「新人時代の松井優征先生が新作をなかなか持ってきてくれなくて……」
───── 新人編集者時代を思い出して、新人作家さんの“ためになる”ようなエピソードを教えてください。これまで、どんな先生方を担当をしてきましたか?
中野僕は最初は島袋光年先生で、次に久保帯人先生でした。初代担当として担当したのは松井優征先生や田村隆平先生、田中先生たちですね。
共通して言えるのは、担当した作家さんの家に行ったり、ファミレスでずっと打ち合わせをしたり、時には朝までお酒を飲んだり、寝食を共にではないけれど、それに近い時間、一緒にいるようにしたことです。
作家さんにとって編集者は、好きなように漫画を描けない邪魔な存在のように思われがちですが、作家さんの才能を導いていくためには、客観的な視点を持つ編集者が絶対に必要だと“「ジャンプ」グループ”は思っています。
担当との付き合いを嫌がらずに、作家さんが担当編集者を逆に“利用してほしいな”と思いますね。
持ち込みや打ち合わせの時には、ご飯を奢りますので(笑)。
細野は「ジャンプSQ.」時代、『テガミバチ』や『終わりのセラフ』を立ち上げていたよね?
細野そうだね。『終わりのセラフ』の鏡貴也先生は、人気シリーズをいくつも抱えていたにも関わらず、企画の段階から何度も何度も直しを持ってきてくれました。
後から聞かされたんですけど、「あんなにボツを出されたのは初めてです」って。
一概には言えませんが、ネームでもプロットでも、ボツばかり出されても、何度も何度も持ち込みにくる作家さんの方が、なかなか持ってきてくれない作家さんよりも連載に繋がることが多いと思いますね。
中野それで言うと、松井先生は全然持って来なかったかな。
細野松井先生は持ってきそうなイメージだけどね。
中野なかなか持ってきてくれなくて(笑)。
でも、時間はかかったけどできたのがデビュー作の『魔人探偵脳噛ネウロ』。
ネウロのキャラがすごく良くて、漫画賞、増刊掲載、本誌読切、連載ととんとん拍子で進んでいった。よく言われる“キャラを作る”の良い例だと思います。
1人のすごいキャラクターさえ作り出せれば、新人作家が一気に連載までいける、ヒットになるというのは夢のあることですよね。
みんなも気を付けよう!
こういう人たちは日の目をみられない!? そんな新人たちの“共通点”とは!?
───── これからデビューを目指す新人作家に、“これだけは注意して”ということはありますか?
中野漫画のことで言えば、“「ジャンプ」グループ”はキャラクターなので、面白いキャラクター、かっこいいキャラクター、好きになれるキャラクターを作る意識を、常に持っておいてほしいですね。
漫画以外のことで言えば、編集部内で語られていることとして、例えば、漫画賞に投稿した封筒のあて名が「週刊少年ジャンプ」じゃなくて「週間少年ジャンプ」になってるとか、 “水濡れ厳禁”って書きたかったのが“水漏れ注意”になってたり、“ストーリーキング”が“ストリーキング”になってたり、“ガリョキン”が“ガリキョン”になってたり、そういう細かいことができていない人は、あまり漫画も面白くないという説もありますね(笑)。
細野持ち込みの電話の応対だけで、その人の漫画が面白いか面白くないかが分かる、という話を聞いたことがあります(笑)。
中野面白いか面白くないかは判断できないけど、持ち込みの電話で、学力じゃない“頭の良さ”は分かるかもしれませんね。
回転の速さや機転が利く、人付き合いが問題なく行える、といった面かな。
往々にして、ヒットしている漫画家さんは、それらをクリアしている人が多いと思います。