたが、頑張ろうって思いました。

─── 連載時の思い出に残っていることは?

連載時で特に辛かった時は始まって数話あたりですね。
この作品の面白さがどこにあるのかわからなくなってしまい全然話が作れない時間が続きました。しかし、スライムが可愛ければルールは特にないというアドバイスをもらい、そこからはあれこれ考え過ぎることが減り、スライムの新しい可愛さをどう伝えるかに集中できたと思います。そこからはスライムやスライムを取り巻くキャラクター達がどんどん好きになっていきましたね。

あとはファンレターやファンアート、中にはゲームのようなものやアニメーション、まで作ってくれる方がいて、そういうのを見たときに本当に嬉しく思いました。ファンの方々の力は僕が思っていた以上に大きなものでしたね。

─── 短いページでの連載(スライムライフは1話約5P)、週2回配信の連載形式はどうでしたか?

良い点は週2回なので読者さんの目に入る機会が多いということ。ページが短いので最後まで読んでもらいやすいこと。すぐに次のお話が提供できること。個人的には同じテンポでかきやすかったです。ページが少ないので修正やネームの切り直しがあまり怖くないのも、良かった点かもしれません。
苦労する点は、長いお話を書くときにテンポが悪くなってしまうこと。やはり約5Pでは多くの情報は入れられないですね。

─── 可愛らしく魅力的なキャラクターが『スライムライフ』にはたくさん登場しますが、どのようにしてキャラクターを産み出していますか?

始まりは一生懸命だけど弱いスライムと意地っ張りなツンデレ魔道士だけしか考えていませんでした。そこから何故このキャラクターはこんな態度をとるのだろうかと、バックグラウンドを想像していきました。
あと新キャラを作るにあたって友達の作家さんにアドバイスをもらったことがあり、「主人公の新しい一面を見せる役割をそれぞれに持たせるといいよ」というもので、これは新キャラ作りにおいてとても役に立ちました。
ポコナはスライムの友達でありライバルの一面を見せてくれるし、ゴーレムは先輩なスライム、ブラドは敵対するスライムなど、どんな表情をスライムにさせたいかでキャラクターを考えていたと思います。

─── 連載を続けていく上で必要なもの、大事なものなどはありますでしょうか?

個人的に担当編集者と同じ方向を向けているかだと思います。話を作っていくうえで作家と編集者がこの作品は何が面白いのかを共有していないと、ターゲットを絞れない作品になってしまうと思います。
そうなると話し合ってもなかなかお互いに納得のいくものは作れないのではないかと思います。
あと作品作りに直接関係はないのですが、普通に沢山寝て朝起きれた日はとてもスムーズに作業ができた記憶があります。これはなかなか上手くいかないのですが、このサイクルを確立できたらいいのになと思っています。

─── 次回作への意気込みをどうぞ

今作が短編というのもあり、次回は長いページ数のお話に挑戦したいです。
それとジャンルの違いで出来なかった演出や表情、キャラクターなど新しいことをどんどんやっていきたいですね。
『スライムライフ』の連載中に見つかった課題を意識しつつ、次のステップに向かって行けたらと思います!

─── 最後にジャンプルーキー!からデビューを目指す新人作家さんに一言お願いします。

個人的に「読みやすさ」を重視して欲しいです。「読みやすさ」に関しては文字の多さであったり画面の密度であったり、常に読み手側にストレスがかからないかを考えて欲しいです。ジャンプ+の場合はスマホの小さい画面で読む方も多いので文字の大きさや、1ページあたりのコマ数もですね。疲れて途中で読むのをやめられてしまうのが一番もったいないです。

あと「わかりやすい」のも僕は好きです。二言になってしまいました。みんなでジャンプ+を盛り上げていけるようにがんばりましょう!

【第69回】生み出すは千の笑い!! 華霊なるギャグ漫画家・鳩胸つるん 剥き出しインタビュー!!

唯一無二の露出狂ギャグ漫画『剥き出しの白鳥』で少年ジャンプ+に強烈なインパクトを残し、
ほのぼの背後霊ギャグ『ミタマセキュ霊ティ』で、少年ジャンプ読者に愛された、新進気鋭のギャグ漫画家・鳩胸つるん先生に、創作の秘訣と連載獲得までの道のりをインタビューして来ました!


***

─── はじめに、鳩胸先生が漫画を描き始めたきっかけは何でしたか?

元々、小さい頃から『DRAGON BALL』が好きで、絵を描くことも好きだったので、小学生低学年の頃に、大学ノートに漫画を描き始めたのが、一番最初のきっかけでした。ただ小学5年生くらいからバスケにハマって全然漫画を描かなくなってしまったんですが。
その後、大学4年生くらいまでバスケを頑張って、引退して就職活動しなきゃという時に、あ、俺、そういえば漫画家になりたかったなと。
急に本格的に漫画家を目指すようになりました(笑)


─── バスケにしばらく打ち込んでる間は、漫画家になりたいという夢はなくなっていたんですね。

そうですね(笑)お恥ずかしながら。青春は全てバスケに捧げていました。


─── その中で、ギャグ漫画を描こうと思ったのは何故でしょうか。

これが、もう、あれですね。ストーリー漫画に比べて画力を問われないというのが一番大きくて(笑)急に目指し始めたから、何もわからないわけですよ。道具は何を使ったら良いのかとか、トーンはどれを買えば良いのかとか。本当に何にもわからなくて。でも、ギャグ漫画って、冷静に考えると、あれ、そんなに絵が上手くないなって。めっちゃ失礼な話ですけど。懐の深さというか、器の大きさをギャグ漫画に感じたんですよ(笑)きっかけは軽い気持ちでしたね。


─── そうしてギャグ漫画を初めて描き上げた後、持ち込みか漫画賞か、具体的にどのようなチャレンジから始めていったのでしょうか。

僕は最初にジャンプのギャグ漫画賞である「赤塚賞」に応募して、佳作をいただいて、そこから漫画家へ向けて動きだした感じでしたね。


─── いきなり受賞するとは凄いですね。その後、連載を目指す中でどれくらいのペースで作品を描いていましたか?

うろ覚えなのですが、最低月1本くらいは新作ネームを描いて持ち込みに行ってました。読切コンペが近い時は週1本くらいのペースだったのではないかと思います。


─── ペースとしては早い方なのではないでしょうか。

どうでしょうか。これは結構、人次第ではないかと思います。いっぱい描いた方が良いって人もいるだろうし、センスでいきなりデビューする人もいるだろうし。最終的に連載を取れれば、人によってどんなルートを通っても良いんだと思います。僕は一作目で受賞して、天才かなくらいに思っていた頃もあったんですが、そこからなかなか連載を取れない6年がありました。


─── いきなり受賞はしたものの、その後が長かったわけですね。

そうですね、でも今では下積みを経験できて良かったのではないかと思っています。バスケに取られていた漫画への愛を取り戻した感じだったので(笑)必要な6年間だったように思いますね。


─── 6年間も諦めずに頑張り続けられたのには、何か理由があったのでしょうか。

大学4年生から描き始めて、知識とかも全くない状態でこの世界に入ってきたから、すぐに上手く行かなくても当然だって思ってましたね。そんな甘い世界じゃないというか。ずっと漫画が好きだった人に勝てる訳がないよなって気持ちがあったので、それで頑張り続けられたというのはあったかもしれません。根底では自分のことを未熟だと思ってて、でも、カッコいい言い方をすると「俺はこんなもんじゃないし」って思ってました。


─── 『剥き出しの白鳥』『ミタマセキュ霊ティ』と2作ギャグ漫画を連載されましたが、連載をしてみて改めて感じたことや気づいたことはありますか?

