いつも「ジャンプルーキー!」へご投稿いただきありがとうございます。
少年ジャンプ+編集部のTと申します。
今回のブログは、「サウンドノベル・ビジュアルノベル」というジャンルについて紹介いたします。
どんな方も、漫画の企画を考えるうえで、既存の漫画やアニメ、映画など、様々なコンテンツを参考にするかと思います。
その中で、あまり認知はされていないが、参考になるのが、今回のテーマである「サウンド・ビジュアルノベル」です。
いわゆる「ノベルゲーム」と呼ばれるもので、選択肢を選んでエンディングが分岐するものが多いです。美少女ゲームなどで良く採用されているジャンルです!
元々、18禁ゲーム等から認知されてきたジャンルということもあり、ノベルゲームには、設定・キャラ・演出など、尖ったものが多く、アイデアの出し方や展開の作り方は参考になると思います。
今回は、その中でも特に漫画に生かすポイントがありそうな作品を3つ紹介したいと思います。
3作品ともSTEAMにて購入できます。もし気になったらプレイしてみてください!
数十年に渡る、滅亡に抗う人類の物語
BETAとは
[Beings of Extra-Terrestrial Origin and Adversaries of the Human Race = 人類に敵対的な地球外起源生命]
1958年に火星で初めて確認された未知の生命体である。
1967年の月面での接触から30年余りが経過した2001年、その侵略はとどまるところを知らず、人類は今、絶滅の危機に瀕していた。
世界各国はそれぞれの戦術思想に沿って戦術機開発を進めていたが、BETAの侵攻によってユーラシア大陸は陥落し、大陸沿岸を防衛線として食い止めているものの、その維持は限界に達しつつあった。
果たして人類は、”種の滅亡”から逃れることができるのか?
聞いたことのある方・影響を受けた方もいるかもしれません。
ごく普通の学生生活を送っていた主人公が、突然別の世界線に飛び、地球外生命体「BETA」と戦う物語。
特に注目したい点の一つ目が、先が気になる展開です。
マブラヴは、非常に長い作品ではあるのですが、エピソードごとの引きが上手く、常に先が気になる展開となっています。少しずつ出されていく情報、危機が去ったと思ったら、更なる危機が待っていた…と、畳みかけるように話が進んでいきます。
「北九州を初めとした日本海沿岸部に上陸した彼らは、1週間もしないうちに九州、四国、中国地方に侵攻……」
「ちなみにね、この地方を全て合わせると人口は当時4000万人いたの……わかる?」
武「は……はい……」
夕呼「そこに住む約4000万人の人々は…………どうなったと思う?」
武「……さ、さあ」
夕呼「犠牲者3600万人。ざっと当時の日本人口の30%ね」
武「…………」
夕呼「あなたの知る日本でそれだけの人間が1週間で死んだと想像していなさい」
「まあ、この時点で世界の60%以上が死んでるんだから、そのぐらい誰も驚きはしなかったんだけどね……」
武「え?」
夕呼「今現在、地球の総人口は10数億人よ」
読者を飽きさせないためには、どうストーリーを構成したらよいかの参考にしてみてください。
もう一つが、印象に残る場面・セリフです。
上記とも重なりますが、とにかくパンチの強いシーン・決め台詞が多いです。
主人公たちが最後の出撃をする前に、基地の司令官が演説をしてくれるのですが、とてもシビれます。
大地に眠る者達の声を聞け
海に果てた者達の声を聞け
空に散った者達の声を聞け
彼らの悲願に報いる刻が来た
そして今、若者達が旅立つ
鬼籍に入った輩と、我等の悲願を一身に背負い、孤立無援の敵地に赴こうとしているのだ
歴史が彼等に脚光を浴びせる事が無くとも
我等は刻みつけよう
名を明かす事すら許されぬ彼等の高潔を、我等の魂に刻み付けるのだ
旅立つ若者たちよ