うーん、やっぱりこれ一番は、人気を取るのはすごく難易度の高いことなんだなってことを痛感しましたね。ただ自分が面白いと思って描いてるものが、必ずしも人に受け入れられるわけではないし、理屈ではわかっていても、その感覚って実際に出してみないとピンと来ないものが多いというか。難しい世界だなと思いますね。


─── より読者を意識するようになったという事でしょうか。

そうですね。でも、それと同時に、合わせすぎてもダメだなというのも思っていますね。こんなのが好きなんでしょっていうのが透けて見えても読者は冷めちゃうだろうし。
自分が好きなものを描くというのは大前提としてあって、かつ読者に受け入れてもらえるというバランスを取るのが、すごく難しいなというのを感じていますね。あとは、とにかく週刊連載ってやらないとわからないことの方が多いなと。逆に、思いもよらない嬉しい誤算もあったり。


─── 例えばそれは、どんな誤算でしたか?

『ミタマセキュ霊ティ』に関しては、最初はハゼレナは、読者目線の、薄いキャラにしようと思って作ったくらいのキャラだったのに、最終的には面白い動きをするキャラクターになったなと思っています。これも、連載でずっと同じキャラクターの色んな行動を描いて初めてわかった事でした。
ハゼレナを描けたのが、僕にとっては『ミタマ』を描いて一番よかった事でしたね。


─── 漫画賞や読切掲載を目指して頑張ってる新人さんたちが、自分の予想しない良いキャラになったという喜びを味わうためには、どうすれば良いのでしょうか。

これはもう、描いてみるしかないですよねー(笑)ネームをやってると、頭で考えちゃいがちなんですよね。実際に描く前に、無駄な時間を過ごしたくないから。ちゃんと描いてボツになると、精神的ダメージが大きいから。
でもやっぱり、僕も9年くらいやってますが、描いてみないとわからないことの方が圧倒的に多いなと、やればやるほど思うようになりましたね。そして僕はセルフボツよりも、描いたらすぐに担当さんに見せてましたね。完成した達成感で、すぐ見せに行っちゃうみたいな。出来はいいや、みたいな(笑)


─── 良い意味で、フットワークの軽さがありますね。

そうですね。その中でも、『剥き出しの白鳥』の読切のネームができた時は、人生で初めて早く担当さんに見せたいと強烈に思いましたね。逆に言うと、あれ以外ないんですけど(笑)いっつもだいたい、これ面白いのかなって思いながら、それでも持って行ってましたね。


─── それではネームは具体的にどういった手順で描いていきますか?

まずB4のコピー用紙に、セリフとかをバーっと最後まで書きます。その1枚が出来たら、今度は、B4を8つに折って、コマ割りだけのミニネームにしていきます。この段階では、自分にしかわからないくらいのネームです。ミニネームまで進めてみたら全然面白くないということもあるので、描きながら修正したりもよくあります。最後にクリスタで1Pずつ清書していく感じですね。


─── 鳩胸先生はキャラクターを作る時にどのような点にこだわっていますか。

キャラクターは難しいのですが、ほぼ思いつきなんですよね。ストライプさんなんか良い例で。90%くらいは思いつきです。強いて言うなら、どんなダサさがあるかってのから作りますね。ただカッコいいキャラってどうしても好きになれなくて。『剥き出しの白鳥』だったら白鳥は露出が好きだし、『ミタマセキュ霊ティ』だとミタマは怖がりだし、欠点というか「どんなダサさがあるか」から作っていきますね。


─── ギャグを考える上でのコツや大事にしていることは何かありますか?

コツがあるなら僕が知りたいくらいなんですが(笑)ギャグって全員にウケるってのは不可能ですし、お笑いなんかの舞台と違って、どこに笑ってくれるか反応も見れない。だから一番は、自分が満足しているものを描くことだと思ってますね。
自分でもイマイチだなって思ってるギャグが反応悪いと、すごく精神的にダメージがあるんですが、自分が面白いなって思ってるギャグがウケなくても、意外とダメージはないんですよ。僕も面白くて、担当さんの反応も良くて、それでも人気が取れない時もあって、もうそうなると、その結果も含めて面白くなっちゃうというか。
あとは、細かいことで言うと、ツッコミは最小限の方が良いのかなと思ってます。理想で言うと、単語ぐらいが良いなと。あまり長台詞のツッコミを描いていると、芸人さんのマネをしているようで自分でも冷めちゃうというか。漫才じゃなくて、漫画なのだから、絵で笑えるのが理想だなと思っています。


─── ネームで詰まることはありますか?また詰まった時の解消法はありますか?

98%はネームに詰まりますね。もうホントだいたい詰まるし、解消法があるとしたら、勇気を持って全部捨てて次に行くと、ポコっと良いのが出来たりするんですよね。せっかく頑張ったネームを捨てたくないって葛藤と折り合いをつける方法ですが、いつかこのネームを使える日が来るかもしれないと思うと、ちょっと楽になります。


─── 新人の頃に「これだけはやっておけばよかった」ということはありますか。

これはもうアシスタントはやっておけば良かったなと。と言うのも、技術的なこともそうですが、お給料の渡し方とか指示の出し方とか。漫画の指示の出し方が『バクマン。』の知識しかないんですよね(笑)一度、担当さんからもアシスタントのお話はいただいたんですが、当時めちゃくちゃバイトに入ってて行けなかったんです。


─── 次回作も大変楽しみなのですが、現時点で何か構想はありますか?

いやー、今まさに色々と考えてるところなんですけど、バスケ漫画を書きたいなって気持ちはずっとあって、大好きであるがゆえに、失敗を恐れて描いてこなかったんですが、やってみたいなと思いますね。でも、バスケ漫画でネームに詰まったらもう後がないからどうしようかなと(笑)


─── 最後にジャンプルーキーからデビューを目指す新人作家さんに一言お願いします。

僕は何年か漫画を描いてきて、一番思うのは「面白い漫画を描く能力」と「漫画を描き続ける能力」は全く別の能力だなということです。いつか面白いアイデアを思いついた時に、漫画を描き続けてきてないと、それを形にする能力がないってことになりかねないというか。将来連載を目指すのであれば、漫画を描き続けることは大事だなと思います。一緒に頑張りましょう!

【第68回】君の漫画をレベルアップさせる!『集英社漫画講座の埋蔵金』‼

いつもジャンプルーキーにご投稿ありがとうございます!今回のブログはジャンプ+の小池が担当させて戴きます。
今回のタイトルは「君の漫画をレベルアップさせる!『集英社漫画講座の埋蔵金』」です!

皆さんも漫画家さんのインタビューや編集部の漫画講座を1度や2度、目にしてると思います。
面白い話題や気になるニュースはSNSで手元に流れてくる昨今。
ですが創作論、それもより専門的になればなるほど創作と無縁の方々には興味がないもので、ネットの海に埋もれていってしまっています…。

そこで今回は漫画家さんや漫画編集部が公開している創作の心構え・具体的な創作方法などの金言、まさに『埋蔵金』を皆様に改めて共有しようというブログになります。
集英社各編集部の公式HPから厳選された5つを紹介です。


*****


[1] 週刊少年ジャンプ編集部『JUMP新世界漫画賞講座アーカイブス』

作家さんのインタビューとそれを元にした編集部の解説集。
週刊少年ジャンプ人気作家のガチテクニック論や芥見先生のぶっちゃけ論(「BLEACHを読んでください‼」)など見どころ満載!


[2] ジャンプSQ.編集部『マンガの極意!』

SQ.連載陣&他誌の人気作家への貴重な取材集。
新人作家さんが漫画形式で紹介しているので軽く読めるのもおススメ!


[3] ヤングジャンプ、ウルトラジャンプ、グランドジャンプ編集部ほか『賞金総額最大1億円40漫画賞』

集英社青年誌の人気作家はじめ、他誌はたまた漫画を飛び越えたエンターテイメントの一線級の人のコメント&インタビュー集。
貴重なインタビューを集めた稀少度No1のサイト。


[4] 別冊マーガレット編集部『河原和音先生に聞く!実践ネーム塾』

『高校デビュー』『俺物語!!』など大ヒット連発の河原和音先生と新人作家さんの座談会形式のお悩みQ&A。河原先生の優しくも的確・分かりやす過ぎるアドバイスはまさに金言。ガッツリ全12回。全部おすすめです。


[5] りぼん編集部『デジタル作画にチャレンジ!』

最期は一味違うものを。りぼん人気作家さんのデジタル作画動画集。りぼんの読者層である小さい女の子向けに作られてるので、分かりやすさは宇宙一。Wacom Intuosのデジタル作画初心者は必見。


*****

新人作家さんをノドから欲するのが漫画編集部。
それを果たすべく、今回紹介したもの以外にも、各漫画編集部の公式サイトには漫画家志望者向けの無料コンテンツが充実しております。
ひっそりとあなたの来訪を待つ埋蔵金のようなサイトも多いはず。探してみて、お友達にも教えてあげてください!


おわりに。テクニック論を読むのも大切ですが、それだけだとまだ山登りの3合目です。
それを検証し、実践することで初めて皆さん自身の力になります。
参考になりそうなテクニックを見つけたら、自分の好きな複数の漫画でそのテクニックを照らし合わせてみる【検証・実感】、そして自身の漫画に落とし込んで漫画を描く【実践】まで行って初めて価値が生まれます

最高の漫画を生み出すのはあなた自身の頭と手です!

ジャンプルーキーの読者と編集部は24時間あなたの漫画をお待ちしております!




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【第67回】『さっちゃん、僕は。』の作者・朝賀庵先生はルーキー出身! 繊細な心理描写と魅力的なキャラクター作りの秘訣とは?

異色の恋愛マンガ『さっちゃん、僕は。』の作者・朝賀庵先生はルーキー出身!
繊細な心理描写と魅力的なキャラクター作りの秘訣とは?

はじめまして! ジャンプ+編集部1年目、新人のF田です。初めての編集部ブログにドキドキしておりますが、よろしくお願いします。
突然ですが、皆さん、さっちゃん、僕は。という漫画をご存じですか?

ジャンプ+で連載されている異色の恋愛マンガ『さっちゃん、僕は。』。「クズ」と評される主人公が繰り広げる歪んだ恋愛模様が描かれ、繊細な心理描写と危うくも魅力的なキャラクターが評判です。
作者・朝賀庵先生はまだ21歳。ルーキーに投稿してから1年半で、ジャンプ+での連載を開始しました。今回は朝賀先生、そして担当編集のTさんに、作品作りにあたって心がけていることや、新人時代の心構えについてお聞きしました!

***

<Q:朝賀先生ってどんな方?>

――いつから漫画を描き始めましたか?

昔から絵を描くことは好きだったんですけど、ちゃんと漫画を描き始めたのは高校からだと思います。そのあたりに画材を集め出して、原稿用紙にGペンで漫画を描き始めました。

――なるほど。今までどんな作品に影響を受けてこられましたか?

そうですね、一番最初に触れたのは、ちゃお。絵柄とかはそこから影響を受けたのかなと思うんですけど。

――まさかのちゃおっ子!当時ちゃおで好きだった作品は何ですか?

きらりん☆レボリューション』…あとはもりちかこ先生が好きでしたね。それから、中学生になったらジャンプなどの少年向け作品を読むようになって。『家庭教師ヒットマンREBORN!』とか、『黒子のバスケ』も好きでしたね。

――ちゃおから少年漫画へということですね。

そうですね。

――Tさんが朝賀先生と出会った時の印象はどのようなものだったんですか?

お若い時に北海道の出張編集部で出会ってて、その時は19歳。そこから1年半で連載やって、という感じだったんですけど、当時から年齢にそぐわない大人っぽいものを描く人だなっていう印象でしたね。センスとしては女性向けの雑誌の方が向いているんですけれども、僕は一緒に仕事したいなあと思って、頑張った記憶があります。

――朝賀先生はなぜジャンプ+に?少女誌や女性誌の方で描こうとは思わなかったんでしょうか?

うーん、出張編集部に女性誌の方がいなかったのと、自分がどこで書けばわからないという状況だったので…。とりあえず、自分と一緒に作品を作ってくれる人と作ってみたいという気持ちの方が大きかったですね。


<Q:朝賀先生の作品作りについて>

――危うくて目が離せない魅力的なキャラクターたち。どんな風に生み出されているのですか?

色んな人の恋愛観を聞いたり、自分の考え方と擦り合わせたりして、生まれることが多いですかね。

――恋愛観!どの年代の方に聞いているのですか?

同年代の友人ですね。Tさんとも、打合せで恋バナをしましたね。


しましたね、恋バナ。


自分が人間関係で間違えた部分をキャラクターに受け継がせてしまっている部分も、多いかなと思います。

――朝賀先生の小さな間違いが色んなキャラクターに入っているようなイメージでしょうか?

そうですね、間違えまくりですね(笑)

――繊細な心理描写が評判ですが、どのようなことを意識されていますか?

自分にない考え方をするキャラクターの心情について考えるときは、少しでも自分にリンクする感情を見つけて、そこから膨らませるようにしていますね。うーん、最近だと紫乃さんですかね。話し合えばすぐに解決するのに、悩んで本人には伝えられずに遠回りしてしまう。あとは…恋愛じゃなくても、自分の中で友情、友達関係などに置き換えるようなことはあったかなと思います。


<Q:異色連載『さっちゃん、僕は。』の裏側について>

――『さっちゃん、僕は。』を書き始めた経緯はどのようなものだったのでしょうか?

Tさんから、「浮気」「女の嫉妬」「毒親」「カルト宗教」のどれかで読切を書いてみませんかという提案をいただいたことがきっかけですね(笑)

――濃いですね…(笑)Tさんはなぜそのテーマを提案したのですか?

朝賀さんに関しては、いわゆるジャンプ系のセンスとは違う方だと思っていました。逆にその異色さがジャンプ+に載ることで目立つだろうと考えて、浮気や不倫などウェブ漫画で売れるようなものを描いてほしいと思っていました。そしたら朝賀先生もドロドロ系がお好きだったというね。
そうですね(笑)

――朝賀先生はこの提案を受けてどう思いましたか?