諸君に戦う術しか教えられなかった我等を許すな
諸君を戦場に送り出す我等の無能を許すな
願わくば、諸君の挺身が、若者を戦場に送る事無き世の礎とならん事を」
他にも、ピンチのシーンでは、もうどうしようもないのでは?と思うくらいの状況にしたり、
丁寧な前振りから、主人公が成長するシーン、何かを決断するシーンをかっこよく描写するなど、演出方法も工夫があります。
ぜひ参考にしてみてください。
これは、世界と呼ばれた少女の物語
ビジュアルノベルのシステムを物語構造と密接に絡ませた純愛物語。
発売されるやいなやユーザーから圧倒的な高評価を集めた『白昼夢の青写真』がSteamに登場です。
この物語は一人の青年と少女の話。
ユーザーはまず、ランダムで始まる3つの物語をプレイすることになります。
本作は、全く過去の記憶がない主人公が、「夢」として3つの物語を体験していきます。そこでは全て同じ顔のヒロインがいる。なぜ自分には記憶がないのか、なぜ夢を見なければいけないのか…。
ほとんどが謎のまま話が進むのですが、その全てが伏線となっているのが特徴です。
「実はこれが真実なのではないか」「ここはこういう意味ではないか」と考えながら読み進められる構成は必見です。
そして、最初は普通の恋愛の物語なのですが、だんだんと壮大なSFとしての全体像が見えてきて、違う読み味になっていくのも面白いポイントです。
また、3つのストーリーとも、違うタイプのヒロインが登場するのも特徴かと思います。まっすぐで気が強かったり、天真爛漫だったりと…それぞれに個性があり、魅力があります。どうやって主人公と仲を深めて、どのようなドラマが生まれるのか、様々なパターンがあるので、参考にしてみてください。
みんな、普通の人間なんだ。
死んだ人間が蘇る。
古来よりそうした事例が多発する世界。
蘇った人間は、知性や記憶・認識力が衰え、コミュニケーションが困難となるばかりか、肉体も代謝が衰え、腐敗していく。
日本では彼らを「ひひる」「クサレ」などと呼び、かつては崇め、時代とともに忌避するようになっていった。
──やがて「ひひる」は医療の対象とされ、疾病として「風爛症」と名付けられる。
そして大正初期。
医学博士・加鳥周平は風爛症をとりまく環境や制度が諸外国に比べ遅れていることを嘆き、改善に向けての調査に取り組んでいた。
その調査に参加することとなった青年医師・千種正光。
本来は風爛症と関わるはずのなかった学生・天間武雄。
ふたりの視点を通して、「風爛症」と戦う人々の物語が描かれる──。
話題作を多く手掛けている瀬戸口廉也氏がシナリオを担当した作品です。本作、あらすじを読んだら想像できる通り、終始暗い!だけど面白い…!という作品です。
一般的に、暗い話というのは、それだけだと読み手にストレスを与えてしまうので、扱うのが難しいです。
特に「ヒラヒラヒヒル」では、風爛症という不治の病を題材にしているため、読んでいてしんどい場面も多いです。
ただ、そんな中でも前向きなキャラクターたちだったり、細かな描写力をベースとした、丁寧なドラマで、要所で読者の心を動かしてくれます。
物語の終盤に、主人公とヒロインとの、とあるエピソードがあるのですが、そこでの彼らの言動には、とても心を打たれます。必見です…!
この、根底にある圧倒的な描写力は、参考になります。どんなに暗い話だったとしても、演出次第で読者を感動させられる企画になるということをぜひ学んでください。
いかがだったでしょうか。
今回紹介した3作品以外にも、もっとぶっとんだ設定だったり、他にない読み味の作品が沢山あります。
企画を作っていて、違う切り口の話を考えたいときや、ストーリー作りに詰まってしまったときは、ぜひノベルゲームをプレイしてみてください。
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