ジャンプは、「友情・努力・勝利」の、夢がいっぱいの王道少年漫画というイメージでした。ジャンプでそんなものを描いていいのかなって思いました。びっくりしました(笑)

――そうですよね(笑)今までジャンプになかったジャンルを描くうえで、意気込みや意識したことってありますか?

意識したこと…応援をされづらい異質な感じの存在になるだろうなってことは最初から分かっていたので、覚悟はいるのかなと思いましたね。


京くんはまさにそうでしたよね。しかも当初の話だと、もうちょっと京くんがひどい人になりそうな展開があったんですよね、朝賀さん。


そうですね、ありましたね(笑)



コメント欄で叩かれている京くんが、そこから先に行けたらいいなって思っていて。過ちを犯してしまったその先に何があるのかっていうことを、朝賀さんがどう見せてくれるのか楽しみです。物語は終盤に入っているんですけど、打合せでラストのアイデアを聞いた時にえーって言っちゃったからね。そんなこと想像もしてなかったんですけど、みたいな。頑張ってください。

――それは楽しみですね…!

ふふ、頑張ります、最後まで。

――『さっちゃん、僕は。』のように、今までジャンプに無かった作品が掲載される意味って何だと思いますか?

ジャンプ+の幅が広がることだと思います。ジャンプ+からこういう作家さんもデビューするんだ!っていうのがやりたかったんです、編集者としては。朝賀さんがいることで、ジャンプルーキー!の幅が広がっていることも確実にあると思うんですよね。それは絶対成功していると思う。


<Q:終わりに>

――これから漫画を描く人、ジャンプルーキー!に投稿する人にコメントをお願いします。

うーん、自分が専門学校に通っていて強く思ったのは、どんなに絵がうまく描ける人でも、作品を完成させないとスタートラインにすら立てないということ。自分が未熟で、実力が足りてないことを受け止めて、どんどん漫画を描いて完成させることが大事です。いろんな人に、恥ずかしがらずに見てもらうことが大切なのかなと思います。
自分がジャンプ+のブースに持ち込んだのも、何も深く考えずに、ただいろんな人の意見を聞いてみたいと思ったからです。絶対ジャンプ+に持ち込む作品ではないと思いつつ、見せに行って今につながっているので、いろんな人に自分の作品を見てもらうというのはとても大事なことかなと思います。

――なるほど…。Tさんはいかがでしょうか?

朝賀さんは漫画を描くことにストレスがないというか、楽しくて描いているんだろうなっていうのが良く分かります。
描けば描くほど上手くなりますし、編集者が全て目を通しているのがジャンプルーキー!です。光るものがあればすぐに声を掛けさせていただきますので、これからも投稿してくださると嬉しいですね。

***

いかがでしたか?デビューを目指すにあたって、とにかく作品を完成させること、そして恥ずかしがらずに色んな人に見てもらうことの大切さがお分かりいただけたかと思います。
ジャンプルーキー!ならコメント&「いいジャン!」機能で読者の反応が丸わかり!編集者も全ての作品に目を通し、才能を感じたら即スカウトしています!皆さんのご投稿を今後もお待ちしています。
朝賀先生、Tさん、ありがとうございました!

今ならジャンプ+アプリで初回全話無料!


『さっちゃん、僕は。』コミックス3巻まで好評発売中!


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【第66回】担当作家 藤本タツキ先生Q&A!

皆様、お久しぶりです。
少年ジャンプ+の林士平です。

本ブログは、プロの漫画家を目指す方々に役立つであろう記事を編集部員で持ち回りで、書いております。

僕がこのブログで、過去に書いた記事は以下の2本です。

【第41回】漫画編集者が伝える、新人作家への最初の課題
【第48回】漫画家と担当編集者の出会いの全7パターン詳細説明と、良い点・悪い点

新人作家さんに一番最初に伝える課題と、担当になるきっかけ・出会い方を書きました。

出会って打合せを始めますと、必ずやること、言うことは特にないです。
各作家によって、何を伸ばすべきか、どういう考え方を持つべきか、は違います。
描きたいもの、描けるもの等、作家さんと担当編集で、コミュニケーションをしながら、人によって伝えること、アドバイス、考えてもらう題材等は、変えています。

なので、自分へのアドバイスが欲しい方は、まずご自身が描かれた最新作の持ち込みをするのが一番良いのです。

って言うとブログに書くことがなくなってしまうので、ちょっとでも多くの作家さん達に参考になることはないか、悩んだので、「そうだ作家に聞こう!」という思いに至りました。
(前フリ長くて申し訳ないです。)

本日は、担当作家、藤本タツキ先生へのQ&Aを通して、現役のプロの作家の制作方法や編集者との向き合い方、考え方等、1つのパターンとして、参考にして頂ければ幸いです。

僕が、藤本タツキ先生との出会ったキッカケは、彼が17歳の頃の月例の漫画賞への投稿作品『庭には二羽ニワトリがいた。』でした。
最終候補で、若手から担当希望を指名できる制度だったので、僕の指名ターンで、17歳という若さと、常識をはみ出るときに、滲む“熱量”に可能性を感じて、担当にならせていただきました。確か2011年12月だったはずです。

担当になって、次は受賞を目指そうということで、打合せが始まりました。
最初は、藤本先生が、地方在住だったこともあり、基本はメールと電話でした。

久々にメールを見返していて、面白かったのですが、担当になった翌月くらいの2012年1月1日の元旦の1時42分に受け取ったメールが↓になります。

あけましておめでとうございます
ネームができました
タイトルは「勇者制度」から変更して「勇者の剣」です
ネームに矛盾や意味がわからない部分が絶対あります。すいません
ないかもしれないです
(文章・改行箇所等ママ)

元旦になって、すぐに完成したネームを送ってくる、随分とやる気に溢れた作家だな、という記憶があります。

担当して約8年、上記のように全部を詳細に語ることはできないので(記事導入で、既に何字書いちゃったのか…)
今回は、色々な作品をご一緒してきた藤本タツキ先生に新人作家が気になるであろうことを、Q&Aで聞かせてもらいました。

僕が考えた質問と、読者の皆様から頂いた質問に答えていただいたので、以下に書かせてもらいます。

***

本日はルーキーブログのためにお時間ありがとうございます!
早速質問させていただきますね。

はい、何でも聞いてください。
 

Q.使っている道具の変遷を教えて下さい。

最初は板タブで描いていた。
中3で購入しました。投稿作までは板タブで描いてました。
『佐々木くん銃弾止めた』までは板タブでした。その賞金で、液晶タブレットを購入しました。
読切『恋は盲目』の時からは液タブで執筆するようになりました。
それ以降ずっとWacomの液タブで執筆しています。

Q.アナログの画材の使用経験等伺えれば。

新人作家さんに聞かれるのですが、やはりアナログでの作画経験は必要なのでしょうか?
藤本さんが、美大の油絵科卒なので伺えれば。

人によるとは思いますが、必須ではないと思います。
 

僕は、新人作家からの「絵が上手くなるためにはどうすれば良いですか?」の質問に対しては「美術的な基礎トレーニングを地道に」「目で覚えて模写してください」と伝えております。

デッサンは写真を見てやるより、実物を見たほうが効果的だって言われてますけど、デジタルとアナログで差異があるとは思わないですね。アナログの画材じゃなきゃいけない理由はないとは思います。
一番よくないのは、画力が成長しないこと。画力が動かなくなったら、刺激のためにアナログでの練習はアリかもしれないですが、モチーフを変えたり、描き方を変えてみるのも良いと思います。

自分の絵が上手くなっているかどうか、どう客観視すればよいのでしょうか?
 

担当編集に聞くか、絵を描く友人に聞くのが良いと思います。
忌憚のない意見を言ってくれる人が身近にいると助かると思います。
ネットに絵をUPしても、良い意見をくれる人があまり多くないとは思うので。
実際の人に意見をもらったほうが良いです。美術系の学校に行く、最大のメリットは、絵に関して、意見を言い合える友人をつくりやすいことかもしれないです。

持ち込みに来て頂ければ、新人作家さんの絵、編集者が丁寧に意見を伝えます!


Q.漫画を書き始めたキッカケは?

最初から漫画が好きだったので。落書きでも描いてましたし、特別な決心の瞬間、みたいなのはなかったです。


Q 自分自身どんな新人作家だったか?

分からないです。林さん僕、どんなでしたか?笑
 

沢山描く作家さんだったなと。荒くても気にせず作品を送ってくる人、というイメージでした。
セルフボツを続けて、中々作品を送ってこない人のほうが多いので…。

それは勿体ないですね。描いたら送ってみて、担当さんの意見を聞いてみる、というのも大事だとは思います。丁寧で客観的な意見が聞けるので。

Q.今の自分が、あの時代に戻れたら何を重要視するか?

デッサンをしますね。学生時代は、クロッキーしかしていなかったので。
もっとデッサンをしっかりやっておけば、と今は思っています。

Q.編集者と打合せしてて、役に立ったことは?

漫画を買ってもらえたり、小説や資料を色々もらえたことです。
超大切だと思います。若い頃はお金ないから。凄く助かった記憶があります。

Q.編集部の利用の仕方とは?

さっき言った絵やネームを見て、客観視した意見をもらうことと、自分が観たほうがいい資料を買って貰えることです!

Q.新人作家は何を気をつけて日々過ごすべきか?

沢山の創作物に触れることは、ずっと大事だと思います。
 

Q.ネームや物語作りが成長するために、必要なことは?

なんなんでしょうね…難しいですね。
 

藤本さん、確実に昔より上手くなっているはずですが。
 

本当ですか。
 

だって沢山のボツを重ねた、長い時間を考えたら…。
 

う〜〜ん、一杯、作品を観ることで変われたんですかね。
 

何を観て、どこで変わった、成長したって実感あります?
 

多分、どこで変わったか分からないくらい、多くの作品を観たからな気がします。
 

担当としては、確実に変わったな、と思う瞬間は読切の『予言のナユタ』の前後だった気がします。それまでは、結構ボツが多かった気がするので。

確かに、ずっとボツはありましたね。
 

ナユタ以降は、随分ボツにすることが減ったな、という印象です。
 

あーそうですね。コツ掴んだ感じは確かにありました。
自分の好きな作品、好きなシーンを、上手く自分なりに取り込んで漫画に描けるようになったのかもしれないです。自分でも、何故かは分からないですが。

読切の『かみひこうき』『人魚ラプソディ』を描いている頃は、メッチャ面白い訳ではないけど、物語の形になったから、賞に、コンペに回そうって感じだった記憶があります。でも『予言のナユタ』からは「藤本タツキらしさ」が毎作品しっかり込められるようになった、成長したなって記憶があります。この、変わった、成長したって瞬間が沢山あれば、プロの作家になれるのでは。
新人作家さんはこの「成長」の瞬間をめっちゃ追い求めていると思います。

自分らしさを見つけられたってことですかね。
「作家性」ってその人の「これやったら面白いロジック」のことを言うと思うんですよ。
それを見つければ良いんだと思います。
明確なキッカケはないですが、色々な作品に触れて、それを徐々に見つけていったのかな、と思います。

一定量以上の作品の知識と、気付きが溜まった瞬間、あるレベルが超えたら、「成長」できると。
 

はい。
 

僕、『極道めし』の土山しげる先生の作品が好きで、殆どの作品を読ませてもらっているのですが、お金持ちになって食べる豪華なご飯より、家族の味が美味しいよね、慣れしたんだ料理が美味しいよね、という形のドラマを良く描かれていらっしゃるんです。それが、この先生の「これを描いたら面白いパターン」で、実際に毎回、面白いんです。それが「作家性」なんだと思っています。

確かに。藤本さんの『ファイアパンチ』と『チェンソーマン』僕は、根底が近いと思っています。
 

両方とも、自分の「これやったら面白い」を込めているので、近いんだと思います。
 


Q.新人が読んだら良いと思う、本・漫画は?

無限大にあります(笑)僕の好きなものだと、少しマニアックになってしまうかも。
自分は、少し変わっているものを好きだってことも、自分では理解しているので。

例えば、シナリオ術とか、脚本術とか、そのような参考書は?
 

覚えておくくらいでよくて、その方法を再現しようとするのは、どうかな、と思っています。
 

知らないよりは知ったほうがいいな、と僕は思っています。
 

それはそうですね。知っていて損をすることはないと思います。
 

僕が良く新人作家に言うのは、映画でも小説でも、「名作」と言われるものは時間の許す限り摂取していきましょう、と言っていますが。

あ、それは絶対正しいですね。沢山観るの大事だと思います。

<読者からの質問項目>

パーピー@parpie_fi さんより
Q. 悪魔や魔人のデザインはどのようにして思いつくんですか?(類似質問多数)

自分の好きなデザインをずっと集めています。映画やゲームのキャラデザとか。そういう3〜4つ複合してデザインしています。

スクラップブックとかに集めているんですかね?
 

ネットで見つけたカッコいい絵や写真は保存してますね。
勿論、画集も買います。例えば、最近ですと『ヘルボーイ』とか、『アート オブ アリス マッドネス リターンズ』とかの画集がセールしていたので買いました。カッコいいなって思ったデザインはずっと集めています。

空目晴彦 haruhiko utsume@el_psy_congro さんより
Q. チェンソーマン第57話「突然」のネームを作成する際どういった心構えで挑んだのでしょうか?

打ち合わせの時に、衝撃のシーンは聞いていなかったですよね。
 

だってあのシーン言ったら…衝撃も減るので。
 

打合せの時に意図して言わない、ネームで描くから読んで欲しいって仰ることよくありますしね。
 

他の話数と、同じ作り方でした。
 

りこてんの異常な愛情@Licolly105 さんより
Q. どんなペン設定で描いてるのか気になります。 あと会話がすごくリアルな感じがするんですがどうやって考えているんですか。

液タブは、全部初期設定で、何もいじっていません。
 

会話はなるべく説明に無理やりもっていこうとしないくらい、ですかね。
 

紫鈴@shirinraka さんより
Q. キャラを作る際、大まかに設定を考えるのか、細かく(例えば履歴書を作るみたいに)設定を考えているのか、どちらが近いでしょうか?どちらも近くなければキャラの作成の仕方を伺いたいです。

全然作っていないですね。
 

何となく頭の中にキャラがいて、それを描きながら形作っているイメージですかね。
 

はい、そうですね。
 

manga@sick@manga_sickshock さんより
Q. 作品に現実の出来事を反映させることはありますか?例えば銃の悪魔は世界で起きる銃乱射事件がモチーフだったりするんでしょうか⁉︎

ないですね。
 

現実の明確な出来事ではないですが、現実の空気感は拾っていますよね。
 

それはあると思います。ただ、あまりにもタイムリーな事件はモチーフにはしていません。
 

ペテロ2号機@peter666monster さんより
Q. 少年時代に読んでた漫画、好きな漫画を教えて欲しいです

自由人HERO』が好きでした。
 

おぉ、柴田亜美先生! 1年目に担当させていただきました。エネルギッシュで素晴らしい先生です。


あと『ドラゴンドライブ』も。子供をワクワクさせていた作品だと思います。
アライブ-最終進化的少年-』も凄く好きでした。

ナム子@YonMirudakedayo さんより
Q. 人気投票では女性キャラクターの人気が圧倒的でしたが、魅力的な女子を描くに当たって心掛けている事はありますか?(※キャラをどう作っているかという質問多数)

僕の好きな女の子を描いています。
 

作家さんの好きが詰まっているキャラは、良い表情、良い絵が上がってくることが多いので納得です。


日々丁寧に生きる欲まみれの化け物@taispeed さんより
Q. どうしたら、みんなの想像できるものの、さらに向こう側のことが想像できますか。

どうしたら描けるんですかねぇ?(笑)
 

よく「意外な展開」って言われる作風ではあると思います。
 

そうですね。
 

意外なことやりたいから、意外な展開になっている訳ではないと思いますが。
 

多分、沢山映画を観て、漫画を読んでいると、絶対このあと、こうなる!って展開がありますよね。それだけは絶対避けよう、って思っているからかもしれないです。

それは大事な考え方だと思います。驚きは大事ですから。
 

『ゲーム・オブ・スローンズ』は本当に凄かったですよね。
 

あれは本当に驚きの連続でしたね。
 

シャウアプフ@q6pNcYi5BcplUVh さんより
Q. ストーリー・テーマ・キャラ等、漫画を作る上でまず何から決めますか? また、漫画で一番重要なのは何だと思いますか?(理由も教えてほしいです)

僕はテーマですね。
 

テーマ決めて、キャラとストーリーに落とし込む感じですかね。
例えば読切『妹の姉』のテーマは?

「兄弟姉妹に対して”悪い意味”で離れられない」ですね。
創作物では兄弟姉妹の関係性って、良いものとして描いてあることが多いですが、殆どの人が悪い部分の方を大きく体験しているんじゃないか、って思っていて。

最終的にはハッピーエンドのようにも捉えられるかもしれないですが…
 

姉が絵をやめているのに、才能溢れる妹が家に描きに来るんですよ。
 

それは…嫌ですね(笑)
 

嫌ですよね、油絵って凄く臭いし。
 

ぴ@pppppusapppp さんより
Q. 人間への洞察の深さに憧れています。 キャラ表情や感情や何気ない仕草、吐く言葉すべてにその人らしさを感じます。 ”マジ感”のストックはどのように増やしていますか? 人と触れ合うときにどういう点を見ていますか?

子供の頃から貯蓄したものをずっと使っているんだと思います。
 

今まで周りの人間を、しっかり観察してきたってことですね。確かに打合せで良く、藤本さんが見聞きした、人の表情や、反応の話が出てくるので、かなり観察していらっしゃるのかな、と思います。

ぷー@sVMzfo88t8CdW38 さんより
Q. 担当の林さんとの印象的なエピソードがあったら聞きたいです。

林さんが、『ファイアパンチ』の連載直前にTwitterで、「ながやまこはる」アカウントを見つけてきて「藤本くんの関係者を騙っている人がいるから、警告してやめないなら、訴えようと思っている」って言ってきて…

覚えている…!藤本くんに早くもヤバいファンがいる、訴えなきゃって言った記憶が。
 

あーどうしようって思って「それ僕です」って言ったら、林さんが凄くびっくりしていて…。
かなり狼狽していて、僕を畏れているような感じの表情を林さんがしていました(笑)

めちゃくちゃ動揺した記憶がありますよ笑。
何で?どうして?何のために?って思ったからね。

ぴ@pppppusapppp さんより
Q. 漫画、映画以外に普段どんな情報に触れていますか? 新しいのに好きになってしまう、古くないのに親しみやすいキャラデザに心を動かされてばかりです。 源泉を知りたいです。

う〜〜ん、ヤフーニュースとかのTOP NEWSくらいですかね。ゲームもしませんし。
ずっと好きな映画を流しっぱなしです。基本は映画と漫画です。

◆▽リょウ▲◇@ryo2000_0629 さんより
Q. 「漫画で使える画力を上げよう!」そう思った時、先生なら今までどんな事に取り組んでいましたか?

デッサンです。ひたすらデッサンです。
 

ぴ@pppppusapppp さんより
Q. 先生の大胆な色遣いが楽しくて見るたびに嬉しいです。色を決めるときに何を考えているのか知りたいです。

感覚で塗ってはいるのですが。
 

赤とか茶色が好きです。油絵の時によく使っていました。安いんですよ絵の具が。
赤系は、土から作られているから、安いんです。

今はデジタルでの彩色だから画材の値段関係ないのに(笑)
でも印象としては、寒色のカラーも描かれることが多いと思っていますが。

意識して描いてますね。好きな風に塗ってたら、赤ばっかりになっちゃうので。
 

ぴ@pppppusapppp さんより
Q. 一枚絵も一つ一つのコマも構図が素敵で惚れ惚れします。 一枚絵と漫画で気をつけるポイントが違うと思うのですが、それを知りたいです。

チェンソーマンに関しては止めの絵を沢山使いたいなと思っていて、決めゴマはしっかり止めて、それ以外は動きのある絵にしようと、連載描き始める時から決めてました。
沙村広明さんの『無限の住人』が凄くカッコよかったので、意識していると思います。

雨雲@rainydayafter0 さんより
Q. 先生はいつも予想の斜め上の展開を用意されていますが、 そのギリギリのラインの見極めというのは、論理的に構築されているのでしょうか。 それとも感覚でしょうか?

感覚です。どうやって論理的に構築できるのか、逆に知りたいです。
 

沢山の作品を観て、予想される展開をやらないって考え方は、もしかしたら、論理的なのかも、とは思いますが。
 

論理的な部分もありますが、全体としては、かなり感覚で描いている感じではあります。
 

こより@apple_Grnd00 さんより
Q. 大胆で個性的かつ絵画的なシーンの多いチェンソーマンが大好きで。特に闇の悪魔の登場シーンや空からでてきた大きな手がタンポポを毟るシーンが大好きなのですが、何を見て生活をすればこのような息を飲む美しいシーンが思いつくのでしょうか。

観ているのが基本、漫画と映画だけなので、そこからだと思います。
 

あいいちろう@I1low さんより
Q. ネームの作り方、特にネームの修正方法が知りたいです。 どこをどう直せばいいかわからないときになにをポイントにしてネームを修正しているのかを教えて頂けたら嬉しいです、、、、!!

チェンソーマンはそんなネームの修正ないですね。
 

セリフ・シーンの分かりにくさ、くらいですかね。すぐに直してくれますしね。
 

もしネームで、修正方法や方向が見えないのであれば、「直し方」というより、もっと根本な気がします。
 

そのネームで何を描きたいか、を考え直すってことですかね。
 

キャラが間違っている可能性も、企画が間違っている可能性もあります。
大元をしっかり考え直す必要があると思います。

KSMNK@Pomanpi さんより
Q. プロット書いてますか?ネームぶっつけですか?

プロット書いてます。
最初は文字だけで、描きたいことやシーンの繋ぎ方のアイデアを描いていきます。
次の段階では、セリフを全部書きだしてプロットにします。
その後に、絵でどう見せるか、を考えながらネームを描いています。

ネームぶっつけのときもあるかな、と思っていましたが。
 

ぶっつけはないですね。チェンソーマンは、全部この形で制作しています。
 

Q.今後の新人作家へのメッセージ。

Netflixに登録するといいと思います!
 

沢山映画を観たほうがよいってことですね。
 

本日はありがとうございました!
 

@2020年6月17日 都内某所 喫茶店個室にて。


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【第65回】どうやって勉強すればいい?~映画から学ぼう~

◆はじめに
皆さんこんにちは。ジャンプ+編集の高橋です。
漫画を作るための方法やストーリーの組み立てかたなどはネットや本にもありますが、意外とどうやって勉強したらいいのか分からないという話をよく聞きます。
そこで、今回は私が実践している映画を使った勉強方法をお伝えできればと思います。
あくまで今までの経験上のものなので、一つの方法として参考にしていただけますと幸いです。

ちなみに、なぜ映画かというと、漫画と映画は似ているからです。
編集部の先輩にも、
「映画はたくさんのプロによって作られるけれど、漫画家は映画を1人でこなすようなもの」
と言われますが、私もその通りだと思っており、担当の漫画家さんにも良く同じことを伝えます。
もちろん映像と紙では表現方法が違うので100%同じではないですが、ストーリーの組み立て方やキャラクターの出し方などかなり参考になります。
漫画だけを読むのでなく、映画(や他の芸術・エンタメなど)から学んでみると、思ってもいなかった視点や方法を思いつき表現の幅が拡がる手伝いとなります。私もそうでした。
機会を見つけてチャレンジしてみてください!
(以下、ちょっと長いので時間あるときに見てください)


◆映画「ズートピア」で見る組み立て方
具体的に説明する資料として今回選んだのは、ディズニー映画『ズートピア』です(アナ雪と迷いましたが、これは動物が好きという私の趣味に走ります)。
ディズニー映画作品はどれも構成がハリウッド映画のお手本のようにシンプルな【3部構成】になっています。そのため初心者でも分析がしやすく、漫画に役立てるのに持ってこいです。
特に『ズートピア』はいわゆる【バディもの】と言われるもので、青春・バトル・ミステリーなどなど様々なジャンルに使えます。なのでぜひ今回の分析をもとに、漫画でもやってみてください。最初は読切をやることからお勧めします。


◆3部構成とは?
スバリ!映画的には以下の3つを指します。
・セットアップ(設定)
・ディベロップメント(展開)
・レゾリューション(解決)

人によってはビギニング・ミドル・エンドと言ったりもします。ネットでもよく見かける3部構成ですが、あまりにもざっくりすぎてわからない!という人が多いと思いますので、具体的に分けていくとどうなるかをまとめます。
<セットアップ>
 1 オープニング・イメージ
 2 テーマの提示
 3 セットアップ
 4 きっかけ
 5 悩みのとき
<ディベロップメント>
 6 第一ターニングポイント
 7 サブプロット
 8 お楽しみ
 9 ミッド・ポイント
 10 迫りくる悪い奴ら
 11 全てを失って
 12 心の暗闇
 13 第二ターニングポイント
<レゾリューション>
 14フィナーレ
 15 ファイナル・イメージ
と細かく分けることができます。
(人によっては第二ターニングポイントがレゾリューションと言う人もいるかもですが、私はここまではミッドだと思っているので上記でお伝えしますね)
こちらの分け方は脚本術を大変わかり易くまとめた『SAVE THE CATの法則』という本を参考にしています。興味のある方はぜひご一読ください!

『SAVE THE CATの法則』


◆具体的に映画に当てはめてみよう!
じゃあ、実際にストーリーに物語に当てはめていくとどうなるのか?となりますね。
そこでいよいよ『ズートピア』の出番です。具体例があるだけで、自分のオリジナルストーリーを作る時に、見本として比べながら作ることができます。物語は違ったとしても、基礎の一つにできると思いますので、ご参考になさってください。

<セットアップ>
 1 オープニング・イメージ
世界観、舞台の説明です。ズートピアでは主人公・ジュディが幼い頃の舞台演劇という形で、この世界は草食動物と肉食動物がおり、進化を果たして共に手を取り合い夢を追いかけることができるようになったと説明しています。そして、その理想郷「ズートピア」であるとしっかり観客に提示しているのです。
 2 テーマの提示
ジュディは演劇で「そして、私は警察官になるの!」と堂々と叫びます。しかし周囲の様子から草食動物でもか弱くフワフワな可愛いうさちゃんが警察官になるのは困難で前例のないことだと分かります。同郷の肉食獣・狐のギデオンから馬鹿にされてしまう…けれどジュディは諦めず「夢」を叶えることを誓うのです。パッと見るとテーマは「夢」を叶える話か…?と思いますが、ここがさすがディズニー。夢を叶えるだけでなく、このジュディとギデオンを使って、現実の縮図「草食は肉食に怯え、肉食は草食を喰らう本能がある」というのも同時に見せることで、この後に起こる事件やテーマを部分的に見せているのです。
 3 セットアップ
そして、いよいよ物語の本番にして重要な部分。ここでは主人公の目的・理由が再度語られ、物語のテーマを提示します。「ズートピア」では月日は経ち、ジュディは念願だった警察学校へ入学し、最初は他の大型動物に見下されますが、知恵を働かせ持っているウサギとしての身体能力を生かし、見事【初のウサギ警察官】となります。
また、物語を動かす理由も同時に見せます。ジュディは憧れのズートピアへ配属!ジュディは夢を叶えるのです。そしていよいよ舞台はズートピアへ!ここから物語のスタート地点とばかりにオープニング音楽と映像が流れます。(漫画なら扉絵などでもいいかもしれませんね)
 4 きっかけ
ジュディは理想と希望を胸に警察官としての第一歩を踏み出しますが、そこには現実という壁があります。彼女を待っていたのは「小さいうさちゃんに何ができるのか」という大型動物たちからの見下し。警察学校と同じく知恵と機転を利かせればいい…と思いどんなに頑張っても報われず、任される仕事は自動車違反切符を切るだけ。ジュディの思っていた刺激的で理想的な警官らしい事件「肉食獣行方不明事件」があるにもかかわらず、情報すらも共有してもらえず、ジュディは初日から悔しい思いを味わいます。主人公は理想と現実のギャップを何度も突きつけられるのです。
 5 悩みのとき
そんな時、ジュディは後に相棒となる狐のニックと出会うのです。彼に騙され最悪の出会いを果たしたジュディはニックから現実を突きつけられます。「ズートピアに来るやつは何にでもなれると思っているが自分を変えられない」と。ジュディは理想と現実の間で悩み、もがくことでストーリー上の問題を提示します。

<ディベロップメント>
 6 第一ターニングポイント
落ち込んでいる時、泥棒を追うことに!これぞジュディが待っていた警察官らしい仕事とばかりに張り切ります。しかし、犯人を無事に逮捕したにも関わらず、街を困らせたジュディを署長は厄介者としてしか扱いません。そこへさらなる事件が…行方不明者のカワウソの妻が夫を探してと訴えてきます。ジュディは勝手にも探すと約束し、羊のヴェルウェザー副市長の助けもあって48時間の期限付きで事件を追うことを許されます。警察官という自身の夢をかけて…いよいよ物語は勢いを増し、観客を楽しませるアクションが開始されるところになります。ここをいかにワクワクさせられるか…腕の見せ所となります。
 7 サブプロット
ここで事件を追う手助けをさせるためにニックと手を組むことに。2人の関係はお互いに「気に食わない奴」というスタート。バディもののお約束!嫌いな奴と組むことになるのです。観客へ2人が深い関係になることをしっかり予感させています。ここでのやり取りは後の方でも2人の会話のテンポや関係性に大きく影響を与えるので、どういうバディにしたいのかを考えながら入れることをお勧めします。
 8 お楽しみ
ここからはジュディとニックのお互いの駆け引き!ニックはあの手この手でジュディの邪魔をします。2人は嫌味の応酬を繰り返しながらも事件を追いかけます。ジュディとニックは少しずつお互いのことを知っていき、ジュディによってニックは助けられ、関係が前進するのです。(漫画だとコメディパートになるような抜け部分となって読者を緊張感から解き放ち、より物語を気軽に楽しむきっかけとなります)
 9 ミッド・ポイント
ミスタービッグというマフィアのボスにより、カワウソ探しの大きな手がかりを得ることに。そこで肉食獣が理性を失くし野生化をしてしまう姿を目撃し、ただの行方不明時間ではないことを知ります。ここが物語の中間地点で前半と比べると物語が大きく転換する箇所となります。前半と比べていかにギャップを見せられるかが大事になってきます。
 10 迫りくる悪い奴ら
ミッドポイントで一つ真相に近づいたら、野生化した肉食獣に襲われるジュディとニック!取り逃してしまったジュディは警官をやめろと迫られますが、ここでニックがジュディを助けることで、2人は仲間らしくなります。そして、事件をさらに進めるきっかけを掴んでいきます。ここではしっかりとバディとしてのお互いの形が見えてきて、ジュディとニックはお互いの得意分野で助け合いながら真相を追う形で関係をしっかり築いていきます。(漫画では一番楽しめるキャラの関係性の変化なので、丁寧にしっかり描いていくことをおすすめます)
 11 全てを失って
ジュディとニックは野生化した行方不明者を見つけ、さらに犯人を見つけたことにより、ジュディは警察官として認められることに。けれど、その結果「肉食獣は危険」という恐怖を市民に植えつけてしまい、ジュディは相棒であったニックの信頼を壊してしまうことに。警察官の理想を追い求めて大切な相棒を失ったジュディは、警官バッチをそっと置いて立ち去ります。物語で一番大きな挫折となり観客をハラハラさせる部分。次の読者へのワクワクへとつなげるために上手くいれる必要があります。
 12 心の暗闇
ジュディは実家へ戻り、自分の甘さを認め悩む。「罪のない肉食獣を追い詰めてしまった…」と。けれど、ジュディを救ってくれたのは、幼なじみの狐・ギデオン。両親とギデオンは草食獣と肉食獣でお互いに手を取り合って生活をしていました。ここで、ジュディは迷いを振り払い自分と向き合い、そして真の意味で夢を諦めず、どんな困難にも立ち向かうと決意するのです。このシーンこそテーマを伝えるための必要なステップです。(漫画なら読者に主人公を本当の意味で応援したいと思わせる大切な葛藤シーンです)
 13 第二ターニングポイント
ジュディは実家で肉食獣の野生化の鍵を見つけます。その事件解決の鍵を握って再びニックとバディを組んで事件の真相へと近づいていく!ここが作品の一番盛り上がるところ!アクションも今までの中で一番ド派手に!そして、事件の真相は意外な動物の罠だったことが分かます。ここで物語全体の真相と共に真のバディと2人はなるのです。バディに関してはお約束通り心を通わせますが、さらなる真犯人が出てくる部分…漫画ではここがすごく重要で“いい意味での裏切り=想像を超えるどんでん返し”となる部分です。ここの面白さで漫画の読後感が全く変わってきます。ですので、大事に丁寧に。

<レゾリューション>
 14 フィナーレ
真犯人を捕まえ、ジュディは草食獣と肉食獣の壁を知り、お互いの問題点、ジュディ自身の問題点に気づき、諦めずに世界をより良くしようと誓います。
理想ばかりを追い求めたジュディは言います。ズートピアは理想郷ではない。困難がいろんなところにある。けれど、諦めない──「自分を知り、自分を見つめ、自分を変えることからはじまる」理想に近づくためには一人ひとりが変わり、みんなで手を取り合って作り上げていくことが必要なのだと。
まさに一番言いたかったこの作品のテーマを主人公は自覚し、言葉にして観客へ伝えるのです。主人公は最後まで葛藤し続け、そうして終わりでようやく一つの答えへと辿り着く…決して早くもなければ器用でもないけれど、だからこそ観客は等身大の自身と見比べてジュディへと共感し、主人公を応援しようと思えるのです。漫画と同じですね!
 15 ファイナル・イメージ
ジュディは真の相棒となった狐初の警察官となったニックと共に、様々な事件解決へと奔走するのでした。1人だったジュディはみんなに認められ、ニックと共に未来へと一歩を踏み出す──まさに大団円です。未来の2人の活躍を思う人もいれば、この後2人がどういう関係になっていくのか想い馳せる人もいたと思います。これほど続きを想像し易く、けれど無限に考えられる終わり方はそうそうありません。それほどまでに、観客を惹きつけ、世界をしっかりと理解させて、キャラクターへと心を入れさせられる…ディズニーの完璧な作りに感服します。

こうやって当てはめていくと、ディズニー映画がいかに脚本術に忠実で、シンプルな作りなのか分かると思います。しかしその分、キラリと光る設定、キャラクター、物語のいい意味での裏切りの上手さ…!まさにお手本にしたい部分がたくさんです。


◆最後に
最初にディズニーの映画作品にした理由を伝えましたが、もう一つ理由があります。
それは「いいものを作るためには何度だって納得いくまでやり直す勇気」が必要ということです。
今回『ズートピア』を使用させていただきましたが、この作品は今のストーリーになるまで400本以上の脚本を捨てています(ディズニーファンの間では有名ですね!)。
それは「面白くないから」というネガティブな行動ではなく、「もっと面白くなるのではないか?」と常に監督や脚本家、映画を作るスタッフ全てが自分たち自身に問いかけ続け、納得のいくものを作り上げるため、ポジティブに更新を繰り返した結果です。
だからこそ、ディズニーは年齢・性別・時代に関係なく面白い作品を常に作り続けられるのだと思います。
私は漫画も同じだと思っています。(さすがに400本を1人でこなすのは難しいですが)
一度自分が満足したとしても、冷静に振り返ってみると、その作品にはさらに良くなる可能性が秘められていることに気づきます。もちろん、漫画賞の〆切などの制約はありますが、出来る限りネタや設定、キャラ、ストーリー、構成、演出、ネームなど振り返って、様々なトライ&エラーを繰り返してみてください。きっと漫画家としてためになる気づきを得られるはずです。

終わりに…現在「次世代少年漫画賞」を募集しています。
ぜひ漫画家への第一歩の場としてご活用ください。